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あなたは3DCG版「エヴァンゲリオン」を見ましたか?

2024年、今クールのアニメを総括するにはまだ時期尚早だろうが、それでも「ダンダダン」は頭ひとつ抜けてよかった気がする。
そりゃ、原作漫画が飛び抜けて素晴らしいってのがあるんだろうけど、いやいや、アニメとしてもホント素晴らしかったよ。
サイエンスSARU、マジでいい仕事したわ~。

アニメとしては、ホント<画のチカラ>が突出してたと思う。
私ね、この作品でキャラデザ/作画監督を務めていた恩田尚之さんの画って、超大好きなのよ。
本来、こういうコメディ系ではなく硬質なやつを主戦場にする人なんだが、いや、「ダンダダン」、結構ハマってたよね?
今までは「PSYCHO-PASS」とか「ベルセルク」とか「いぬやしき」とか、あと最近では「閃光のハサウェイ」が印象深い。
とにかく、画が緻密でカッコいいんですよ。

じゃここでひとつ、恩田さんの画のカッコよさを把握できるショートアニメをご紹介したいわけで、その本編をご覧ください↓↓

「ハンマーヘッド」(2015年)時間約8分
監督・舞城王太郎 作画監督・恩田尚之

・・超カッコよくね?


画ヂカラがエゲツない!
ショートアニメなのに、私これ見て泣きましたよ・・。
cvの林原めぐみもいいんだよな~。

で、このアニメが一体何なのかというと、

「日本アニメ(-ター)見本市」


という企画でネット配信されたアニメのひとつなんですね。

題字は、なぜか宮崎駿が書いている

これを企画立案したのは庵野秀明であり、いうなれば<日本のアニメーターたちの技術の万博>といったところだろうか。
自分たちの技術の粋を結集したショートアニメを作ってみよう、という企画かと。
その中に「ハンマーヘッド」があり、また<伝説の7コマ打ちアニメ>こと「西荻窪駅徒歩20分2LDK敷礼2ヶ月ペット不可」が発表されたのも、ここである。

あと、後にNHKでTVアニメ化されたこの作品も、初出がこの「見本市」だったんだね↓↓

「龍の歯医者」(2014年)時間約8分
監督・舞城王太郎 キャラデザ/作画監督・亀田祥倫

作監の亀田さんは、「ダンダダン」で宇宙人/妖怪のデザインやった人ですわ。
あと、「ダンダダン」繋がりでいうと、瀬古浩司さんもまたこの「見本市」に参加してたんです↓↓

「コント(ころしや)1989」(2015年)時間約9分
監督・中澤一登 脚本・瀬戸浩司

さすがは瀬戸さん、脚本としてめっちゃ面白いと思う。

・・あ、そうそう、この「見本市」の作品の声優って、全て

男キャラ⇒山寺宏一
女キャラ⇒林原めぐみ


だからね?
芸達者なおふたりなもんで、何通りもの声色を使って役を演じ分けてます。
特に山寺さんなんて原型が全く分からない声まで出してるし、ホント天才だよ。
ある意味「山寺宏一&林原めぐみ見本市」ともいえる企画である。

このふたり、なぜか知らんが庵野さんのオファーは絶対断らないよな?

さて、続けていきましょう。
じゃ次は、後にTVアニメシリーズ化された有名作、これをどうぞ↓↓

「電光超人グリッドマンboys invent great hero」(2015年)時間約5分
監督・雨宮哲 キャラデザ・芳垣祐介

これが発表された3年後に、「SSSS.GRIDMAN」が始まったんだね。

さて、次は大御所中の大御所の登場↓↓

「ブブとブブリーナ」(2015年)時間約8分
監督・なかむらたかし

これ、なかむらさんが「見本市」に参加してくれたのって、庵野さん的にはめっちゃ嬉しかったんじゃないかな?
ここに参加しているアニメーターは皆、なかむらさんの作画を研究することで育ってきたクチだろうし・・。

じゃ、いよいよ最後の大詰め、この「見本市」という企画の中軸メンバーによる作品ね↓↓

「I can Friday by day!」(2015年)時間約5分
監督・鶴巻和哉 キャラデザ/作画監督・すしお

「Kanón」(2015年)時間約8分
監督/脚本・前田真宏

「evangelion:Another Impac」(2015年)時間約5分
原作・庵野秀明 監督・荒巻伸志

↑↑まさかの3DCG「エヴァンゲリオン」かよ‼

・・うん、庵野さんは結局、これがやりたくて「見本市」を企画したのではないだろうか?

それにしても、みんな楽しそうにアニメを作ってるよね。
これら作品は全てビジネスをあまり意識せずに作った感じで、いうなれば

<学園祭のクラスの出し物>

のノリなんですよ。
売れるモノ」を作ったのでなく、「作りたいモノ」を作った感じ。
まぁ、中には「龍の歯医者」や「GRIDMAN」など、後にビジネスとなったモノもあるんだけど、全体としては基本<学園祭>ノリである。
ただし、好きでやってるからこそ、超本気を出してますけど。

庵野秀明

この「見本市」は、いわゆる旧ガイナックスのメンバーが中心になって企画を興したわけだが、もともとガイナックスというのは母体が<サークル>であり、東映や東京ムービーやタツノコプロみたく、<会社>じゃなかったのよ。
完全にインディペンデントさ。
だから精神が基本は<学園祭>ノリで、こういう「見本市」みたいなのは、彼らにとってむしろ原点みたいなものなんだろう。
いや、いつまでもず~っと<学園祭>ノリだったからこそ、ガイナックスの経営があんなことになっちゃったんだろうけどさ・・(笑)。

でも、そうはいっても、この人たちはやっぱスゴイのよ。
実際、「見本市」の作品はどれもめっちゃクオリティ高いし、面白い。
やっぱり、彼らの存在が日本アニメ界の常識を根底から覆したのは事実だと思う。
思えば日本の<オタク文化>というのは、今から約40年前に彼らが作った、このフィルムから全ては始まったんだ↓↓

「DAICONⅣ」(1983年)

・・改めて見ると、やっぱ「見本市」とノリが全く一緒じゃん(笑)

庵野さんがこれ作ったのって、まだ22~23歳の頃だろ?
新海誠が「ほしのこえ」を作った時はパソコンのソフトで制作したらしいんだが、庵野さんが23歳の頃って、まだパソコンで作れるもんじゃなかったと思うのよ。
かなり、アナログな作業だったと思う。
でも、そういう苦労も全部ひっくるめて、めっちゃ楽しかったんだと思うぞ。

大阪時代の庵野秀明

・・ほら、めっちゃ楽しそうじゃん?

ところで、前述の「見本市」についてだが、これって2014~2016年の3年間で終わっちゃったんだよねぇ・・。
まぁ、頻繁にできるものでもないだろうが、庵野さん、できればまた企画をしてくれないだろうか?
こういう<学園祭>型の人材交流って、結構価値あると思うのよ。
たとえば、レジェンドのなかむらたかしさんがこの企画に参加してくれたのは大きかったと思うし、あと、逆に若い人もこれに参加していて、実はこの企画に新鋭の吉浦康裕(「イヴの時間」や「サカサマのパテナ」の監督さんね)が参加してるくれてるのよ。
彼がこの企画のラストを締めくくる、<EXTRA>として作った作品はなんとこれです↓↓

「パトレイバーREBOOT」(2016年)

制作/スタジオカラー
監督/吉浦康裕
脚本/伊藤和典、吉浦康裕
キャラデザ/ゆうきまさみ
監修/出渕裕
cv/山寺宏一、林原めぐみ
プロデューサー/庵野秀明

まさかの、押井守をハブりながらの「パトレイバーREBOOT」である(笑)。

だけど、こうやって吉浦さんが「見本市」に参加したその翌年、なぜか彼はスタジオカラー制作のTVアニメ「龍の医者」の演出担当として、思いっきり庵野組のスタッフに入ってたからね。
「見本市」に出たことで、いきなり庵野さん側に取り込まれとるし(笑)。

・・いや、こういうのもいいんじゃないだろうか。
確か吉浦さんは九州のインディペンデント出身で、同じインディペンデント出身の旧ガイナックスメンバーとは一緒に仕事したかったはずだし。

私、こういうインディペンデントの流れは結構好きなんですよ。
どこかの既存の会社に就職するでなく、自分で会社を興してアニメを作ってる人たちって、なんかスティーブジョブズ、マークザッカーバーグっぽくて逆に夢があるじゃん?
いっそ、今度は吉浦さんあたりが音頭をとって、新「見本市」を企画するのもいいかもしれないね。


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