「ONE PIECE FILM RED」音楽がアニメに与える大きな可能性
今回は、映画の話をします。
皆さんは、日本における映画の歴代興行収入ランキングって見たことある?
じゃさっそく、その歴代TOP10を見てもらおうか。
<歴代映画興行収入ランキングTOP10最新版>
【1位】鬼滅の刃/無限列車編(2020年)404億円
【2位】千と千尋の神隠し(2001年)316億円
【3位】タイタニック(1997年)277億円※アメリカ作品
【4位】アナと雪の女王(2014年)255億円※アメリカ作品
【5位】君の名は。(2016年)251億円
【6位】ONE PIECE FILM RED(2022年)203億円
【7位】ハリーポッターと賢者の石(2001年)203億円※アメリカ作品
【8位】もののけ姫(1997年)201億円
【9位】ハウルの動く城(2004年)196億円
【10位】踊る大捜査線THE MOVIE2(2002年)173億円
TOP10の内訳としては、<実写3:アニメ7>の比率になっており、いかに我が国の映画市場がアニメ偏重かをご理解いただけるかと思う。
こういうのを、お年寄りの方は「文化として恥ずかしい・・」と思うのかもしれんが、私は別に恥ずかしいと思わないし、現実がこうなってるんだからしようがじゃないか。
なお、興行収入100億以上を記録したアニメ映画は他にもたくさんあるわけで、そのへんをざっと挙げておこう。
【12位】THE FIRST SLAM DUNK(2022年)162億円
【14位】名探偵コナン/100万ドルの五稜星(2024年)156億円
【15位】崖の上のポニョ(2008年)155億円
【16位】すずめの戸締まり(2022年)149億円
【17位】天気の子(2019年)142億円(2019年)
【19位】名探偵コナン/黒鉄の魚影(2023年)138億円
【21位】呪術廻戦0(2021年)138億円
【32位】風立ちぬ(2013年)120億円
【35位】ハイキュー‼ゴミ捨て場の決戦(2024年)115億円
【44位】シンエヴァンゲリオン劇場版(2021年)102億円
以上が、興収100億以上の日本アニメ映画である。
これらを見て、皆さんも色々気付くことがあったと思う。
「ジブリが強い」とか「新海誠が強い」とか「コナンが強い」というのは昔から分かってたことだし、今さら驚きはしない。
それより私が驚いたのは、
「『ハイキュー!!』が『シンエヴァ』より興収で上回っとるやん!」
ということ。
とにかく、ここにきて少年ジャンプ系の映画の躍進が凄いのよ。
2020年⇒鬼滅の刃404億
2021年⇒呪術廻戦138億
2022年⇒ONE PIECE FILM RED203億、THE FIRST SLAM DUNK162億
2024年⇒ハイキュー115億
怒涛の少年ジャンプ映画ラッシュ!
しかも、軒並み100億以上を記録してるというのが驚き。
おそらく「鬼滅」で味をしめた集英社が、「ウチの生きる道はこれや!」と腹くくったんだろう。
紙媒体としての出版業界斜陽が叫ばれる中、
「これからの厳しい時代、出版社が生き残る道はアニメ映画製作やで!」と。
とはいえ、映画業界の常識として、興収100億ヒットというのはそう簡単に出るものではないし、ましてやここ数年はコロナ禍でむしろ映画館に客など入るわけない、と悲観視されてたはず。
なのにフタを開けてみりゃ、予想と全く真逆の連日満員の大入り・・。
アニメファンは、コロナを怖れないのか?
いや、逆にね、私はコロナがアニメファンを育てたと思うのよ。
2020年当時、コロナで「おうち時間」がやたら増えた時期があったでしょ?
あの頃は迂闊に外出できなかったし、結局自宅のオンデマンドで配信を見る人の数がめっちゃ増えたと思うのね。
で、ネットフリックスとかU-NEXTとかでアニメ見て、
「うわっ、アニメ面白い~」
と、そこで目覚めた人たちが実はたくさんいたんだと思う。
で、そういう人たちがここ最近、映画館にまで足を伸ばしてくれてるのさ。
こういうのって、一過性のものと少し意味合いが違うよね。
だからこそ、しばらくはこの傾向が続くと思う。
全ては2020年、この「鬼滅」から何かが始まったといえるだろう。
で、この作品において特に重要なポイントは、
製作委員会が、集英社、アニプレックス、ufotableの3社だけ
ということなんだ。
このへん、ちょっとややこしい話だが、たとえば歴代2位「千と千尋」を例にあげるとして、この作品の製作委員会は
徳間書店、ジブリ、日テレ、電通、ディズニー、東北新社、三菱商事
といった顔ぶれになってたのよ。
これが大体標準的なものと考えて、じゃ、その「標準」と比較して「鬼滅」の特殊な点を敢えていうなら、それは
「テレビ局や広告代理店といったところが製作委員会に入ってない」
という点。
で、この流れが一体何に影響を及ぼすのかというと、それは
「テレビを使った映画宣伝があまり十分にできない可能性がある」
というデメリットがあるね。
逆にメリットをいうと
「外野が少ない分、あちこちの企業の事情に左右された映画作りをしなくても済む」
といった点かな。
しかしひと昔前なら、テレビ局ヌキ、電通(or博報堂)ヌキなんて考えられないことである。
少なくとも「千と千尋」の時代はまだ、「テレビCMこそ広告宣伝のKING」だったわけよ。
だからこそ、テレビ局、および電通の立場が圧倒的に強かったんだが、でも今の時代はどうだ?
皆さん、今でもテレビCMを見て「よし、この映画に行こう!」と決めたりするかい?
・・そんなわけないよね(笑)。
みんな馬鹿じゃないんだから、今はCMの心象だけで映画に行く行かないを決めたりせず、ネットのレビューサイトを見て、★が幾つか、見た人たちの感想はどうか等をチェックし、その上で判断するのが普通でしょ?
そう考えると、今の時代、いくらテレビ局や電通が派手にCMで囃し立てたところで、あまりそういうのも昔ほどに意味がない、ということなのさ。
もはや、プロモーションだけで映画が大ヒットする時代は終わった、ということ。 むしろ大事なのは、中身(サイトのクチコミ)という時代になってしまった。
だからというべきか、今は割と、
ヒットした映画=面白い映画
という等式がきっちり成立してるのよ。
そんなの当たり前?
いやいや、実をいうと、昔はそうでもなかったんだ。
めっちゃ興収凄いのに、クソみたいな映画、正直めっちゃあったし・・。
で、私が最近、「スゲーな!」と感心した映画は「ONE PIECE FILM RED」である。
「ワンピース」の映画は昔からずっとあったし、そこそこの規模でヒットもしてたんだろうが、しかしまさかここにきて200億という大台に乗せてくるとはなぁ・・。
だけどさ、内容を見るとそれも納得なんだよね。
まず監督があの谷口悟朗で、しかも内容はかなり谷口作品「コードギアス」に寄せてきたという反則技(笑)。
いや、そんなことより、もっと驚いたのは音楽の異様なまでのテンションの高さだね。
この映画のヒロインが「シャンクスの娘」ウタということで、彼女が世界的シンガーという設定なんだ。
作中、ウタは10曲近くを唄ってて、もはや音楽映画、あるいはウタのライブ映画といっていい。
こういうのは音響のいい映画館で聴いてこその迫力だろうし、そのライブの映像もまた東映アニメーションが異様なクオリティの3DCGを実現してて、このへんだけでも映画チケット代は十分モトがとれる仕組みになっている。
こりゃもう、今までの「ワンピース」映画シリーズとは別次元の仕上がりといっていい。
なるほど。
「自宅でなく、映画館でこそ楽しめる作品」となると、やっぱ音響を主眼とした作品、ということになるんだろう。
思えば、冒頭に記載した「歴代TOP10」を見ても、4位「アナと雪の女王」あたり、確かに音楽ありきの作品だったもんなぁ。
音楽ありきといえば、3位「タイタニック」もそうだったと思う。
「タイタニック」のテーマ曲、セリーヌ・ディオンの「マイハート ウィル ゴー オン」、覚えてる?
個人的にこの曲はあまりに思い出深いもんで、私は今でも組体操でサボテンをやる際、ほぼ毎回この曲を唄ってるほどさ。
♪ヨォー、ヒィー、ゼズナーッスィンガフィー♪
♪エンダイノーォ、ザッマイハー、ウィルゴォーオーン♪
・・案外ね、サボテンは今でもディカプリオの練習になるんです。
で、「タイタニック」にせよ「アナ雪」にせよ、やっぱハリウッドは
【いい音楽+いい映像=映画はメガヒットする】
という黄金の法則を我々に見せつけてくれたわけで、それが今はこうして「ONE PIECE FILM RED」等、日本アニメ界がうまいこと受け継いだわけよね。
最近、細田守「竜とそばかすの姫」、湯浅政明「犬王」など、有名監督たちもこぞって音楽主体の映画を作るようになってきている。
あと、今年「ぼっちざろっく」の劇場版総集編が興収10億を突破したらしいじゃん?
なんか、いよいよ音楽映画キテるな~と思う。
かつてのハリウッド並みの映画黄金期、 ひょっとしたら、日本アニメにその流れが来るんじゃないか?
ということを心密かに期待してるよ。