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大友克洋版「スプリガン」を見て、正直驚いた!

今回は、アニメ「スプリガン」について書いてみたい。
このアニメの原作は、1989~1996年に少年サンデーで連載されてた人気漫画(たかしげ宙/皆川亮二)で、思えば、かなり古いものである。
これを今さらネットフリックスが掘り出し、最新の3DCGでアニメ化。

ちなみに制作スタッフは結構充実のメンツで、監督は「キズナイーバー」「ひそねとまそたん」「ガンダム水星の魔女」の小林寛
脚本は「進撃の巨人」「呪術廻戦」「サマータイムレンダ」の瀬古浩司

「スプリガン」〔2022年)

「何で今さらの『スプリガン』・・?」と思ったが、時が経ち、1周回って逆にありでしょ、ということなんだと思う。
この作品の前提は、
有史以前、地球には現代科学の水準をも凌ぐ超古代文明が存在していた
というやつで、そういう古代文明の遺物、俗にいう「オーパーツ」を巡って各国の軍、および軍需産業が常に暗躍してるという設定なわけです。
そして主人公の御神苗優は、そういうオーパーツの悪用を阻止し、封印することを使命とした組織「アーカム」のエージェント。

・・なんかさ、こういう「オーパーツ」「超古代文明」という時点で20世紀臭がぷんぷんするんだよね(笑)。
つまりネタとしては、こういうイメージなんですよ↓↓

・・はい、月刊「ムー」ですわ(笑)。
いやね、90年代って意外と「ムー」は人気あったのよ。
なぜなら、

ノストラダムスの大予言というのがあり、1999年には世界が滅亡するというデマが流布してたから・・。


でもまぁ、結論をいうと、1999年に世界は滅亡しませんでした。
それはそれでよかったんだけど、その一方、このての話を煽ることでメシを食ってた「ムー」は当時、一体どんなイイワケをしてたんだろう?
・・いや、ぶっちゃけると、当時、ノストラダムスの大予言を信じ続けた人はほとんどいなかったと思うよ。
なぜなら、それより少し前に地下鉄サリン事件が起きて、それをキッカケにオウム真理教ならびに麻原彰晃が丸裸にされ、もはや「オカルト信じる奴はアホ」という空気が出来上がってたんだよね。
オーパーツ?超古代文明?
バッカじゃないの?
という感じさ。
そうこうしてるうち、「スプリガン」も忘れ去られてしまった作品のひとつといえるだろう。

1999年8月号の「ムー」

でも、面白いもんだね。
地下鉄サリン事件から10年が経過する頃には、またしてもオカルトブームが来たんだから。
今度はオカルトと称さず、なぜか「都市伝説」という新しい表現になってたんだけど。

「都市伝説」の火付け役、関暁夫

やりすぎ都市伝説」って、確かテレ東だよな?
考えてみりゃ「エヴァ」もテレ東だったし、こういうテレ東的カルチャーがアニメブームも相まって全国に伝播し、また人々はスピリチュアルの方向に走り始めたということ。

「時代は、ループする」


おそらく、ここにきての「スプリガン」アニメ化も、そういう時代の潮流を読み取った上でのことだろう。

で、本作を見た感想を率直にいわせてもらうと、いや、普通に面白かったわ。
私は皆川亮二先生の作品なら「ARMS」を読んでたけど、「スプリガン」は読んでなかったので割と新鮮に楽しむことができた。
なんか、考古学が冒険に繋がってしまうあたりは「インディジョーンズ」を思い出す感じ。
スピルバーグっぽい話だね。
だけど、私が今回書きたいのは、この2022年制作ネットフリックス版の方ではなく、1998年制作の劇場版「スプリガン」の方です。

劇場版「スプリガン」(1998年)

見る順序として、私は2022年版を先に見てしまい。1998年版をあとから見ることになってしまった。
だけど98年版が「大友克洋総監修」と聞き、「あぁ、なるほど」と納得したんだよね。
というのも、この劇場版はネットフリックス版でいう第2話「ノアの方舟」編を扱っており、その第2話の敵というのがこういう奴↓↓だったのよ。

ネットフリックス版 第2話

妙に顔色の悪いコドモが超能力使うだなんて、これ、「AKIRA」そのまんまじゃん!


で、この話を本家・大友克洋が98年の劇場版で手掛けてたと聞くと、そりゃ見たくなるのが人情ってもんである。
しかし、これがサブスクでは取り扱っていないみたいで、なかなか視聴困難なシロモノ。
ただ、結論をいうと中国bilibiliが無料動画アップしてくれており、そっちで見ることができた。
で、正直ビビったわ~。

何コレ?どエラい傑作じゃん?


ぶっちゃけると、これ見たらネットフリックス版が完全に霞んで見えたわ。
というか、さすが大友克洋だね。
彼が総監修を務めただけで、画が完全に大友克洋テイストになってるし。

98年劇場版

御神苗のキャラ設定も、ネットフリックス版は健全なオトコノコっぽい感じだったのが、劇場版はいかにも元少年兵(殺人マシン)といった感じである。
で、これのキャラデザ/作画監督を務めたのが、あの江口寿史先生なんだ。
確か江口先生は「老人Z」でも大友先生と組んでたはずで、実は御二人ってめっちゃ仲良しということ?
で、この映画は、ホント画力がハンパない。

そのサワリ部分だけでも見てほしい↓↓

・・ね?
凄いっしょ?

ていうかさ、令和の時代に最新の3DCGを駆使して作った「スプリガン」が、1998年制作の2D「スプリガン」の表現力に対してやや劣勢って、どゆこと?


まぁ、問題はそこなんだよね。
・・あ、誤解のないように。
ネットフリックス版の「スプリガン」は、結構悪くない作品なんだから。
「多くの人にウケる」という観点なら、むしろネットフリックス版の出来の方が上かもしれないし。
ただ、「アニメーションとしての迫力」という点では、どう考えても劇場版が上なんだよなぁ・・。

ネットフリックス版には、ちゃんとこういう萌え要素があります。劇場版にはないが・・

そうそう、私はこの劇場版をネットで探すのに数多くの海外サイトを漁ったんだが、すると海外サイトには、大量にこの劇場版「スプリガン」がアップされてるのよ。
しかも字幕版じゃなく、そのほとんどが現地の吹き替え版で。
吹き替え版が多いってことは、逆にいうとめっちゃ人気あるってことさ。
・・ほら、大友先生って海外で異様に人気あるでしょ。
ヘタすりゃ、日本国内より人気あるんじゃない?
「AKIRA」1本でそこまで人気出るものかな?と思ってたが、ひょっとしたらこの「スプリガン」もまた海外における大友信者のバイブルになってるかもね

でさ、この劇場版のスタッフロール見てたら、やっぱ凄いメンツが揃ってるわけよ。
特に原画スタッフが凄くて

・浜崎博嗣(「STEINS;GATE」監督)
・森本晃司(「MEMORIES」監督)
・梅津泰臣(「A KITE」監督)
・板野一郎(「メガゾーン23」監督)
・森田宏幸(「猫の恩返し」監督)etc

といった顔ぶれ。
動画スタッフには、米林宏昌(「借りぐらしのアリエッティ」監督)の名前まであったなぁ・・。
制作は、STUDIO4℃
なるほど、STUDIO4℃だけあって、当時としても最先端の映像表現だったということだろう。

しかし思うんだが、ここまでクオリティ高い劇場版「スプリガン」を、なぜサブスクは配信しないの?
意味分かんないんですけど。
アニオタ的には垂涎の作画クオリティだったし、

「やはり2Dも本気出せば、最先端の3DCG相手だろうが全くヒケをとらない!」


と確信させてくれる内容だったよ。

というわけで劇場版「スプリガン」、未見の方は是非ご覧ください。
お薦めです。
これの内容は、「ノアの方舟が発見されたところ、米国が総力をあげて方舟を奪いに来た」という実に荒唐無稽な話だが、ここは敢えて「月刊ムー」をマニュアルにして楽しんでみてくれ(笑)。


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