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Netflix版3DCG「ガンダム」、マジで侮れんな、コレ・・

最近、世間で噂の「機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム」を見た。
この作品はNetflix製作、監督がエラスマス・ブロスダウ、脚本がギャビン・ハイナイトという聞いたこともない外国人。
アメリカ人なんだろうか?
こういうアメリカ人たちが絡んでくると、当然のことだが「あぁ、これ多分めちゃくちゃにされる・・」とイヤな予感しかしないよね。

甦る、「ドラゴンボール」の悪夢

アメリカ人ってさ、とても合理的な思考をする奴らだから「リブートは映像に最も適した形で原作を再構築すべし」という発想をしがちである。
だから「ドラゴンボール」があんなことになったわけで・・。

でも、一方で割とうまくいった例もあるのよ。

恐ろしく精密に再現された実写「攻殻機動隊」

一部キャストに不満はあれど(ビートたけしとか)、80点ぐらいはつけられる及第点だったといえる実写版「GHOST IN THE SHELL」。

・・じゃ、「ドラゴンボール」と「GHOST IN THE SHELL」の間に生じた差は一体何だったかというと、私は「制作者の原作に対する崇拝度の差」だったと思うのよ。
「GHOST IN THE SHELL」の監督は、かなりコアな「攻殻」マニアだった。

じゃ、今回の「復讐のレクイエム」の場合はどうかというと、脚本兼製作を務めたギャビン氏は「08MS小隊」や「サンダーボルト」といったOVA版「ガンダム」のファンだったという。
ほぉ、えらくシブいところをついてきたな。
本丸というべき「宇宙世紀」シリーズでも「SEED」でもなくて、外伝の方が好きだったのか・・。

OVA「機動戦士ガンダム08MS小隊」

「機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム」

このビジュアルイメージからして、どう見ても「復讐のレクイエム」は「08MS小隊」がベースになってるよね。

・宇宙が舞台でなく、陸上におけるモビルスーツの戦闘

・SF要素を排除し、あくまでもリアルなミリタリー要素を追求


これはたまたまの幸運かもしれないけど、制作サイドが上記のコンセプトをチョイスしたことがイイ方向に作用したんだよ。
おそらく、アメリカの制作ということで「3DCGアニメ」は動かせない条件だったと思うし、だとすりゃ宇宙より地上、SFよりミリタリーという方がイイに決まってるさ。
3DCGの強み、爆発炎上などのエフェクトを最大限活かせるのはこっちの方が圧倒的だから。

そういや、かつて日本でも「MSイグルー」という3DCG版「ガンダム」を作っていたっけ。
今から約20年前の話だけど、出渕裕、カトキハジメ、荒巻伸志といった錚々たる人員を揃え、結構頑張ってたと思う。

「MSイグルー」(2005年)

でも、今になって改めて見ると、めっちゃ3DCGがショボい・・

当時の技術としては、これが限界だったのかな?
なんかMSに重量感がないし、マテリアルもなんかオモチャっぽくて軽い感じがする。

で、そこから約20年を経て、今の3DCGはここまで進化してるのよ↓↓

うん、イイね!


ちゃんとMSに重量感あるし、マテリアルも薄汚れた感じが何ともイイ。
今回は地球連邦でなくジオン軍サイドが主人公ゆえ、出番としてはガンダムより量産型ザクの方が多いんですよ。
で、こんなリアルフォトの3DCGの場合、ガンダムよりザクの方がしっくりくるんだわ。
だって、ザクの方がちゃんとミリタリーのテイストがあるから。
色がアーミーカラーで、その機体イメージは「重戦車の発展形」という感じがする。
一方、ガンダムは色がホワイト基調で、ミリタリーのテイストがあまりないのよ。

量産型ザク
ガンダム


私は軍関係に詳しくはないけど、多分戦車にせよ戦闘機にせよ戦艦にせよ、現実にはガンダムみたくホワイト基調のものなんて存在しないんじゃない?
普通に考えても汚れるし、敵から発見されやすいし、白であるメリットとか何ひとつないから。
じゃ、なぜアニメ「ガンダム」は主役機体をホワイト基調にしちゃったのか?

初代ガンダム

というか、どう見てもこれ、戦場にそぐわない。
白だけでなく、ポイントカラーに赤や青を使う意味が分からない。
敢えて戦場で目立とうとする、戦国武将の鎧兜のような意味か?
その発想、古すぎだろ。

・・というか、このカラーリングは作品の考証部分をひとまず犠牲にして、「バンダイのガンプラ売上向上の為に見栄え重視」という、どっちかというと制作サイドも苦渋の選択だったと思うんだよね。
「しょせんアニメですから・・」という不本意なエクスキューズ。
「リアルロボット」を謳いつつ、肝心のビジュアルを非リアルにしちゃったという矛盾。

まぁ、これはどうしようもないことだったとして、ただこれを2Dアニメ以上にリアルなビジュアルで表現する3DCGになると、どうしたってガンダムの白/赤/青が奇妙に見えちゃうわけさ。
対峙するザクが、ちゃんと軍基調のアーミーカラーだから余計に。
いうなれば、

こういう人たちばかりがいる中に

こういう場違いな奴が立ち向かっていくような景観である

どう考えても、画としておかしいやろ?

まぁ、今回の「復讐のレクイエム」はそこもちゃんと考慮してたみたいで、ガンダムのカラーから赤/青を排し、白も燻した感じのスモーキーカラーにし、尚且つ戦闘を明るい昼間をできるだけ避けたことで、うまくごまかせてたと思う。

このへんは、さすがですよね。

ストーリーとしては、あってないようなものである。
ガンダム急襲⇒ザク応戦⇒誰か死ぬ⇒ガンダム急襲⇒ザク応戦⇒誰か死ぬ
ひたすら、そのループさ。
一応、ジオン軍目線で描かれるもんでガンダムが最恐の悪魔みたいに見えるんだけど、思えばアニメ「ガンダム」でもアムロ搭乗機は相手が量産型ザクだと大して手こずらず易々と潰してたし、こんなもんでしょ。
もともと量産型ザクとガンダムとでは、スペックが全然違うし。

ただ「復讐のレクイエム」最大のキモは、ザクに搭乗するヒロインがニュータイプだったことである。

「復讐のレクイエム」主人公・イリヤ

イリヤはそこそこの年齢の息子さんがいることを考えれば、年齢は30~40歳だと思う。
多分、「ガンダム」では最年長の部類に入るニュータイプだろう。
アニメ版ではニュータイプというと性格に難を抱えた、ややこしいタイプが多かったけど、このイリヤは例外的にめっちゃマトモ。
シリーズでも屈指というべき、非常にバランスのいいニュータイプである。

何より彼女の凄いところは、ニュータイプ同士は精神をシンクロできる、というメカニズムを利用し、敵のガンダム搭乗者(彼もニュータイプ)に停戦を呼び掛けたことである。
しかもこれ、最後邪魔が入って停戦には至らなかったものの、ほぼ半分以上交渉に成功してたのよ。
これって、画期的なことじゃん?
「ガンダム」において常に戦争を牽引する存在だったニュータイプが、実は停戦/休戦/終戦に向けての切り札だったかもしれないという可能性。

ララァ・スン

そういや、「1stガンダム」ララァも「バランスのいいニュータイプ」で、どっちかというとイリヤ的な試みをしてたような気がするわ。
ララァ、そしてイリヤ。
こういうオンナのニュータイプの存在こそ、平和実現に向けた切り札だったのかもしれない。
もしララァが死なず、その後もずっと生き続けていれば、シャアも「逆襲」で地球にアクシズ落としをする暴挙には至らなかっただろうに・・。

あと、実はこの人もそうなんですよ↓↓

アルレット・アルマージュ

「機動戦士ガンダム Twilight AXIS 赤き残影」(2017年)

アルレット・アルマージュは、コアな「ガンダム」ファンのみに知られてるマイナーな主人公で、「機動戦士ガンダムTwilight AXIS 」というショートアニメのヒロインである。
私、これ結構好きなんですよね。
妙にキャラデザいいし、オシャレ系だし、甘酸っぱい系だし、短い作品なのにクライマックスにはかなり泣ける系だよ。
あまり多くを語らない、俳句みたいな「ガンダム」。

で、このアルレットもまたニュータイプで、ジオン軍のエンジニアである。
クライマックス、彼女は敵のガンダムと対峙するわけだが、その際ガンダム搭乗者のニュータイプは彼女の精神とシンクロしてしまい、「あんなの見せられりゃ、引き金なんか引けるか・・」とか言ってるわけで、つまり両者は戦闘をやめている。
そう、「Twilight AXIS」と「復讐のレクイエム」は、ほぼ同じニュアンスのプロットなのよ。

おそらく、「復讐のレクイエム」のギャビン氏は「Twilight AXIS 」見てるだろうね。
やはりポイントは、主人公がオンナであること。
これって、富野由悠季には多分できないことなのよ(笑)。
そして、戦闘をやめるというのも富野さんにはできないこと。
非富野系の「ガンダム」って、富野さんができないことを敢えてやるというのも悪くない選択だと思う。
少なくとも「復讐のレクイエム」は悪くなかったわ。

で、3DCGでここまでのことできるなら、いっそミリタリーを極めて次は「装甲騎兵ボトムズ」シリーズあたりをどうだろうか?
Netflixさん、一度考えてみてほしい。


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