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岡田斗司夫が「今世紀NO.1アニメ」と評した作品を知ってる?

今回は、米アニメ「アドベンチャータイム」について書いてみたい。
皆さんは、これ知ってる?
私は、今年のMax(アメリカの動画ストリーミングサービス)日本上陸で、一番嬉しかったのはこの「アドベンチャータイム」を見ることができたことなんだよ。

「アドベンチャータイム」(2010年~)

以前から噂で、「めっちゃ面白い」とは聞いていた。
特に強くオススメしてたのが「オタキング」の岡田斗司夫さんで、彼いわく

「間違いなく世界最先端のアニメ」
「今世紀NO.1アニメ」


と、最大限の絶賛をしてたからね。

これは米「カートゥーンネットワーク」というアニメ専門チャンネルが制作したもので、どっちかというと子供向けといっていいだろう。
日本でいうと、「アンパンマン」等のカテゴリーかな?
・・でもねぇ、「アンパンマン」とは全然違う。
もっとブラックで、もっとシュール。
ぶっちゃけ、あまり情操教育にいいとも思えん・・。
とはいえ、エミー賞やらアニー賞やら複数の受賞をしてて、これが人気作品であることだけは間違いないだろう。

<登場人物>

フィン・・13歳の少年 冒険好き

ジェイク・・フィンの相棒の犬 言葉を喋る 巨大化などが可能

ビーモ・・携帯型ゲーム機 言葉を喋る フィンやジェイクと同居

プリンセスバブルガム・・キャンディ王国の統治者 科学者

マーセリン・・バンパイア 1000年以上生きている

アイスキング・・魔法使い 1000年以上生きている

見ての通り、おとぎ話っぽい世界観でしょ。
でも、そうじゃないんだよなぁ・・。
そもそも、バンパイアとか魔法使いとか出てくる時点で、普通は「異世界」の物語だと思うでしょ?
しかし設定はそうじゃなく、舞台は「今の地球の1000年後」なんだよ。
どうやら大きな核戦争っぽいのが「1000年前」にあったらしく、そのせいでほとんどの人間が死に絶えているんだわ。
主人公のフィンはノーマルな人間だが、あとはみんな人間ではない。
おそらく「魔法」の顕現による影響だろうが、動物や植物、果物やお菓子等も言葉を喋る生命体になっていて、各々がキング/プリンセスを頂点にした国を作っている、という摩訶不思議な世界観さ。

最初のうちこそ

①アイスキング(悪役)がプリンセスを誘拐(目的は結婚)
②フィン&ジェイクが救助にいく
③フィン&ジェイクvsアイスキング
④アイスキング撃退

という展開が多くて、それこそアンパンマンvsバイキンマンみたいな印象だったんだけど、でも話が進むにつれ、そういう「アンパンマン」的な物語じゃないことが少しずつ見えてくる。
ぶっちゃけ、勧善懲悪モノというわけじゃないし、教訓めいたものでもないし、主人公フィンの「成長」を描くものでもない。

・・そう、何より驚いたのは、こういう児童向け作品でありつつも、主人公フィン&ジェイクが思ったほどに「成長」を見せなかったことだね。
日本のアニメなら、普通、こんなのあり得ない。
フィン&ジェイクは確かに「困ってる人たちを助けるヒーロー」なんだが、でもその行動には深い信念があるわけじゃなく、彼らはただ、そうするのがワクワクするからやってるに過ぎないんだ。
行動原理が、もの凄く浅い。
だからこそ数々の失敗を繰り返すんだけど、でもその失敗を教訓にするでもないので、ずっと成長しない。

で、この「成長のなさ」も最初のうちこそコメディとして笑えてたんだが、でも話数を重ねるにつれ、だんだん笑えなくなってくるのよ。
実際、フィンが片想いをしてたバブルガムに全く相手にされなかった要因は、その「成長のなさ」にこそあったと思うし、また、彼にようやくできたカノジョにすぐフラれた要因も、同じく彼の「成長のなさ」にこそあったと思う。
周りは皆、「やりたいこと」より「やるべきこと」を選んでオトナになっていくというのに、彼だけがずっと「やりたいこと」しかしようとはしない、ずっとコドモのまんま。
これが何とも痛々しいんだわ・・。

「ワンピース」ルフィ

こういうフィンのキャラに近いものを日本のアニメの中で挙げるなら、それはおそらく「ワンピース」のルフィになるだろう。
どっちも直感で生きていくタイプで、ただルフィの直感がいつもいい方向に働くのに対し、フィンの直感は悪い方に働くことの方が多い。
そして、ルフィの「いつまでも少年の心を失わない」性格が割とポジティブに描かれてるのに対し、フィンの「いつまでも少年の心を失わない」性格はややネガティブな方向にも描かれている。
・・なんていうかな、「アドベンチャータイム」は明らかにコドモに優しくない(笑)。
うん、「ワンピース」は見ててスカっとするのに対し、どっちかというと「アドベンチャータイム」の方は少しモヤっとする、といった感じだな。

・・という書き方をすると「なんか面白くなさそう」と感じるかもしれんが、いやいや、これがめっちゃ面白いんですよ。
岡田斗司夫さんがこれを評して

「松本人志が作る映画に近い笑い」

とコメントしてたんだが、これはね、実は結構うまい表現なんですよ。
モヤっとする笑いだね。
ここで岡田さんが敢えて「ダウンタウンのコント」と言わず、「松本人志の映画」と表現したところが実にうまい。
・・そう、ここには浜田雅功が存在しないわけね。

思えば松本人志の映画はどっちかというとあまり評判がよくなく、その笑いのセンスがディープすぎて皆「??」となったでしょ?
普段、彼のディープさをうまいこと中和してたのが相方・浜ちゃんの存在であり、彼の「ツッコミ」というのは一種のメジャー転調のトリガーだったんだよね。
でさ、「アドベンチャータイム」には、こういう「ツッコミ」がほぼ皆無なのよ。
キャスト全員がボケで、ボケ⇒ボケ⇒ボケ⇒ボケという連鎖。
エンディングも綺麗に「オチ」を付けず、小さいボケでブツっと切れる。
プッと屁をこいて終わり、とかね(笑)。

多分ね、こういう日本のギャグ/コメディと勝手の違うお笑いの構造に、最初見た人は絶対戸惑うはずだし、「何だか肌に合わん・・」と思っちゃうかもしれない。
うん、事実私も最初はそうだったわ。
でも、敢えて言っときたいんだが、

とりあえず序盤は我慢して、しばらく見続けてみて下さい。


すると不思議なもんでね、だんだんリズムに慣れてくるのよ。
いやはや、人間の適応力というのは大したものである。

で、さらにしばらく見続けてると、今度はクセになってきちゃうんだわ。
そのうち、ちゃんと爆笑できるようになると思う。
そして30話ぐらいまできたら、もう完全に「沼」ですね。
妙な中毒症状が出てくる。

「アドベンチャータイム」第80話

特に見るべきポイントは、第80話かもしれないな。
この回は、ゲストとして

あの湯浅政明が監督/脚本をやってるんだよ。


わざわざ日本から「アドベンチャータイム」の監督として招聘されるとは、かなり名誉あることだと思う。
で、湯浅さんのいつもの映像美が、「アドベンチャータイム」にきっちりとハマってるのを見て、なんか妙に嬉しかった。

これ、全部で142話あるんだけど、50話ぐらいからプロットの壮大さが徐々に見えてきて、各人物の因果にめっちゃ深い設定があることに気付くんだよね。
浅からぬ因縁、生い立ち、出生の秘密等、とにかく色々な新事実が明るみになってきて、もうこのへんになると「沼」から抜けられない。
だから見るなら、ある程度覚悟して臨んだ方がイイ。

やっぱエンタメ大国、アメリカ馬鹿にできんわ。
日本のコドモたちが「アンパンマン」とか見てる頃、あっちではコドモたちが「アドベンチャータイム」見てることを考えたら、正直やられた~と思うよ。
それだけで、なんかもう、めっちゃセンスに差をつけられたような気がしてしまう。

多分、皆さんは日本が世界でダントツのアニメ大国と思ってるでしょ?
それ、昔ならそう断言できたけど、今は少し状況が変わってきてると思うよ。


とにかく、「アドベンチャータイム」をまだ未見の方、まずはご覧になってみて下さい。
今なら、YouTubeでも「100分イッキ見SP」とかあるし・・。

とりあえずコレを見とかないと、「海外アニメの今」を正しく把握できないと思う。


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