改めて「NARUTO」の素晴らしさを語りたい
皆さんは、「BORUTO」というアニメを知ってますか?
そう、不朽の名作「NARUTO」の後継シリーズだね。
ナルトの息子・ボルトが主人公となってるやつ。
だけどこういうパターン、「犬夜叉」の後継である「半妖の夜叉姫」にしてもそうなんだが、やはりどうしても偉大な前作の面白さは超えられないものである。
確か、「BORUTO」は岸本斉史先生(「NARUTO」原作者)が監修をしてるだけで、話そのものは先生のお弟子さんが作ってる系じゃなかったっけ?
あと「半妖の夜叉姫」もまた、そこに高橋留美子先生(「犬夜叉」原作者)はさほど深く関わってなかったような気が・・。
でもね、TVアニメ版の「BORUTO」はいまいちである一方、実は劇場版「BORUTO」の方は結構いいのよ。
【2015年】劇場版「BORUTO」公開
【2017年】TVアニメ「BORUTO」放送開始
となってるので、実は劇場版の方が公開は先なんだよね。
で、映画の方は岸本先生自身がっつり脚本まで書いていて、結局はそういうところの差かもしれんなぁ・・。
そう、岸本先生は「NARUTO」シリーズの劇場版ではこれを含めた3本だけがっつりストーリー監修までやってくれていて、その3本は飛び抜けて傑作なんですよ。
「ROAD TO NINJA」「THE LAST」「BORUTO」の3本。
特に「ROAD TO NINJA」と「BORUTO」はともに<親子>がテーマになっていて、このふたつはセットでのご視聴を是非お薦めしたい。
めっちゃいいから。
とはいえ、一番いいのはそれよりもTVアニメシリーズ「NARUTO」、および「NARUTO疾風伝」である。
そりゃ、原作ファンの人は「漫画の方がもっといい」と言うだろうし、実際そうなんだろうけど、でもアニメはアニメでこれがまたいいんですよ。
ひとつ、このアニメ化でポイントだったと私が思うのは、
原作者・岸本先生がアニメーターに西尾鉄也を指名したことである。
・・そう、これが実に興味深いんだよね。
西尾さんは言わずと知れた「Production I.G三大神」の一角であり、今ではリアル系アニメーターと認識されてる人である。
でもそのキャリアを紐解くと、意外と少年ジャンプ系の人なんだわ(笑)。
とてもリアル系とは思えない作品群だが、いや、岸本先生の画は結構リアル寄りだったと思う。
割と西尾さんの画風に合ってるよね。
でも「NARUTO」ってさ、終盤になるとバトルが大体こんな感じ↓↓でしょ?
エフェクトは確かに凄いんだけど、正直いうと感覚としてはちょっと冷めてしまった部分がある。
個人的には普通の螺旋丸や普通の影分身とかで闘ってたあたりまでが好き。
だから、私自身の好みでいうと、やっぱ「NARUTO」>「NARUTO疾風伝」なんだよね。
ワケ分からんご先祖様的なのが出てきたあたりから、もういいや・・って。
ただ、オーラスのナルトvsサスケのくだりは好きで、ここでもエフェクトがバリバリの攻撃が当然ある一方、案外、殴る/蹴るというめっちゃ基本的なところにも回帰してくれてるのよ。
こういう地味めなやつほど、意外と作画しんどいんじゃないかなぁ?
なんか、こういうところにこそリアル系・西尾鉄也の真価があると思う。
パッと見の動きはめちゃくちゃに見えて、実はモーションがしっかり描けてるんだよね。
そしてマジで「NARUTO」がスゲーなぁと思うのは、これ全部で700話以上あるほど超長い話だというのに、作画には持久力/スタミナがあるというか、こうしてラストの局面まで来てもパワフルに体力残ってるということ。
いやホント、これ凄いって。
こういう体力系というかド根性系というか、一体何なんだろうと思ってたんだけど、西尾さんいわく、どうもそのへんの彼の原点とは、「幽遊白書」に始まる話らしいぞ。
「幽遊白書」、これもまたジャンプ黄金期を支えた名作漫画のひとつだね。
で、ひとつ興味深いのは、西尾さんがこの頃の経験を振り返り、実は
「新房昭之+若林厚史というコンビがライバルだった」
と語ってるんだよ。
ここで意外な新房昭之という名前が出てくるから「はぁ?」となるよね。
でも、どうやら当時の「幽遊白書」では「演出の新房と作監の若林が組むと神回が生まれる」という鉄板の流れがあったらしく、西尾さんとしてはそれをかなり強く意識してたらしい。
で、上の回なんかを見て「くっそ~!」と触発され、意地になって描いたのがこの回、「戸愚呂100%の恐怖」だったらしい↓↓
どうやら、会社からは「1話作画枚数3000枚まで」と言われてたらしいんだが、なんか現場のアニメーターたちはヒートアップして、そんなのいちいち聞いてなかったらしいぞ(笑)。
皆各々に負けたくないから、平気でその2倍、3倍の作画枚数を費やしていたという。
このへん、面白いなぁ・・と思って。
だって、作品の中では幽助たちが必死に宿敵と闘ってるわけだが、その一方でアニメーターたちも幽助と同様に、こっちで宿敵と必死に闘ってるというまさにシンクロ状態なんだよ。
で、アニメーター同士が仲悪くギスギスしてたかというとそんなことなく、実際、西尾さんがその後に作監をやる作品は、毎度のように若林厚史さんが加わってたんじゃないかな?
・・そう、かつて死闘を繰り広げた相手と今度は共闘するという、これぞ「少年ジャンプのお約束」ってやつさ(笑)。
うん、90年代のこういう話聞いてると、あぁ、いいなぁ~と思う。
みんなアニメーターは「奴隷のように酷使されて可哀相」と思ってる人たちもいるだろうが、この時代はむしろ「作画3000枚まで」と会社に言われても「そんなの知るか!」と現場が勝手に10000枚とか描いちゃってたんです。
酷使されてるというより、描きたいから描いてるということ。
そこはパッと見は同じでも、実は大きく違うさ。
このへん、<コンプライアンス>という言葉があった時代と無かった時代、多分その育ちによって差が出るものだろうけど、少なくとも西尾さんあたりの世代は「♪夜の校舎窓ガラス壊して回った~♪」という育ちなんだと思う。
早い話が、「ヤンチャ」ですわ。
でも今の時代、仮に「作画3000枚まで」と言われたら、皆ホントに3000枚で抑えるんじゃないの?
・・いやいや、少し前の世代なら絶対にそういう次元じゃないのよ。
もはやアニメーター自身が作品とシンクロして完全にインフレーション起こしてるから(笑)
ようは大事なのって、こういう<シンクロ>だと思うのよ。
一種の憑依といったらいいのいかな。
アニメーターにせよ、声優にせよ、彼らが作品とシンクロ率100%になった時にはもう神作の誕生ですよ。
結局、「NARUTO」と「BORUTO」の差って、そこに尽きるんじゃないのかなぁ・・。
あと私として気になるポイントというのもあり、それは「幽遊白書」から「NARUTO」に至るまでの西尾さんの作画の変化だね。
「幽遊白書」の時までは思いっきり金田伊功っぽいものだったというのに、「NARUTO」の頃には、もうそれがリアル系に大きく寄っている。
その点については、ある作品の影響が大きかった、ともいわれてるんだわ。
で、それは西尾さんに限らず、かなり多くのアニメーターに影響を与えたという話なんだが、皆さんはこの作品↓↓を知ってますか?
OVA「THE八犬伝」
いわゆる「リアル系の真打ち」みたいな扱いをされてる、バイブル的アニメである。
未見の方は、YouTubeでタイトルを検索すれば普通に無料動画を全話見れるので、一度ご覧になってみて下さい。
とにかく、ここに関わってる人材が凄いから。
大平晋也、橋本晋治、沖浦啓之、西尾鉄也、黄瀬和哉、うつのみやさとる、なかむらたかし、神山健治、湯浅政明etc
また「THE八犬伝」に触発されたのか、Production I.Gもまたリアル系時代劇「お伽草子」を制作したわけで、これもまた結構いいんですよ。
こっちは監督・西久保瑞穂、キャラデザ/作監・黄瀬和哉、美術・小林七郎。とにかく黄瀬さんが描く硬質なデザインが、何ともカッコいい。
この時代は、とにかくリアル系がカッコよくてたまらなかった頃である。
で、こういうのを全部踏まえた上での「NARUTO」なんだろう。
実は「NARUTO」って、そこに至るまでの色んな文脈が入ってるのさ。
そして面白いのは、原作者・岸本先生はなぜか西尾鉄也のことを「師匠」と呼んでるらしいこと(笑)。
なお、岸本先生が影響を受けた人物として挙げてるのが
・鳥山明
・大友克洋
・沙村広明
・西尾鉄也
・沖浦啓之
・森本晃司
となっていて、約半分が漫画家じゃなくてアニメーターなんですけど(笑)。
そうか~、今はそういう時代か~。
漫画家が、アニメーターのことを尊敬しちゃう時代、アニメーターから影響を受けちゃう時代になったんだね。
いっそ岸本先生、アニメ界に来ちゃえばいいのに。
確か、「NARUTO」の後の新作が大コケしたんだろ?
いや、少なくとも岸本先生が絡んだ劇場版「NARUTO」はとても良かったし、多分この人、アニメでもイケるのよ。
一回、大友克洋ばりにデカいバジェット渡して映画を作らせてみるのも一興だと思う。
井上雄彦先生とか、うまいこといったじゃん?