「ダンダダン」を見て、声優のことを考えさせられた
ニコニコ動画/ニコニコ生放送が、「2024年秋アニメ中間ランキング」というのを発表していた。
配信数、コメント数、アクセス数などを11月のどこかで一旦締め、それを集計したものらしい。
その結果は、以下の通り。
<2024年秋アニメ中間ランキングTOP10>
【1位】ダンダダン
【2位】Re:ゼロから始める異世界生活
【3位】アイドルマスター シャイニーカラーズ
【4位】アオのハコ
【5位】BLEACH
【6位】シャングリラフロンティア
【7位】2.5次元の誘惑
【8位】新テニスの王子様
【9位】ガンゲイルオンラインⅡ
【10位】るろうに剣心
いや、あくまでニコニコ内の集計だから、このランキングをめっちゃ信憑性あるものとも思ってほしくないし、あくまでひとつの目安ってことでね。
ただ、「ダンダダン」の1位はなんとなく分かるな~。
この作品は第1話からインパクト絶大で、かなりツカミがよかったし、また序盤のターボババアやセルポ星人が単なる「出オチ」じゃないという物語の構造が見えてきたのも好材料。
そして、なんといっても神回だった第7話。
ええ、そうです、私もここで泣きましたとも・・。
この回をもって、評価は爆上がりだろう。
アクロバティックさらさら
まさか、こんなバケモノに泣かされるとは全く想定してなかった。
そして、このアクさらのcvが井上喜久子(17歳)さん。
めっちゃ大御所を起用してきたね。
・・そうなんだ。
・アクロバティックさらさら⇒井上喜久子(17歳)
・ターボババア⇒田中真弓
・セルポ星人⇒中井和哉
といった感じで、怪異/宇宙人のcvがベテラン大御所揃いなのよ。
逆に、ヒロインの桃役はルーキーの若山詩音が務めてて、この新旧バランスが何とも心地いい。
若山詩音
そもそも若山詩音って、一体何者なの?
・・いや、2019年に映画「空の青さを知る人よ」(超平和バスターズ作品)のヒロインにオーディションで大抜擢された若手だということは分かってるんだけど、問題はそこから先なんだよ。
【2021年】
「SSSS.DAYNAZENON」ヒロイン・南夢芽
「takt op.Destiny」ヒロイン・運命
【2022年】
「ハコヅメ」ヒロイン・川合麻依
「リコリスリコイル」ヒロイン・井ノ上たきな
【2023年】
「好きな子がめがねを忘れた」ヒロイン・三重あい
【2024年】
「負けヒロインが多すぎる」ヒロイン・焼塩檸檬
「ダンダダン」ヒロイン・河瀬桃
上記の通り、毎年ヒロイン役が途切れていない。
まだキャリアが浅くて「名指し」のオファーはないと思うから、きっと地道にオーディションで役をとってるんだと思うが、その割にきっちりヒロイン役をとれている。
彼女って、実はめっちゃ巧い人なの?
役柄を見ても結構キャラがバラバラで、陰キャから元気系まで実に幅広い。
いや、逆に幅広いから、「若山さんといえばこの声」ってほどの認知がまだ個人的にできてないんだけど・・。
でさ、彼女は「ダンダダン」でめっちゃ弾けた演技をしてるから、彼女自身が元気系、パワフル系の人なんだろうなと思ってたんだけど、実はそうでもないみたいだね。
どっちかというと、おとなしい系らしい。
それを、花江夏樹と佐倉綾音の両名がこう言っていた。
「『ダンダダン』で私たちふたり最大のテーマは、『いかに若山詩音の緊張を解いていくか』である」
・・なるほど、キャスト内は今、そういう状況なのね。
収録中、花江さんと佐倉さんは若山さんの緊張解いてリラックスさせる為、彼女に対して2人が必死に笑いをとりにいっている、という事実を明かしていた。
なんつーか、新人を気遣う良い先輩じゃないか・・。
考えてみりゃ、「ダンダダン」は田中さんや井上(17歳)さんや中井さん等大御所が脇にいて、一方でヒロインには新人の若山さんがいて、いうなれば夏江さんや佐倉さんの位置づけは、その「中間」に位置する<中堅>なんだよね。
今までは、どっちかというと<若手>カテゴリーで自分をアピールする為にこそやってきた御二人なんだろうに、もう今は若手というキャリアでもなくなり、むしろ下の子がいかに持ち味発揮できるかに気を遣うターンに入ったということか。
なんかこういうの聞いてると、自分がまだ学生だった頃の「部活」を思い出すなぁ
花江さんや佐倉さんは、ちょうど「2年生」といったところ?
そりゃ「若い芽は潰す、自分がレギュラーとれなくなるから」というタチの悪い2年生もいるかもしれんが、でも私の経験でいわせてもらうと、そんな考え方をする2年生はかなり少数派である。
大体は、できれば1年生を早く育てようとするもんさ。
だって、どうしても試合に勝ちたいから。
私は花江さん、佐倉さんの話を聞いてて、「あぁ、ちゃんとチームになってるんだな~」と妙に嬉しかったよ。
さて、ここにきて「ダンダダン」はさらに面白くなってきたわけで、それというのも、このアイラというキャラが出てきたのが大きい。
この彼女、トンデモなく思い込みが激しくて自意識が強い、実にややこしいキャラであり、そのややこしさも1周まわると逆にカワイイという愛すべきキャラである。
で、佐倉さんがこれを好演。
私は最近、アイラの顔を見ただけで笑えるようになってきた。
いつも思うが、佐倉さんって「メインヒロイン」より、こういうクセの強い「サブヒロイン」やってる時が一番活きるよなぁ・・。
個性派として、必ず「爪痕」を残す声優である。
そうそう、佐倉さんといえば、「32年前のキャスト再登板」が話題になった「らんま1/2」において、稀少な「新キャスト」として食い込んでるんだよな。
ぶっちゃけ、私が「らんま」の中でも一番笑ったのは、この小太刀だった。
異様にややこしい性格の女子なんだけど、やはりこれを佐倉さんが演じるとうまいこと笑いになるんだわ。
彼女って、めっちゃ笑いのツボを分かってる声優さんなんだと思う。
異様に勘がいい。
でもさ、佐倉さんも「ダンダダン」の時と違い、この「らんま」では完全に「1年生」の位置づけなんだよね。
だって、周りが林原めぐみ、山口勝平、日髙のり子、高山みなみ、山寺宏一井上喜久子(17歳)だもん。
大御所すぎるって・・。
そもそも、上記メンバーが「らんま」やってた頃、彼女はまだ生まれてないでしょ?
いや、あまりにも周りが大御所すぎるがゆえ、逆に胸を借りて奔放な演技ができてる感もあったよ。
さて、そもそも「大御所」とは一体何なのか?
その定義は難しいところだが、私としてはシンプルに捉えたいので、
「2017年に実施された『声優総選挙』の上位ランカー」
だということにしておきたい。
<声優総選挙ランキング上位者一覧>
【1位】 山寺宏一
【2位】 野沢雅子
【3位】 藤原啓治
【4位】 沢城みゆき
【5位】 関智一
【6位】 田中真弓
【7位】 高山みなみ
【8位】 中尾隆聖
【9位】 古川登志夫
【10位】 大塚明夫
【11位】 林原めぐみ
【12位】 森川智之
【13位】 柴田秀家
【14位】 諏訪部順一
【15位】 三石琴乃
【16位】 矢島晶子
【17位】 榊原良子
【18位】 小林清志
【19位】 塩屋翼
【20位】 千葉繁
【21位】 日髙のり子
【22位】 神谷明
【23位】 肝付兼太
【24位】 三ツ矢雄二
【25位】 平田広明、島本須美
見ての通り、ネット上によくある「声優人気ランキング」上位者はほとんど入ってないのよ。
これ、人気投票じゃないからね。
アンケートの性質上、ベテランに票が集まったのは想定の範囲内だが、それでも野沢雅子さんの上に山寺宏一さんがきたのは想定外だったわ。
この人、「巧い」って話、昔からよく聞くよね。
たとえば押井守監督は、山寺さんについて次のように語っている。
「彼は8通りの声を出すし、20役を演じ分けて見せるんだよ。
そのあまりの巧さが、逆に彼の欠点となる。
山寺自身の声が印象的ではないから、山寺の声を記憶できないんだよ」
なるほど。
そのせいか、彼って<主人公>の印象がない(しいていうなら「カウボーイビバップ」のスパイクぐらい?)。
どっちかというと、名バイプレーヤーである。
つまり「支える側」であり、「若い子たちの良さを引き出していく側」の人なんだよね。
こういう人が声優界のトップオブトップに君臨してるのって、私はめっちゃいいことじゃないかと思うのよ。
今の中堅どころも偉大な彼の背中を見てるし、ちゃんと「若い子たちの良さを引き出していく側」に回ってるんじゃないの?
特に今回は「ダンダダン」見てて、そんな「良い循環」っぽいのを感じたわ。