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2024年読書評10 コロンボと日下圭介

「殺人依頼」
リンク&レビンソンのアイデアを小鷹信光が小説化したもの。
テレビで放映されていない幻の作品というわけです。

出版は1999年です。誰かが「コロンボ唯一のハードカバー」と言っていましたが、ずっと前にハードカバーは出ているのです。
当時私は本屋さんで見つけ買いました。その頃はアマゾンもブックオフもなく、不景気でもなく、普通に本屋で本を買う時代でした。ワクワク感もありました。
そんな時代に見つけたのが「暴虐の殺意」とかいうコロンボもののオリジナル小説。

さて、今回はゴルファーが交換殺人をするというもの。
私はゴルフに全く興味がなく、そういう意味では小説にも半分興味が持てませんでした。このアイデアを小説化しようと思った小鷹さんはきっとゴルフが好きなのでしょう。好きでないと背景を描けませんから。
小説家というのは道楽ものが多いのか、半村良も小説の中でバーのホステスがゴルフをしたい、というシーンがあり、きっと半村さんの嗜好が現れてるのだなと思いました。

売れている小説家は印税で儲け、ゴルフなどという金持ち道楽にいそしめるのでしょう。

というわけで小説としては終始、その辺がつまらなく、

そして、コロンボものは倒叙といって、冒頭で犯人の犯行が描かれ、その後、刑事の活躍が描かれるスタイルになっています。
つまり、犯人は本来ならサイドに回るものなのですが、・・・もちろん回によっては犯人が中心になることもあるが、本来ならもっとコロンボが前面に出てもいいのではないか。

この本では冒頭のみではなく、前半が犯人中心で、後半3分の2くらいでやっとコロンボ中心になる。

ということは、小説を通しての、中心人物がいないということでもあるわけです。
そういう意味では、小説としては出来がよくないということができるわけです。

また、コロンボの犬の名前がdogであるとか、愛車がプジョーというのはファンなら周知のことですが、これが強調されている点が著者の素人さを感じさせます。

また、コロンボを「小太りの」と表現していますが、私はそう思ったことは一度もありません。確かに老年になってピーターフォークはおなかが出たでしょうが、太っている人ではないと私は思うのです。
そんな表現をする著者に対しても「素人だな」と感じざるを得ません。

たしかに、プロットのみを1つの小説に仕上げたことはすごい作業なのですが。

いずれにせよ、私はゴルフ界というテーマ自体に馴染めませんでした。
そしてボツになったアイデアは、ボツにする意味があり、ドラマには向かないと、そもそも捨てアイデアということだったのでしょう。
無理にリンク&レビンソンを強調せずに、著者オリジナルを作ってしまってもよかったのかも。


「海鳥の墓標」
日下圭介

私は著者のファンなのであるけれど、あまり数多くを読んでいません。その理由はこの作者、ムラがあるからなのです。
どういうことかというと駄作と佳作の差が大きいということです。
特に初期の作品は素晴らしい。長編も短編も両方出来がいい。
しかし後半になると短編も長編も出来が悪くなる。

特に著者は後半になると歴史に絡めたものが多くなり、歴史と言っても江戸時代ではなく、数十年前の事件とかなのですが、私はそのような時代に全く興味が持てず、読む気にならないというわけなのです。著者にしてみるとその時代は彼の子供時代なのでワクワクするものがあったようです。

そして本作は未読のもの。

物語は:
孤独な若い女性、職探しをしていると宝石店で拾ってもらえる。しかし宝石泥棒の汚名をきせられそうになる。謎の電話で指示に従い証拠写真を盗み出しに行くことになる。するとその写真家ともめて殺してしまう。そこに現れた謎の男が手助けし、関係も持ってしまう。やがて、写真家の不在を疑った写真家の友人が女性を疑い出す。

話はもっと複雑になって行きますが、しかし小説として読みやすいのです。
それに小説の主軸は常にこの若い女性。それが本を読みやすいものにしています。
~主人公の愚かな行いにイライラしますが、これは昔の映画などでもよくあったこと。そんな危険なところに行かなければいいのに、とか、断ればいいのに、とか。視聴者読者がイライラするということは作り手に説得力がないということ。もっと必然性を構築しなければいけない。

そんなことはとにかく、この小説は面白く読めます。
物語の暗さ、主人公の愚かな言動、そんなことは逐一引っ掛かりますが、一応小説としては出来がいいと思います。

著者のデビューから10作くらいまでか? は出来がいいと思います。
本作は「折り鶴が知った」とかその辺に雰囲気も似ています。



ココナラ
姓名判断

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