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人事評価結果の開示請求

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ある従業員から、「人事評価は個人情報なのだから、評価者のコメント等含めて全て開示して欲しい」と求められました。会社はこれに応じる必要があるのでしょうか?

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個人情報保護法では、「本人から保有個人データの開示を求められたときは、遅滞なく、書面または本人が同意した方法でそれを開示しなければならない」旨、定められています。
人事評価結果や評価者のコメント等も6箇月以内に消去されるもの以外は、この「保有個人データ」に該当すると解されており、本人からの開示請求に応じなければならないというのがまず原則といえます。

一方で、「業務の適正な実施に著しい支障を及ぼす恐れがある場合」については適用除外に該当し、開示請求に応じないことが認められています。

つまり、人事評価に関する情報を開示することが「業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすかどうか」が個人情報保護法における開示の要否の判断基準と言えそうですが、この判断基準については残念ながら具体的には示されていません。

次に行政による解釈ですが、「雇用管理に関する個人情報の適正な取扱
いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針」(平成16年7月1日
厚生労働省告示)では、まず「人事評価、選考に関する個々人の情報については、基本的には非開示とすることが考えられる」とされており、これに続いて、「その取扱いについては労働組合等と協議した上で決定することが望まれる。さらに、非開示とする事項につき労働組合と協議を行った上で決定した場合、労働者に対してもその内容につき、できるだけ明確に提示し、周知徹底を図っていくよう努めなければならない。」と努力義務として定めています。

結局のところこの問題はいまのところ各々の解釈に委ねられそうです。

私見と致しましては、人事評価は人の優劣を決めたり罰を与えることがその第一義的な目的ではなく、正しい現状認識と目標設定による育成を目指すためのものであり、「評価制度の本質的効果」に期待するのであれば、開示義務云々は別として少なくとも標語(S~D等)や評価基準、育成コメント等の内容は従業員に請求されるまでもなく積極的に開示すべきではないかと考えます。
それが評価者のレベルアップや均質化、評価制度の充実、信頼獲得に繋がります。

一方、評価者のメモ書き等、そもそも本人に伝わらないことを前提として書かれたものについては、他の従業員との比較に関する記録もあり得るでしょう。

そのような細かなものや、他者に影響を与える内容まで開示されるならば、評価者はリスクを感じ、忌憚のない評価を行うことが難しくなるでしょう。

よって、このような内容に関しては非開示とすべきと考えます。

〔三浦 裕樹〕

Ⓒ Yodogawa Labor Management Society


社会保険労務士法人 淀川労務協会




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