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化学療法中に生ものは本当に禁止?

こんにちは、薬剤師よっちゃんです!

皆さんは患者さんから「生ものとか避けた方が良いんですよね?」って言われたことはありませんか?

あるいは、骨髄抑制により免疫力低下するから感染リスクのある生ものはダメなのでは?と思う事はありませんか?

今回はそんな疑問にお答えしようと思います!

抗がん剤治療中の懸念

ここ数年で化学療法は発展してきました。

分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の登場があり、がん種によっては殺細胞性抗がん剤の使用率も変わりました。

しかし、骨髄抑制(主に免疫力低下)に大きく関与する殺細胞性抗がん剤はこれからも必要不可欠な薬剤となるのは間違いないでしょう。

骨髄抑制では一番気を付けなければいけないことは「感染症」です。

好中球が主に免疫力として機能するものになりますが、この数値が落ちることで感染症のリスクを上げてしまいます。

健常人と異なるのは細菌やウィルスなどの異物が体内に侵入したときの対抗力が低いため重篤化するリスクが高く、回復までの時間も多く必要とします。

中には敗血症などの状態になり危篤な状態になりかねません。感染対策が重要であることは言うまでもないですね。

具体的な感染対策

感染対策と言うと大変なものに思えるかもしれませんが、実は誰にでもできることが感染対策の基本となります。

基本的には免疫力が低下し、細菌やウィルスへの抵抗力が低くなっている人は体内にそれらを入れない。ということが最も重要です。

そのため行える感染対策としては医療従事者が伝える内容は、主に以下の通りになります。

  • 手洗いうがいの徹底

  • マスクの着用

  • 人混みの回避

  • 生ものを控える

特に手洗いうがいの徹底、マスク着用については同居するご家族にも配慮してほしいと思います。

コロナでマスクをすることに対する考えは各自お持ちかとは思いますが、大切な身内を守るため。と考え実施して頂きたいと思っています。

少し話はそれましたが、今回のタイトルにもある「生もの」の摂取については、実際そこまで気にする必要はないとも言われています。

化学療法中に「生もの」OKの根拠とは

化学療法中の食事制限に対する感染症予防の有効性については、一部疑わしい論文が出ています。

その論文は下のリンクから飛べますが、翻訳して読むのもめんどくさいと思うので要点を簡単にお伝えします。

論文の解説

アメリカで行われた試験で、参加者の概要は以下の通りです。

  • 急性骨髄性白血病(AML)患者

  • 寛解導入療法を実施中(白血病細胞5%以下を目標にする抗がん剤治療)

  • クリーンルーム(無菌室)に入院

  • 抗菌薬や抗真菌薬予防投与実施

153名の方が参加し、生食群(生野菜や生果物)75名と調理済群78名で重篤な感染症のリスクを比べた試験になります。

結果は重篤な感染症が起こったのは、生食群(35%)、調理済群(29%)と有意な差は認められなかったとされています。

最新の情報は

先ほどのこの報告は2008年のもので古いのでは?と思う方も多いと思います。

最新の情報はないのでしょうか?
N数も多いとは言えないため、鵜呑みにするのも良くない気がしますね。

色々調べていたら最新の情報が更新されていました。

ASCO(米国臨床腫瘍学会)が2022年5月16日に公開しているガイドラインに記載がありました。

Does consuming a particular dietary pattern or food(s) during cancer treatment safely improve outcomes related to QoL, treatment toxicity, or cancer control?(がん治療中に特定の食事パターンや食品を摂取すると、QOL、治療毒性、がん制御に関連する結果が安全に改善されるか?(和訳))という問いがありました。

「Neutropenic diets (specifically diets that exclude raw fruits and vegetables) are not recommended to prevent infection in patients with cancer during active treatment(抗がん剤治療中の好中球減少食(生食制限)は感染症予防に推奨しない)」と記載されています。

https://ascopubs.org/doi/abs/10.1200/JCO.22.00687

まとめ

以前からあった報告だけでなく、米国でのガイドラインでも上記のような解説がありました。

海外が生ものとして設定しているのは、「生野菜や生果物」ですので、生魚や生卵などは該当しません。

これはあくまでも個人的な考えですが、生魚や生卵については食中毒に注意すれば同じように考えることは可能ではないかと考えています。

また、特に食の安全面に関しては、海外よりも日本の方が圧倒的ですし衛生的です。

そのことも踏まえると、日本において抗がん剤治療中に生食の摂取に神経質になりすぎなくても良いのでは?

と個人的には解釈しています。

もちろん薬剤師だけで判断すべきとは考えておらず、医療者同士で患者さんの状況も考慮して食事の内容は決めていくと良いかと思います。

皆さんの普段の業務にすこーしでも役に立ち、患者さんの負担にならぬよう患者家族、医師や看護師などと情報共有に努めて頂けると幸いです。

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