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『センスの哲学』(千葉雅也著、文芸春秋)

読了日: 2024/8/26

 リズムと破調の読み取りが肝要である、とまとめると短すぎるかもしれませんが、概ねズレはないと思います。
 最終的には(終章では)「センスの良し悪しと、アンチセンスが拮抗するところ。」「センスは、アンチセンスという陰影を帯びてこそ、真にセンスとなるのではないか。」となってしまいます。
 つまり、センスとは何たるかを紙幅を割いて説明し、対抗軸のアンチセンスを伏線に抽象的ではないセンスを明文化しようとするのですが、アンチセンスにセンスの感覚が含まれているトートロジーに陥っているように感じました。これは読み込みと理解の至らなさに依るかもしれませんが。

 読了を経て表紙カバーのラウシェンバーグ(あるいはほかの抽象画など)を自分なりに読み解けるか?というとそうはならないと思います(印象は別として)。著者はある程度(あるいはかなりの)の美術知識、作品の時代背景、作家のプロフィールなどを踏まえて鑑賞したうえでの本書記載であると思います。カバー帯に「生活と芸術をつなぐ万人のための方法」とありますが、そうとはならないと思います。

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