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「言語の本質 ――ことばはどう生まれ、進化したか」(今井むつみ・秋田喜美著、中公新書)
読了日: 2023/8/29
今井むつみ氏の著作はこれで3冊目でした(ほかは、「学びとは何か」、「英語独習法」)。本作もとても良いものでした。オノマトペ研究者の秋田喜美氏との共著で、幼児の母語習得プロセスからヒトだけが言語をもちえている理由を探求する。
オノマトペのもつ音象徴的なアイコン性が(日本語を学ぶ)幼児にとっての、言語習得への第一ステップをあたえる。モノと対象を示す名詞との組合せは、対象物の特徴(色、形など)の関係性から習得を重ねてゆきそうだが、動詞の習得は難しい。動作主体、動作対象物、方向性など多くの要素が眼前にある中で、いま耳に入った音はいずれの対象を示すものか?言語をもたない幼児にとってはハードルが高い。そこで、オノマトペの音象徴が(音の持つニュアンスが)大きなヒントとなるようだ。
前著では認識バイアスをスキーマとあらわしていたが、本著ではより具体的にアブダクション推論を用いて展開される。
あとがきにて「言語の本質」とは大風呂敷との言及(秋田氏)があるのですが、オノマトペ研究から認知科学を経て、"人類が言語を取得しているのはなぜか"への問いは必然と思われる。「ブートストラッピング・サイクル」仮説も大いに腑に落ちるところです。