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雑草は敵じゃない、雑草は最高の緑肥
このnoteをご覧頂きありがとうございます。
前回の記事では、大枠の理論で述べさせて頂いた4つの課題のうちの1つ、
「ミネラルの流出」について、【水】と【動物】の関係性を主体に述べさせて頂きました。
今回は4つの課題のうちの4つめである「有機物不足」について、
【炭素】と【腐植】をキーワードに説明させて頂きます。
【雑草で野菜は育つ】
農業において、炭素が非常に重要な役割を担っているのですが、
実際のところ農業指導においてN・P・Kやカルシウム(石灰)、マグネシウム(苦土)の過不足を指導している場合がほとんどです。
残念なことに、炭素について意識されていないことが多いのが現状です。
しかし、生物性の土壌診断を行う方が少しずつ増えてきているようで、
炭素と窒素のバランスであるC/N比(しーえぬひ)を意識する方も出てきています。
C/N比とは土壌内の炭素/窒素の比率を表したもので、10~20の範囲であれば一般的に良いと言われています。
有機栽培であれば30~40くらいは欲しいところです。
(現在炭素不足の土壌で有機栽培する場合、継続的な場合は20くらい)
このC/N比は炭素の量が多ければ数値は大きくなり、窒素の量が多ければ小さくなります。
そして、この炭素とは何かというと有機物のことであり、
土壌に炭素を増やすのであれば、雑草や堆肥などの有機物を大量に入れることで可能になります。
弊社の運営するオーガニック農園Baby Gardenでは、
一切の肥料を用いず、雑草を耕すだけで育てています。
つまり、野菜は雑草で育つんです。
菌ちゃん先生と呼ばれる菌ちゃんふぁーむさんが、
畝に木を入れてマルチで覆って栽培することで肥料なしで育つという菌ちゃん農法を家庭菜園向けにご指導されています。
まさにそのとおりで、肥料なしで有機物で育つんです。
ただし、これまでの記事で述べていますが、
現在は環境汚染問題もあり、なかなか自然の力のみで栽培することは厳しくなっています。
整った土壌でないと自然栽培を行うことは難しいため、壊れた土壌を回復することがまずは重要です。
「生態系理論」で述べさせて頂いているような栽培方法で実践してみてはいかがでしょうか。
【有機物は雑草と微生物】
日本各地の様々な農地を診させて頂いておりますが、
かなり多くの農地でC/N比は低い状態になっています。
島根のとある農業法人さんに伺わせて頂いた際、
「ここの土壌はまだ【土】になっていないです。」
とお伝えしたところ、非常に衝撃を受けていらっしゃいました。
それほど【土】とは何かを考えていない方が多いんです。
何故そんな状況かというと、
マルチや除草剤、土壌消毒によって雑草が生えづらい状態
有機物よりも化成肥料の窒素で育てる
これが現在の農業指導で当たり前になっているため、【土】を意識することがほとんどないからです。
まず、マルチを敷くとその部分に雑草は生えて来なくなります。
除草剤や土壌消毒は土壌【微生物】や種子を殺します。
そうなるとこの土壌では育てたい作物以外の【植物】は生きることができなくなり、土壌に対して有機物が全く足りない状態になります。
そして、窒素も問題です。
【微生物が土をつくる】でも述べたように、
窒素はハイカロリーなジャンクフードです。
酸化するとアンモニア態窒素から硝酸態窒素へと変化し、過剰に窒素があると虫が群がる原因になります。
窒素は土壌に入れなくて良いんです。
有機物は足りない、窒素は多い、そうなればC/N比は当然低くなります。
土壌は瘦せていくばかりですよね。
こんな状態では「肥料を使わないと育たない」のは当たり前です。
では、「肥料がなくても育つ」状態にするため、どんな有機物を使うのか。
生態系理論において、一番良い有機物は雑草です。
草刈りや草むしりは生育初期段階では必要になるため、大変な作業にはなりますが、雑草は最高の緑肥です。
何故雑草が良いかというと、その土壌で育つ有機物だからです。
畑に堆肥を施用する方は多いと思いますが、
土壌内の【微生物】群
堆肥に住んでいる【微生物】群
この二つの【微生物】は異なった集団です。
異なった集団を一緒にするとまず何が起こるかというと【微生物】同士が仲良くするために、今までの繋がりから新しい繋がりを構築しようと少し時間がかかります。
この【微生物】がコミュニティを構築するための時間を短くするためにも、
同じ土壌で育った雑草という緑肥を育て、それを土壌に加えてあげることが一番良い有機物の与え方になります。
周辺の畔に生えた雑草を刈り取り、畑の中に置いてあげるのも効果的です。
園芸店やホームセンターで苗を購入し、定植すると何故か弱ってしまうのもこの【微生物】の違いが大きな要因です。
人も引っ越しをすると周辺環境の変化で凄くストレスを感じます。
それと同じで【植物】にとって【微生物】群が異なる状態になることは
知らない人だらけのところへ引っ越したことになるんです。
そうならないように、苗のポットに定植先の土壌を入れ、
数日経ってから定植するとストレスが軽減できるのでやってみてください。
![](https://assets.st-note.com/img/1724300085615-PzeYOQanL6.png?width=1200)
弊社では+Cure Waterという土壌改良剤の微生物資材を土壌にも苗にも散布し、似た【微生物】群にすることでストレスの軽減を行っています。
有機物を吸収しやすいようにするには、この【微生物】群の共有が非常に大事です。
【微生物】群がチームとして常に機能し、有機物という食材がたくさんあれば、どんな【植物】に対してもいろんな料理を提供できるとても良い【土】の状態のレストランができるのです。
【腐植物質の違いは溶けやすさ】
では、この有機物を【微生物】がどのようにして分解し、腐植物質になるのか。つまり、食材をどう下拵えし、どんな状態にするのか。
それを前回の記事「水を知ると栽培が変わる」にて少し述べさせて頂いた、
「フミン酸」「フルボ酸」「ヒューミン」の違いを踏まえて説明致します。
まず、有機物というものは無機物以外の全てのものであり、炭素(C)が入っているものは全て有機物です。
かなりの暴論で、有機栽培(オーガニック)は炭素が入っている栽培のことを指すため、化学肥料も農薬もビニールマルチも全て炭素が入っているから有機だ!という方もいます。
有機栽培と有機物は全く異なるものですので、この論理は当てはまりませんのでご注意を。
話は戻して、有機物は無機物以外のものであり、生きている生物(微生物、植物、動物)もその死骸も全て有機物です。
生物と非生物は生きているか死んでいるかの違いで、生物もいずれ非生物になります。
その非生物が蓄積され、微生物による分解が進むと腐食物質と非腐食物質になります。
非腐食物質とは有機物を分解した際に発生した多糖類やタンパク質、脂質、 リグニン、アミノ酸、単糖類など植物遺体や土壌微生物に由来する多種多様な有機成分で、化学構造が同定できているものをいいます。
つまり、この化学式ってコレだよねがわかってるものです。
一方、腐食物質とは化学構造が同定されておらず、数千から数万といった複合的な高分子有機物で構成されているため、まだわかりきっていないものをいいます。
その腐食物質の中でも分類がされており、
アルカリ処理を施した際に溶け、酸処理を施し残ったものがフミン酸
アルカリ処理を施した際に溶け、酸処理を施し溶けたものがフルボ酸
アルカリ処理でも酸処理でも溶けなかったものがヒューミン
と呼ばれています。
ヒューミンは無機物質との結合が非常に強固であり、フッ化水素など水素系のもので処理を施すと溶けます。
![](https://assets.st-note.com/img/1725263064-OS5dwUa293c1pyRxgMLlEke6.png?width=1200)
この図のように、有機物は化学式構造が同定されている非腐食物質と腐食物質「フミン酸」「フルボ酸」「ヒューミン」に分類することができます。
つまり、雑草や【動物】の遺体などの「有機物」を【微生物】が分解し、
非腐食物質はそのまま【植物】に吸収され、
腐食物質は少しずつ非腐食物質となったり、ミネラルと結合したり、【植物】による吸収を手助けする役割を果たします。
【この成分を入れたら良いは間違い】
雑草などの有機物で【植物】が育つ流れは把握できたかと思いますが、
よく勘違いされてしまうのは、「〇〇を入れたら育つよ」というものです。
窒素を使えば葉が濃い緑になる
リンやカリウムを使えば糖度が上がる
カルシウムを葉面散布すれば葉が強くなる
フルボ酸を使えば生育が良くなる
微生物資材使ったら土壌が良くなる
ミネラルだけで野菜は育つ
挙げればキリがないですが、コレで育つ系のお話は大量にありますし、
それに伴う単一の商品も山ほど存在します。
本記事で大枠の理論で述べさせて頂いた4つの課題
大気汚染による【光合成の阻害】
化成肥料や農薬による【微生物の死滅】
酸性雨や土壌消毒による【ミネラル流出】
慣行栽培による【有機物不足】
この課題に対して
【土】【水】【光】という環境生態
【植物】【微生物】【動物】という自然生態
この6つのキーワードと2つの生態系を基に
【生態系理論】(エコロジカルセオリー)
として理論と実践方法について述べさせて頂きましたが、
自然環境というものは全て繋がっています。
「〇〇だけ入れたら良い」ということを繰り返すと
どこかで歪みが生じたり、のちにしっぺ返しが来ます。
自然の循環を意識し、生態を整える農業を目指していきましょう!
さて、今回もだいぶ長い記事になりましたが、
ここまでお読み頂きありがとうございます。
本理論が何か少しでも気づきになればと思います。
次回は、弊社が製造しているバイオスティミュラント資材について述べさせて頂きます。