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「おみそしる」と「クロスワードパズル」
祖母はよく家の中で行方不明になりました。いや、行方はわかっているのです。だから「すがたを消す」と言った方が正確ですね。まいにち午前に1回、午後に1回くらい、30分(長い時は1時間)くらいすがたを消します。
しかし、こつぜんと消えてしまうわけではないので、家族もとくに心配はしません。というのも、すがたを消すときにはどこからともなく声が聞こえてくるのです。
「トイレに入るわよぉー!」
家中に響く大きな声です。家族は慣れたものですので、何も言いません。正午を伝える広場の鐘を聞いた村人のような「ふーん、もうそんな時間ですか」くらいの反応です。
そう、祖母のお手洗いはとてもながいのです。
ながさの秘密はクロスワードパズル。お手洗いの横に据えられた台には何冊ものクロスワードパズルの専門誌とルーペと辞書とuni鉛筆(HB)が置いてあります。開いたままの解きかけのページには祖母の角張った文字が細かく並んでありました。かなり本気です。
また、それらをお手洗いの外に持ち出している様子はついぞ見かけませんでしたので「お手洗いでクロスワードパズルに没頭すること」が祖母にとって特別な意味を持っていたのだと思います。お手洗いって落ち着きますしね。(あれ、これは隔世遺伝でしょうか。)
祖母はまれに「これが私のボケ予防よ。」と誇らしげに言ってクロスワードパズルの話をしてくれることがありました。今思えば、特に難しいパズルを完成させたときには嬉しくて誰かに話したかったのかもしれません。
早朝の静かなお手洗いにてふと、そう思ったのです。
さて、お手洗いの話ばかりしているわけにもいかないので、そろそろ話題を台所に移しましょう。
トップの写真は「肉入りお味噌汁」です。
前夜のご飯を腹八分目で済ませられた翌朝は気持ちがいいですよね。寝覚めがよくて「さあ朝ごはんをこしらえよう」という意欲が湧いてくる。そんな朝に食べたくなるのが、お肉が入ったお味噌汁です。
お鍋にお水と昆布を一片とお酒をちょろりと入れて弱火にかけます。沸いたなら冷凍しておいたの豚のこま切れを少し(50gくらいで十分)に、冷蔵庫のあり物(萎れてきた野菜)を2、3種類、ほいほい放り込んでひと煮立ちさせ、味噌を溶いたら完成!
ポイントは煮すぎないこと。ぼりぼりしゃきしゃきと食感が活きている方がサラダ感があって朝ごはんとしては好もしいです。これがなかなか美味しいんですよ。
「豚汁」と呼ぶには具材が少なく軽やかなので「肉入りお味噌汁」。ぜひ、お試しあれ。
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それでは、また明日。