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【ライブレポ】time after time 【zonji / LINE wanna be Anchors 】_20221203①

zonjiの1stアルバム『Our Time Our Love』リリースイベント「time after time」東京公演が12月3日、渋谷・TOKIO TOKYOにて開催された。

zonji
阿部将也(Vo./Producer)、野澤タクマ(Gt./Designer)の両名による在宅系バンドユニット。前身バンドを経て2020.05.02~始動。楽曲制作、REC、デザイン、動画制作など、活動に係るあらゆる工程をほぼ全て内製化することで身軽に活動中。歌謡曲風味のメロディー+現代的なR&Bサウンドを基本軸としているが積極的に外部アーティストを迎えるなど、DIY的な制作方法から生まれる音は多種多様。

https://friendship.mu/artist/zonji/

本イベントは東京公演と11月27日の大阪公演@心斎橋・pangeaの2回限りということに加え、zonjiと活動休止中の前身バンドLINE wanna be Anchors(以下、ライワナ)の対バンということもあり、ファンからは開催前から特別なライブへの期待感が高まっていた。出演メンバーも、okb(Ba.)、seekx(dr.)といったライワナ初期メンバーを迎えた編成で、並々ならない思い入れが感じられた。ライワナの活動休止から約3年、新たな形態zonjiでの1stアルバムをリリースしたタイミングという一つの節目となった本イベントの東京公演について前編(ライワナパート)・後編(zonjiパート)に分けてレポートする。

定刻を7分ほど過ぎた頃、会場BGMが大きくなり、JETの「Are You Gonna Be My Girl」のSEが勢いよく鳴り響く中ライワナのメンバーが登場。最初に出てきた野澤も、最後に出てきた阿部も大きく手拍子をして、観客の手拍子を煽り盛り上げていく。登場シーンから、メンバー全員が溌剌とした明るい表情で、自身たちもわくわくしている様子が出だしから感じられた。<I said,are you gonna be my girl>の歌詞を阿部が口ずさむと、SEがフェードアウトし、seekxのフィルインをきっかけに演奏がスタート。そこから渋いギターメロディ、ベースが情熱的に重なり、満員の会場の熱気をさらに高めるような前奏から1曲目の「欲望麻薬」が始まる。サビでは観客の拳も高く上がり、バンドと観客の想いが初っ端から呼応する気持ちの良いオープニングを飾った。ハウリング音が気になる中で、少し探るそぶりもあったが、熱い演奏は続いていく。そこから間髪入れずに「B with U」で、突き抜けていくような演奏と阿部が<夜も”渋谷TOKIO TOKYOから”>と歌詞を変えて歌うことで、観客との距離をさらに近づけていく。途中にある6拍子と3拍子のパートのスパイスが効いた「結末は僕の中にある」でも、ライワナの作り出す艶やかな世界観にますます魅了された。

ここで阿部が「いきなり業務連絡してごめん」と断りを入れながらも、「最高の音を届けたいのでちょっと時間ください、ご歓談ください」と会場を和ませながら、メンバー全員で音の具合を確認。本番で起こってしまうこうしたトラブルにも、前向きな言葉で切り替えてムードを決して盛り下げない姿に培ってきたキャリアを感じるシーンだった。

怪しげなギターの音を響かせた後、大きく息を吸って始まる「No.2」で一気に妖艶な雰囲気に染めていく。ライブならではの、テンポを抑えたゆったりねっとりとしたアレンジがむせ返るような色気を帯びていた。

最初のMCでは、「zonji呼んでくれてありがとう!」とあたかも別人かのように装った一言で阿部が観客の笑いを誘う。ここでさらに音の調整で、ドラムのキックのハウリングを調整しながらも、「これを言っていいのかわかりませんが、ただいま。ただいま~!」と明るい挨拶で話し始めると、「こんなこともあるけど、心は自分たちの音楽に向けてくれればもっと良い時間にします」と観客と約束を交わした。短いながらも、意気込みを感じる一言に胸が高鳴った。

ここからはしっとりと聴かせる楽曲が3曲続いていく。
「片思いの歌をやります」という前置きから、<君がニノなら僕がアメリ>という映画の登場人物が入った印象的で切ない歌詞とその切なさに寄り添う優しい雨のように流れるギターリフが美しい「WATASHI」、続いて「幸せな曲を」と言い放つと、<やっとここに来れたねと笑いあえる>幸せな希望に満ちた「はじまりのうた」が届けられる。幸せを歌ったかと思いきや、静かなイントロから始まる「隙間」で<始まりの歌はいつの間に僕を愚弄して消え去った>と遣る瀬無い感情をぶつけてくる。右へ左へ揺さぶるような曲のチョイスだが、酸いも甘いもかみ分けながらバンドも、ここにいる観客もこの日まで生きてきたのだから自然と心に響いてくる。それぞれの曲に、各々の想いを重ね、身体を揺らしながら聴き入った。

阿部が着てきたライワナ時代の黒い衣装が色褪せてしまっていることを、野澤の衣装と比べながら確認し、「これが歴史っていうものです」と愉快なMCタイムでは、シリアスな曲でも楽しさを隠し切れずにニヤニヤしてしまっていることを正直に話しながらも、「zonjiなんかのために体力残すんじゃねえぞ!」とまたも別人を演じ、観客の笑い声に包まれ和やかな雰囲気が生まれた。

王道バラードの「mirror」がライワナパートの終盤であることを告げる。音源に入っているピアノがなく、バンドのアンサンブルと突き抜けるような歌だけで届けられると、より身近に感じられて、自分のためだけに奏でられているような感覚になる。

阿部がギターを爪弾きながら、最後の曲に入る前にライワナが終わってからの3年の間にもzonjiとして活動してきたことを明かしながら、「どうしても根がロックで、一人ひとりの目を見るこの時間がかけがえない」と観に来てくれたことへの感謝と目の前の”あなた”に向かって音楽を届けられる喜びを声高らかに伝える。「すべてのことに終わりはある。でも、自分の心だけは無くならない。俺がいつも言っていた懐かしいこと、ロックの心が消えていないから大きな声で言うぜ、今からでも何を始めるにも、何を愛するにも遅いことはない。人生は長いもん。俺の目の前にいるみんなだけは彩り豊かに行きませんか、どうですかTOKIO TOKYO」誰よりもこの瞬間を楽しんで、輝く姿が、嘘偽りのない言葉だと教えてくれる。最後の一曲に込められた、彩り豊かな人生を送ろうという全力のエールが観客の心を震わせた。

seekxの刻む軽快な8ビートのリズムに呼応するように、ギターの野澤とベースのokbも前に乗り出して、迫力のある演奏を繰り広げる。疾走感のあるロックチューンにのせて<人生とは自分と愛すべきもの 守っていくんだ>と阿部の力強い歌声で観客の手を取るような「人生」でライワナパートは幕を下ろした。

後編(zonjiパートへ続く)


LINE wanna be Anchors セットリスト
01.欲望麻薬
02.B with U
03.結末は僕の中にある
04.No.2
05.WATASHI
06.はじまりのうた
07.隙間
08.mirror
09.人生



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