私の好きな本10冊
自己紹介というものが苦手なので、
好きな本を並べていこうと思います
身の上話より、影響を受けて育ってきたものを
知る方が人間性が垣間見えるような気がするので
1.中村文則『迷宮』
中村文則作品は全て読んでいるくらい好きなのですが、特に迷宮が好きです
互いの闇と、性と死が呼応しているような歪さ
今にも壊してしまいそうな、壊れてしまいそうな
狂気を、不安を、抱えながら生きているふたり
静かに人間の内面の陰鬱さを書く中で
優しい明るさも与えてくれるような作品
「本当の賢さとは世界を斜めに見ることじゃない 日常から受けられるものを謙虚に受け取ることだ」
(中村文則「迷宮」より)
2.太宰治『駈込み訴え』
ユダがイエスを密告するシーンを描いた作品
初めて読んだ瞬間、これは凄まじい恋愛小説なのではないか。そう思うほどに衝撃を受けました
私は尊敬と愛情は延長にあるものだと思います。
きっと愛故に憎むほど許せないことだってある。
一見なんてことないように見える出来事だって、
人の視点が変われば、違う角度に見えてしまう。
ユダはイエスと穏やかに暮らせたら何も要らなかったのに。誰がなんと言おうとこれは純粋な愛だ
3.芥川龍之介『歯車』
最初、どのように話が進んでいくのか不思議な、
非日常に迷い込んだように物語は進んでいく。
しかし、読んでいくうちに沈むように少しずつ、
破滅に向かう。歯車を意識する度に増す陰鬱さ
追い詰められていく様子が痛いほどに突き刺さる
絶望、狂気、息苦しさが全て伝わってくるような
目に映る現象全てが自分を死に誘っているような
最後の一文を読んだ時の気持ちが忘れられない
4.志賀直哉『城の崎にて』
少しのきっかけで死んでしまったイモリと
偶然性によって引き起こされる死と生の対比
私たちの周りには当たり前のように死があって
自分が生きている意味も結局は死んでいないと
いう偶然によるものなのかと考えてしまうほど
死生観を繊細に後味良く書き切る素晴らしさ
冒頭から自然の情景も綺麗でとても美しい
他の作品だと『剃刀』『范の犯罪』が好きです
5.夏目漱石『こころ』
先生と私から始まる物語 先生の抱える過去と罪
私が先生の立場だったらどうしていただろうか
話の全てに共感できるわけではないのだけれど、
自分の気持ちを優先することは悪いことではない
それぞれの気持ちを話し合えていたら違ったのか
この選択肢しか選べなかったのだろうか
いつの時代も人間は矛盾を孕む生き物で、残酷で
恋、友情、お金、なにかが複雑に絡み合う関係性においてハッピーエンドなんて所詮、存在しないのではないかと思わされてしまった。
6.最果タヒ『死んでしまう系のぼくらに』
誰も味方なんていないと決めつけて、閉じこもっていた昔、理解者としてこの本が近くにいました。
答えがないことばかりに悩んでしまう時がある
孤独とか考えたらどこまでも沈んでいくような
人間の関係性に全部名前がなければいいのに
この言葉は私のためだけにあるんだって
都合の良い勘違いを何回もさせてくれた作品
7.相沢沙呼『雨の降る日は学校に行かない』
学生時代、小さな教室が世界の全てで、
他に居場所なんてあるはずがないと思っていた
不登校、スクールカースト、SNS、いじめ
悩みや生き辛さを抱える子たちに読んでほしい
残酷なほどに共感できるから辛くて、苦しくて
それでもどこか眩しくて、希望の欠片が見えてくるような最後優しい気持ちで読むことができる
選択肢はひとつじゃないし、世界は意外と広い
それに気付いた時、少しだけ気が楽になるはず
8. 笹井宏之『てんとろり』
彼が生きている時にリアルタイムで短歌を好きになりたかったと寂しくなりましたが、それでも、短歌を好きになった私は僥倖だと思います
優しく流れる白い光のようであり、暗がりにも寄り添ってくれるような短歌がたくさんあります。
「しあきたし、ぜつぼうごっこはやめにしておとといからの食器を洗う」
(笹井宏之『てんとろり』)
9.ルネッサンス吉田『ひもとくはな』
こちらは漫画なのですが、本なので。
一人の女性の半生が花言葉と共に進んでいます
私のことを好きじゃない人が好き。だって見捨てられるのが怖い。一人で生きていきたいのに。
そんな苦悩と生きる主人公は自分の鏡みたいです
よくある物語と違って、大きな救いや理解ある誰かが現れるわけではない。抑、求めていないから
人の人生ってきっとそういうものだろうし。
この言葉たちを大切に心の中に持っています
「死ぬとかそんなの私は私に許さない」
「負けたくないの 私 私に」
(ルネッサンス吉田「ひもとくはな」)
10.パスカル『パンセ』
哲学の知識が充分にあるわけではないのですが、
パスカルは学生時代から好きでした
「人間の弱さは、それを知っている人たちよりは、それを知らない人たちにおいて、ずっとよく現れている」(パスカル「パンセ」)
私は、私が弱いことを知っている。
だからこそこれ以上振り回されることはないし
他者の弱さも悲しみも嘲笑うことはしたくない
以上、長々と読んで頂き有難うございます
最近はまた少しずつ本を読むようになりました。
救い、娯楽、学び、逃避
どんな目的であれ文学が、本が近くにある自分の人生を少しは誇りに思います。
(勿論音楽でも映画でもそれは素敵なことです)