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山際響:短編集

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山際響の短編まとめです。
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#幻想

ハウス

ハウス

 そのマンションは、人通りのまばらな、ニュータウンの大通りから離れた、この世の果てのような、静かな場所にあった。二階建てで象牙色の壁を持ち、白い扉がそれぞれの階に三つほどあった。扉は見えないが、一階の左端には小さな部屋が一つ付いていて、マンションの綺麗な長方形のシルエットを少し乱している。鉄筋コンクリート造で造りはしっかりしており、柱や壁は厚そうだった。周囲には空き地が広がり、ぽつぽつと一戸建てが

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オーロラ

オーロラ

 オーロラは見えなかった。雪を被った白樺の合間に、揺らめく星が見えるだけでも、スオミには満足だった。夜空を見上げ、そこに星が見えれば、北欧の小さな村に住んでいる事を忘れ、ほんの少しだけ日々の疲れもとれた。
 スオミは倉庫から、大き目のマキを二つほど取り出した。十歳の力では両脇に二つ抱えるのが限界だった。足元で白い犬が尻尾を振っている。犬の役割は、家の裏口のドアを引っ掻いて、スオミの母にドアを開けて

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ミステリーサークル

ミステリーサークル

 沼の畔で行われる花火大会の数時間前の事だった。私は久しぶりに故郷に帰り、実家暮らしの妹とともに、会場へと続く水田のあぜ道を歩いていた。陽は沈みかけていて、藍色の空には灰色に橙色がかった雲が広がっている。雲間からの太陽光線が帯状になり、藍色を背景に幾重にも重なり合っていた。地平線に目を向ければ、雲が創り出す影を受ける水田の稲穂が一面に見え、風が吹くと水を張ったプールのように音もなく揺らいだ。
 私

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