yumezyuya:x
冬のベーリング海は轟音に包まれている。ビッグマフくらいにうるさいやつだ。よく考えてみれば物心ついた頃には船に乗っていた。まだ八歳ではあるが一人前のカニ漁師として働いている。末広がりだから八は縁起のいい数字だと何処かの国で言われているらしい。僕には関係ない。明日、いや今を生き残れるかにかかっている。それにしても激しい波だ。気を抜いてしまっては飲み込まれそうだ。この船に長く乗っている船長は言っていた。
「冬のベーリング海に落ちればものの一分でこの世のものではなくなってしまうよ」