弓道にはバイブルがある!"弓道教本"
わたしと弓道
私は中学1年生のときに、学校の部活から弓道を始めた。
それからマイペースで続けつつ、弓道歴も20年近くとなった。
やはり道場に入って矢をつがえ、的と向き合うと無心になれる。
仕事のこと、家庭のこと、あつ森のこと…
大人になると頭のなかで「気になること」がどうしても増える。
弓道の時間はリフレッシュの貴重な時間でもある。
今回は弓道に関わったことのある人なら誰もが知っている本、"弓道教本"を紹介させて頂く。
中学生には難しかった「教本」
弓道教本は全日本弓道連盟が発行している書籍だ。
手作り感あふれる和紙の表紙とツルツルしたビニールのページで構成されている。
弓道の”段級審査”(何段とかいうアレ)には筆記試験があり、出題がこの教本からされるため、弓道をされている方はほぼ全員目を通したことがあるはずだ。
しかしながら、正直なところ中学生の私にとって弓道教本の内容は難しく、試験に出る内容以外で覚えていたことというと、
表紙に書いてある偉大な先生方がみな故人でいらっしゃることと…(子供心になんだか怖かった)
弓道場にも貼ってある、射法八節(弓を引くフォーム)の図の性別不明人間が面白かったことぐらいだ。
何といってもこの教本、いきなり“礼記”の“射義”から始まる。
弓道の裾野を広げようとかいう目線が全然ない。
ほんとうに容赦がない。
礼記 ―射義―
射は進退周還(しゅうせん)必ず例に中(あた)り、
内心(うちこころざし)正しく、外体(そとたい)直くして、
然る後に弓矢を持(と)ること審固なり。
弓矢を持ること審固にして、然る後に以て中ると言うべし。
これ以て徳行を観るべし。
射は仁の道なり。射は正しきを己に求む。
己正しくして而して後発す。
発して中らざるときは、即ち己に勝つ者を怨みず。
反ってこれを己に求むるのみ。
当時覚えている一番難しいものがドラクエモンスターズのはいごうぐらいだった私にはとても理解できなかった。
しかしながら、大人になった今読むと震える名文だ。
ここから始まっているところがまさに弓道教本の素晴らしさであり、現代弓道が弓道であり続けられた(単なるスポーツにならなかった)理由なのかと思う。
弓道の歴史と神髄が示されたバイブル
大人になって「弓道(という競技)のガイドブック」ではなく、一冊の書物として改めて目を通すと、弓道教本は弓道の歴史と神髄が示されたバイブルであると感じるようになった。
丁寧に選ばれた一つひとつの言葉のなかに、偉大な先生方が後世に伝えたかった弓道の究極の心が記されている。
最も代表的なのは次の言葉だろうか。
弓道には明確に“最高目標”が設定されている。
それが「真・善・美」の3つで、
弓道とは真を探求するものであり、
弓道とは平常心を失わず倫理を探求するものであり、
弓道とは美しさを追求するものなのだ。
‥と書いても「...で?!」という内容かと思うが、
弓道が単なる的あてスポーツではなく、高い精神性を持った一つの「道」であること、そしてそれが普段の私たちの生活をもっと豊かにしてくれるものであることが、少しでもお伝え出来れば幸いだ。
弓道が向き合っているテーマは普遍的なものだ。
引き続きこの弓道教本の魅力、弓道の考え方をお伝え出来ればと思う。
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