コラム#03 『料理は私の短所だった』
「ゆきさん、ご飯作りはされないんですか?」
ベビーシッター先の保護者に、そう聞かれました。
当時の私には料理への苦手意識が
すごくあって、まさか私に【お料理】が
求められる日が来るとは思っていませんでした。
どのくらい苦手かと言うと、
オムレツがスクランブルエッグになったり
ハンバーグがパンになったり
甘い料理が辛くなるくらいには苦手。
「保育への誇りがある」
「保育がやりたくてシッターをしてる」
という自負(ある意味言い訳)もある。
わざわざ料理に手を出す必要があるのか。
自問自答するなか「保護者の役に立ちたい」
「自分の可能性を広げたい」
そう考える自分もいました。
それからしばらくは、保育園勤務と、
シッターの兼業をを続けたのですが、
春が近づき、「来年どうする?」
と、次年度の話題が出始めた頃でした。
「やるなら今かもしれない」
そんな風に考え始めていた私は、
思い切って当時の園長先生に相談しました。
「調理資格を取りたい」
料理を仕事として受けるのは、個人事業ですから
多少なりとも実務経験やスキルを
提示できたほうが、保護者は安心
できるだろうと考えていました。
調理師資格を取るには、
2年の実務経験が必要でした。
園長先生は、「いいよ、頑張り~」と
二つ返事で了承してくれましたが、
保育の傍ら、調理現場にも入れてもらうので、
「本当にやるの?」と栄養士の
先輩は半信半疑でした。
はじめは「どうして調理?」と
調理場の同僚にも散々疑問を持たれました。
「調理の資格が取りたいんです」
「料理、本当に何も分からないので、
教えてください」
「どんどん指示をください、
とにかく頑張ります」
そう伝えて、がむしゃらに調理の先輩たちの
スピードについていけるように頑張りました。
はじめは、りんごの皮むきにも
40分かかっていたのに40人分でも
20分かからず用意できるようになりました。
右も左も分からないままに
「とにかくやってみな」という先輩の言葉に
「作ったこともねえ料理」を指示書と
にらめっこ、先輩にも質問しながら
完成させていきました。
一度作りきれると
「これは作れる!」と自信になるし
周り年上のおばさまばかりなので
「ゆきちゃん上達したね」ってたくさん
褒めてもらえたのが、とても良かった。
2年間挫折せずに済んだし、
自信をたくさんもらいました。
「いっぱい食べなさい!」っておかわりも
モリモリ入れてくれるし(笑)
退職前には先輩たちと飲み会をしたり
お子さん込みで日帰りレジャーに行ったり
婚活の相談までするくらい仲良くなれました。
頑張りを見てもらえていたんだな
認めてもらえたんだなって、
振り返ると嬉しく思います。
当時、保育士、ベビーシッター、調理師と
3足のわらじであっち行ってこっち行ってと
大変だったことは大変だったので
あの頃の自分に
「よくやりきったな!」って
言ってあげたいです。
当時の私と同じように、何かに
挑戦しようかな…と思っている人にとって
「こんなふうに、頑張れば実るんだ」
っていう前例になれていたら
もっと嬉しい!
今や、「美味しそう」「調理技術がすごい」
なんて嬉しいことを言ってくれる
フォロワーさんがいます。
毎月ご飯を作りに行っているお宅では
遠方のご実家のおばあちゃんまで
「美味しいです」ってお褒めの言葉を
かけてもらっています。
「料理が上手」って言われる日が来るなんて
想像していなかった。
これが私の「想像していなかった未来」です。