副業のビジネスモデル
背景
五年後には、サラリーマンにも副業が認められる時代が来るはずである。すでに副業を認めている大企業もあるが、まだ少数派なのが実態である。この記事では、副業と考えて即座に思い付くであろうアイディアについて少し深堀りをしてみて、自分のようなサラリーマンにとって何が良い選択肢となり得るか考察する。具体的には、ブログ、通訳者/翻訳者、投資家(資産運用)、教育者(教師や講師)、商品・アプリ開発について考える。
なお、私は特に副業をしていない。
結論
本業(=サラリーマン)を徹底的に頑張ることが最も効果的である。(本業で何をどのように頑張るべきかについては、別途書きたいと思う。)
ブログ
手っ取り早く思い付くのはブログである。初期費用は(ほとんど)かからないし、note などの既存のプラットフォームを使えば、だれでも洗練された美しいデザインのブログを開設できる。ブログを開設すれば、あとは記事を書くだけである。書いた記事にアクセスが集まれば、広告収入やアフィリエイト(紹介料)収入が期待できる。端的に言えば、寝ている間にブログがお金を稼いでくれるのである。
しかし、だれでも簡単に始められるため、一般的にブログ記事は質が悪い。 note を始めて驚いたことでもあるが、同じような媒体の雑誌記事や新聞記事と比べて、ブログ記事は誤字脱字のない文章がとても少ない。また、正しい書き言葉が使われていないケースも散見される。これはブログには雑誌や新聞のように編集者がついていないことが原因であり、素人は(たとえ note の初心者向けガイドに記載があっても)公開する前に自らの記事を音読することすら少ないのである。逆にこの一手間をかけると質は担保されるが、労働時間が増えることにつながるのである。
ブログ記事の内容も重要である。速報性が重要な場合もあれば、独自性が重要な場合もある。いずれにしても優れた記事を書くには、それなりの労力を要する。(ここでの「優れた記事」とは便宜的にアクセス数(PV数)を稼げる記事と定義する。)そして、優れた記事を書き続けるためには更なる労力と時間を要するのである。
このように、副業としてのブログの問題点は、記事を書く=労働時間の増加になってしまうことである。単純に労働時間を増やしてブログ記事を増やすのであれば、本業に時間を使う方が効果的であると思う。たとえば、本業に関わる資格取得の勉強であったり、新しい業務のための学習であったり、本業でさらに稼ぐために自分へ投資する方が効果的に見えるのである。そのため、ビジネスモデル的には自分が優れた記事を書こうとするのではなく、優れた記事を掲載するサイトを作らなければならないのである。要すれば、サイトの運営側に回る必要がある。
まずは、明確なテーマを設定し対象を絞ったサイトを作る。言わずもがな、このテーマ設定が重要である。このあたりは、本業でマーケティングに触っている人たちが強いと思われる。そして、テーマを設定した後は、必要な作業を積極的にアウトソースするべきである。(この後にも述べるが、サイトの構成を自分で考えたり、デザインやプログラミングを学ぶことが好きな人は、自らやればいいと考える。しかし、その場合、本質的には趣味の活動であり、ここで考えている副業とは整理されない。)
もう少し具体的に書くと、サイトのテーマを設定した後は、デザイナーやプログラマーに美しいプラットフォーム(サイト)を外注し、クラウドワークス等のサービスを利用して安価な記事を大量に書かせるべきであると思っている。つまり、自分はサイトの運営側に回る。記事を自分で書く必要などない。具体的にやらなければならないことは、どのようなテーマで、あるいはどのような切り口で記事を書かせるかについて指示をすることであり、誤字脱字チェックや段落分け等の細かい赤入れをする編集者の役割である。あるいは、この編集者の役割さえも、高学歴の大学生を雇って外注してもいいかもしれない。とにかく、記事を書かせて、内容を確認させて、美しいプラットフォームに掲載させて、アクセス数を稼いでいく、というビジネスモデルにしないと副業としての儲けにはつながらないと思う。
さらに、ブログの収益モデルは極めて脆弱である。広告収入やアフィリエイト収入は、他のプラットフォームに依存している状態である。Google や Amazon はいつでも広告料を変更できる立場にある。そして、検索アルゴリズムの変更によってアクセス数が激減することもあり得る。これらはコントロールできないリスクである。
これらを考慮すると、ブログは副業の候補とするべきではなく、個人の思考をアピールする場だと割り切って広報的に利用するべきだと思う。アクセス数からの広告収益ではなく、記事を読んで「会いたいな」「一緒に仕事をしたいな」と思ってくれる人との縁の入口をオープンしておくことが、本業に良い影響を与えることになり、また、より良い副業に繋がっていくのではないかと思う。
例外は、先ほども述べた通り、趣味としてブログ活動を行っている場合である。サイトの構成を考えたり、その実装のためにプログラミングしたり、記事を書いたり、コミュニケーションを取ったりすることを、趣味として楽しんでいる人達については、趣味の延長線上から収益化を考えることは合理的だと思う。
通訳者/翻訳者
私は海外に住み外国企業で働いていることもあって(決して満足できるレベルではないが)英語ができる。そのため、通訳者あるいは翻訳者は副業の一つの選択肢である。過去に通訳学校に通っていたので、通訳技術の難しさについても理解しているつもりである。(カンタンではないが、フカノウでもないと思っている。)
通訳や翻訳は IT の発展によって、機械に置き換わってしまう可能性が高いと言われている。DeepL のような Google 翻訳よりもこなれた日本語訳を提供するサービスも開発されている。しかし、文脈やニュアンスを踏まえて正しい意図を伝える通訳技術まで機械に置き換わるとは考えにくい。
また、文化の違いや事前の根回しが生きる「企業内通訳者」は十年後も健在、あるいは機械の不完全さから再評価される流れになるかもしれない。その場合、通訳は今後も副業の選択肢として残るだろう。しかしながら、ビジネスレベルの通訳には高いレベルの英語力と通訳技術が求められる。そのためには、相応の時間をかけなければならない。
上記の通り、本来ビジネスレベルでの通訳は非常に重たい業務であるが、チープな通訳でも問題ない状況であれば、本業で必要な英語力向上を主目的としたお小遣い稼ぎになるかもしれない。たとえば、小金持ちの英語圏外国人に大相撲観戦+浅草観光ツアーの通訳を実施する、など。しかし、ここでも副業=労働時間の増加となる点には留意が必要である。
翻訳も同様に重たい作業である。ブログの章で言及した通りではあるが、たとえば英語圏で人気の記事や考え方を「翻訳」して記事にすることは、著作権上の問題を脇に置いても Google 翻訳で事足りるため、記事を書く労力を考慮すると副業として魅力的な選択肢ではなくなってしまう。むしろ、野球のメジャーリーグニュースサイトのような英語ができない日本人のアクセスを集めることを目的としたサイトを作る(=テーマ設定をする)ことが重要で、あとは英語ができる人を雇って書かせればいい。
投資家(資産運用)
資産運用(キャピタルゲインおよびインカムゲイン)によって生活する、というのも魅力的な一つの副業の選択肢であるように見える。しかし、まずは元手が必要である。そのため、大抵のサラリーマンにとってまずは本業の年収を上げることが最適解である。
株や FX あるいは暗号通貨の短期トレーダーになると、一日中相場に張り付いてチャートを分析しなければならない上に、相場の急激な環境変化によって精神が安定しなくなるのではないかと思う。結果的に、本業(=サラリーマン業)に悪影響が出てしまう恐れがある。そのため、現段階では魅力的な副業の選択肢とは言えない。
一方で、長期投資は趣味の活動になり得る。本業で将来的に持っていなければならない目線/視線で意思決定することを数年単位で答え合わせができるからである。(別途書きたいと思うが、ポジションを取ることあるいは身銭を切ることを目的に投資を行うことは、権限のないサラリーマンにとって本業へポジティブな影響を与えると思っている。)
しかし、お金を増やすこと(キャピタルゲイン)をあるいは収入を得ること(インカムゲイン)を目的にした場合は、取り扱う額を増やさなければならない。すなわち、株式市場で信用取引をするように、あるいは FX で数百倍のレバレッジをかけて取引をするように、個人では動かせない量の額をハンドルするようにならないと、小銭稼ぎで終わってしまう。たとえば長期の資産運用で、数年かけて数十万円を得る活動を副業と呼べるのだろうか。
身も蓋もない話であるが、良い投資家になるためには、知識の量と人脈の質が重要であると思う。そして、前者も後者も、本業から得られるものが最も優れていると思う。したがって、長期投資家になることを前提としても、普段の仕事に注力することが結果的に副業へと繋がる近道だと思う。
(ここでは意図的に不動産については触れないことにした。)
教育者(教師や講師)
副業=単純労働時間の増加になる選択肢である。学生時代は家庭教師のアルバイトでも比較的良い単価でできた高学歴のサラリーマンも多いと思う。しかし、社会人となってから必要となる肩書は「有名海外大学院卒業」「純利益〇〇億円企業の経営者」であるから、いずれにしても本業を頑張ることが重要である。逆に、キャリア選択の際に、この副業につながる肩書が手に入るかどうか、を検討材料に入れることにすると良いかもしれない。
あるいは学習教材(良い例は東進のDVD授業/悪い例は「30日で英語がペラペラになる方法 3,000円」のようなもの)を開発して、寝ている間にお金が入ってくるようになれば儲けもの、と考えても良いかもしれない。実際に note でマネタイズされているケースで最も多いのは英語や資格の勉強方法のように見える(偏見である)。しかし、結局のところ、これらは教科書を書くことであり、本を書くことである。その際にも、やはり本業でいかに結果を出したかが重要になると思う。説得力の問題である。
私にとっては、たとえばこの記事を売るかと聞かれれば明確にノーであるし、この内容をセミナーでやるかと言われても現時点での答えはノーである。しかし、自分が本業で結果を残して人生のステージが変わった際には、考えるかもしれない。したがって、副業の選択肢というよりも別の稼ぎ方という位置づけになっている。
商品開発・アプリ開発
今の時点では、私にはその技術がない。多くの普通のサラリーマンも同じだと思う。もちろん、イラストの才能があったり、服やアクセサリーを作れたり、アプリを作れたりする人にとっては選択肢となり得る。ただ、3D プリンターの登場によって、モノづくりのハードルは下がったことは事実である。
私は向こう十年を見据えて趣味の軸を「消費」から「創作」に移す必要があると思っている。なぜなら税金で社会が維持できなくなる(あるいはなりつつある)と、消費することのコストが更に高まることが予見されるからである。また副業の観点からは、今から始めれば十年後には趣味で作ったものが売れるという状態になっているかもしれないので、まずは創作活動を試してみることが良いと思う。実際に売る段階になれば、本業で培ったマーケティングの知識を応用することに注力できるかもしれない。
ただ、基本的には設計図を書くことが重要で、作業者になってはいけない。欲しいものを趣味の一環として作って、それを他人にも使ってもらえるようにすることが意味のあることだと思う。だから、まずは「自分」が何を求めているのかについてじっくりと考えることが重要である。そして次に、自分で作れないかどうかを検討する。そして自分で作れた場合には、それを商品化できるか検討する。このような流れを考えると商品化した後のマーケティングがかなり重要に思えてくる。マーケティングについては本業で触れることができる人も多いのではないか。(あるいはマーケティングの部署に異動を希望しても良いかもしれない。)
私にとっては、料理が一番身近な例である。息子や娘から「パパの料理最高」と言ってもらえることと、料理を作る楽しさを同時に追求した結果として、将来的に小さな定食屋を開けるようになるというストーリーである。(尤も副業的には、定食屋のシェフになってはだめで、シェフを雇って店を経営する側に回らないといけないのだが。)
脚注
もし追加で考えられる副業のビジネスモデルのアイディアがあれば、ぜひコメントいただければありがたいです。
余談ですが、私はトーキョーハーバーさんの熱狂的なファンであるため、誤字脱字誤植チェックのお仕事をご依頼されれば、喜んでやりたいと思っています。
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