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散文韻文

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#詩

詩「 あ(め)」

あわい     (ひかり) ゆらぎ     (ながら) よわくて    (おちる) うすくて (むねさんずん) きこえない (さんずん?) しらない  (みえなくて) さわれない (あたりまえ) くらい   (そうだよね) 裸・裸・裸  (規則的な) 赤い (感情を受け取って) 細いのね (ひどい拒絶ね) うるさい は(つめたくて) つめたくて は(愉しい) 熱い へこみ (ひどい) 穴 好きだ (なんて) ふくらみ (くろい髪) の秘密 (おしえて) る・る・る (音で)

その火のまえに

ナラティブが足りないようだ 自分の身体よりも巨大な 火をお前は見たことがあるか 神社で 河原で 住宅街で 記憶を掘り起こす という比喩の この物量感は何か 大きくて重たい 感じがして好きだ 夜のサイレンが 段段とうるさくなって その火のまえに 何台もの赤い車 弥次馬 弥次馬 弥次馬 お前は無視してぶんぶん歩く それでも目の端の空は 充分に赤かった 血潮のように それ以上に憶えているのは 曲がった露路の閑けさと 公園の暗さ 夜気の冷たさ お前にはそれらのほうが 何倍も刺戟的

せなかとおなか

あなたの味方でいるよ こどものころのやけどが いまも それは 歴史 楽に生きられている 最近は あなたのはなしを読みたくて 検索している履歴 うすあじ えだまめ レトロプリン ノートに書いて それからタイピング 自動保存とかまだ なかったころの 古い車 アフリカ 読んでいない句集 二十五年もののわたし しあわせです それを 聞けたのでもう すこしずつ 捨てはじめています やわらかい と 感じるとき なにが起こっているのか 贅肉のすくない 指の先で ふれるiPhone ゆれる

夏の庭、あるいは時空間たち

話しかけられて 夏の庭 私はビールを 吹き出してしまう 過ぎ去った人 まだ見ぬ人 ちらほら 傘を持っている人 こんなに青くて 傘は不要な 今なのにね 境界線は ありません 電波は 圏外 届かない 地図を更新しようなどと 考える馬鹿ももういない 小石を並べて 墓とする あの子は誰の子だったのか 風が頰 指が髪 飛んだ鳥 死んだ猫 嫌な匂いだ 知っている おまえ、あのとき 時空間たち

ワンピース、あるいは枝垂れ柳

ぼくが女性だったら ワンピースばっかり着たい ワンピースってすごくないですか 構造としてはほとんど布の筒ですよ ふだんシャツとズボンばっかり着てるけど なんで上と下に分けるんでしょうか つなぎとかオーバーオールなら男性も着るけど それもなんか窮屈な感じがします ワンピースって服としてとても合理的だし なにより開放的ですよね 風も通り抜けます でもぼくはたぶんこれからも ずっと男性のままなので 着ることはないんでしょうね ないものねだりでしょうか ないものねだりでしょうね