連作短歌「やきもき」

一度だけそれも90分だけで死ぬ夜おもいだしそうな朝 「鳥人間コンテスト　事故」　広告の隙間をすり抜けながらのデート 行き止まりルートを多く盛り込んで俯瞰で見ないと会えない私

連作短歌「アナフィラキシー」

リモコンの蓋の部分も大切に守るわたしを説得する君 役に立つ男になってしまいそうな季節、橋を渡って戻る いやなことなのかもよくわからないこと言われて責める自分の暗さ

連作短歌「最大積載量」

冷たいと思われている液体の展示期間が限られている これ以上のせちゃいけない質量のだんだん汲み取れなくなる会話 二年前くらいにずっと舐めていた飴がリュックの底から出てきた

日間賀島

連作短歌「日和」

半分のアップルサイダー胃に捨てて昨日の自分につける点数 最近はひとりでなにかするときに誰かとだったらどうかなと思う あきらかに途中で終わったいくつかの話題の不意に思い出される

連作俳句「時間の無駄」

あまりにも猫の口から漏れる春 駅ビルや汗ばみながら畳む布 新米のやけに立ち止まりたくなる 冬紅葉きみに耳たぶあるような

連作短歌「ショショ」

見下したことも正しい判断の一部だったと言わせてあげる 守るほど大事でもないはずだけどそれでもこんなに必死な弱さ 気のせいとすぐ決めつけて受け入れを受け入れてくれない冷たい手

これはもう片思いでもないなんかスプリンクラーみたいなもんだ／窪田悠希 #tanka

連作短歌「水面下」

降りるともなく降りている階段でこけるともなくこける雨の日 気づくともなく気づいてる優しさが閉じるともなく閉じる交友 終えるともなく終えている毎日に触れるともなく触れるジェラシー

なにがどう違うのだろうコイントスして決めるのとあなたのそれは／窪田悠希 #tanka

連作短歌「防御力」

生きることって移動することだからこそ座っていてもいい昼休み 遠足のしおりによるとトロッコに乗るとき六人ずつに分かれる 借りるともなく借りていたCDを流すともなく流すリビング

なつのよる停まったままの救急車から消毒のにおいがしてた／窪田悠希 #tanka