大雪一過のヨルシカ
「10年に一度」の大寒波がやってきて「災害級の大雪」見舞われた2023年1月25日。この日、僕は「ヨルシカ」の『前世』というライブの2日目を見に行った。
過去に同じ題名で配信ライブという形で『前世』やっていたが、このときとは演出が異なるとの告知があった。2019『月光』と2022『月光再演』と2021『盗作』が特定のアルバムを予習すればいいだけだったのとは異なってリリースされた全アルバムいずれも予習範囲となった。「全曲制覇」している僕は予習なしでもイントロで分かるし、『夏草が邪魔をする』『負け犬にアンコールはいらない』収録曲を目の前で生演奏は聴いたことがないから楽しみ。一方で今回のストーリーが全く解せなさ過ぎて、見る方なのに緊張する。
ライブの前に雪ソング
「アイスバーン」に怯えながらヨルシカライブに向かう道中。この昼は雪ソングをかけた。京阪、近鉄ともに雪に強い電車ではないため徐行が目立つが、この時ぐらいしかかけられない曲たちを聴けたのは嬉しかった。
新曲の『テレパス』は
という歌詞が組み込まれている。夏のイメージが強いだけにかなり珍しい。こういうときに聴いてみたかった。
会場到着
10分ぐらい遅れたが、物販開始30分前には「大阪城ホール」に着けた。そこには割と長い列。JRの「新快速が走る界隈」で全面ストップ状態でも、前日入りしていた、初日と2連戦という人もいそうだし、そこに絡まない環状線に繋がる路線や私鉄、地下鉄が動いていたからこういう列になるのだろう。
列を抜けて、冬物のヨルシカファッション、キーホルダー、「BEAMS」コラボのTシャツを購入。この時点で「BEAMS」コラボのパーカーが完売していた。
フォトブース
買った後は、フォトブースへ。ヨルシカのロゴ、「シカ」をモチーフにした『前世』のロゴ、さらにメインビジュアルをバックに撮れる。ちなみにスタッフさんに撮影もお願いできて、お一人様でもこんな楽しい。髪の乱れはあるが😅
楽しい日々が蘇る
さらに「FM802」とのコラボブースもある。ボーカルsuisさんが2021-22年度にDJを務めていた『MUSIC FREAKS』のブログに掲載されていた直筆メッセージカードが展示。下段には
という、さらなる直筆サインもプラス。個人的に毎回楽しみに聴いていてsuisさんの人となりやn-bunaさんの音楽性の源流を知れ、浅井博章さん、内田絢子さんなど「802DJ's」を通じて上手くなっていくsuisさんのスキルを楽しんだあの思い出がここに蘇った。
暇つぶして開場時間
一通り済ませて、昼ごはん、京橋駅「京阪モール」と天満橋駅「京阪シティモール」で暇を潰して会場へ戻り、18時の開場。今回はアリーナだ
玄関には「FM802」そして、n-bunaさんのお兄さんからお祝いのお花が届いた。特に後者は「え!兄貴!!」と心の中でびっくりしつつ、「優しい人やんかぁ」とほっこり。
ホールに入ると、謎の木が目についた。この木が物語の鍵を握ることになる。ちなみに今回は開場からスタートまでの間と終演後は場内の撮影OKと公認されている。一通り撮り終えると、島根で録音した一畑電車と「やくも」の音を聴き、note執筆に明け暮れて、開演を暫し待つ。
開演
そして、19時。いつものことながら初めはn-bunaさんの朗読で幕を開ける。文章には歌詞で聴き慣れたワードもちらほら。時々『前世』というワードだけ全面黄色い画面で強調される。聴くと男女2人のストーリーらしい。しかし、後半で覆される衝撃の真実を知ることになるとは…
演者登場、からの感情爆発
suisさん、Gt.下鶴光康さん、Ba.キタニタツヤさん、Key.平畑徹也さんと演者が出て、黒地に『前世』の文字が踊ると楽器の音が鳴り出し『負け犬にアンコールはいらない』が始まる。ギターと犬の遠吠えで僕の「感情のノッチ(列車のアクセル)」がフル投入。「涙腺のブレーキ」も緩みだした。
という歌詞を感情ボルテージ一杯まで表現するsuisさんの生声ですでにボロボロに泣けた。
その直後の『言って。』は昼の列車でよく聴くやつだが、時間の経過で歌声が円熟されて音源とは別物。それだけでも泣けてくる。そして、SLのイラストが目について「やっぱ鉄道の描写出てくんねや」と思った。
今宵の衣装を遠目で見た。
この物語のsuisさんの衣装は「赤ずきん」を彷彿させる赤い上着に白いドレス。座席が遠かったので分かりづらかったが、髪は緑系だったように思う。記憶を元に調べると「緑青」や「翠色」のような。今回の映像にある木道をイメージしたのだろうか。
誰もしないクラップ
「夢で鳥になった」という語りの後、語りの「夜鷹(ヨダカ)」というワードが入る『靴の花火』、『ヒッチコック』を挟んで、代表曲『ただ君に晴れ』が来る。クラップが入る曲だが、演出を全員分かってるからか皆がやらないか手元で小さくやるだけ。映像の青い衣装の女性がクラップするだけだ。やっぱりここも「ヨルシカ」らしい光景。煽らないし、やりもしない。
ヨルシカはこれでええねん。
文句言うなら他へ行け。
と言わんばかり。余談だが、映像に出てきた「新宿駅」の「小田急百貨店方面」とかMVで出てきた富山の「雨晴駅」を聖地巡礼したい。
あの朝の声が…
ちなみに「FM802」のDJ大抜卓人さんもライブ翌朝のラジオのツイッタートレンドを紹介する流れで行ったことを報告し、公式の口止めもしっかり守った上で世界観に見入るオーディエンスやその世界観の良さを語り「こういう演出を大きいところで見たらすごいだろうな」と語り『ただ君に晴れ』を流した。大阪アメリカ村のBIGCATというライブハウスであった1度目の『月光』を見ていた卓人さん。そこから言葉通りのこの大きな場所。ラジオDJはこういう感覚や予見も良かったりする。すごい2人にゾッコンになってる僕。
ふと気になる「江ノ電」
閑話休題、さらに語りの後、『ブレーメン』。盗作以降の新曲がここで入った。MVのようないろんな足の映像が出てきて、ふと緑とクリームの電車が気になって「江ノ電の「1000形」によく似てんなぁ」とオタク的に気になった。とはいえ、これもストーリーの正体に深く関わる。その曲の終わりはフェードアウトせずにアレンジし、『雨とカプチーノ』に連結。さらに続いて『チノカテ』も出てきた。ライブのセットは家の壁や飾り。どことなくそういう世界も語りで描写される。
ベールに覆われ、チェンジ。
『チノカテ』が終わると、白い緞帳が降りてセットがベールに覆われた。そして、n-bunaさんが前に登場し座り、また語る。その後の『嘘月』ではセットがチェンジ。これまでの5人に加えて、ストリングス編成が登場。おまけにsuisさんは赤い上着を脱いで、白のドレス一色。ここからラストまでこのスタイルとなる。
見たことある…
『花に亡霊』の映像ではツアーの『盗作』で出てきた夏の田舎や花火の映像。『思想犯』ではほぼ前回と同じ映像が登場。この世界も織り交ぜている。そして、平畑さんの方角を見るとヘドバンをするのを見つけ、「うわ!またヘドバンしてるやん笑笑」と心で思い、楽しかった。
『冬眠』で思い出す“初代”『前世』
『冬眠』はストリングスが印象的な曲。まさにこういうのが合うし、画面に『THE END』と映ったし、配信版『前世』もそうして終わっていったのが頭によぎる。でも今回はここで終わらない。
フラッシュバック『月光』
その後の語り。途中には濃青のブルーバックに『月光』という文字が強調。あの時のロゴまんまに。その後には『詩書きとコーヒー』『声』と言った『月光』『月光再演』に選抜されなかったアルバム2曲も披露。
ハプニングもらしい思い出
ちなみに『詩書きとコーヒー』では冒頭のギターが鳴らないトラブルですぐにストップ。電光石火の如くスタッフが壇上に駆けつけた。「大丈夫?」という声と挙手のレスポンスですぐに曲を最初からやり直した。リズムが崩れそうだが、これがライブらしい。それと聞いた話だが『月光再演』東京公演でsuisさんが急病で倒れたこともあったのだとか。(その後すぐ再開して完走したそう。)余談はさておき、こういう何が起こるか分からない不安な展開もあとから思い出に残るもの。
ストリングスでバージョンアップ
『だから音楽を辞めた』は音源や『月光』とも違う全く違うストリングス編成で一味バージョンアップした響き。冒頭を越えて泣けてきた。
そして語られる物語の真実と結末。
『左右盲』の前後の語りでは衝撃の事実が語られた。
冒頭の男女のうち、女性の方は犬に転生していたことが語られた。通りで「ホットミルク」がマグカップじゃなくてスープのような深めの皿だし、問いかけようとしても「ワン」としか言わないから気づかず無視する。「リードできない」という一言は「先導」ではなく「首輪に付けるひも」というのも分かったし、それは彼女の勘違いだったとも語られる。異なるイントネーションといずれも「lead」と綴られることを「なぞかけ」よろしく「言葉のあや」を駆使。文学少年だったn-bunaさんらしい驚きの「技あり」いや「一本」だ。その種明かしに続いたのが
『春泥棒』だった。物語の犬の光景や『ブレーメン』で出てきてここでも登場する「江ノ電」らしき車内など物語を振り返ると同時に「これの世界やったんや!!」と気がついた。アウトロ部分ではまたもボロ泣きした。さらにサビの部分では「桜色の紙吹雪」を飛ばして物語を表現していた。もちろん、拍手も歓声もない。こんな使い方もあるもんやね。
そして、物語は結末へ。冒頭と似たような並木道ではあるが、登場人物は男女ではなく、女性から転生した犬と飼い主の男性。近いのに遠い切ないこの世界。どのタイミングで女性がこの世を去ったのち、転生したのかは語られなかったか覚えていない。ただ、そういう一連のストーリーが『前世』たる所以が全て分かった。そういったところで『ヨルシカLIVE TOUR“前世”』という文字が画面に踊り、suisさんとn-bunaさんが深々と一礼して「ブラボー!!」と言わんばかりの大きな拍手喝采。万感の思いとともに大阪公演2日目の幕を下ろした。ちなみに、アンコールなんてもんは無い。1曲目のタイトルが既に言うてたぐらいだもの。
終演後に配布されたポストカードは裏表のデザインが異なる。そう、物語の本当の正体が分かるデザイン。
『月光』のような電車で物語を飛んでみた。
「城ホ」を後にし、帰り道。気分変えて新快速で余韻に浸ろうとも思ったが、昨日の今日で「本数わずか」というワードで気が引けた。平常運行の京阪に舵を切って、「プレミアムカー」をネット予約、京橋駅へ真っ直ぐ歩いた。
名物「フランクフルト」を食べて待つこと5分でやってきた。
勝手に「ヨルシカっぽい」と言って乗る
いつもの「青い京阪特急」3000系。でも、今回はライブの余韻に合わせたかのよう。suisさんのかつての髪色を彷彿とさせる濃い青色と今日の衣装を彷彿とさせる白色、さらにはグレーも「ヨルシカ」のどこかしらで見た感じ。色合いも「“水”都大阪」をモチーフにしているし、「ダイナミックスラッシュムーン」と呼ばれる月っぽい意匠を前面や座席などに取り入れている。それと「快速特急洛楽※」登板時に出現するヘッドマークは『月光』メインビジュアルのよう。(今回は「鳩マーク」だが)
おまけに夏になると「花火」を打ち上げることも。何から何まで世界観に合いそう。いつかコラボしてくれんかなぁ(それは言い過ぎか笑)
物語を飛ぶプレイリスト
そんな「ヨルシカ感たっぷり」という僕の独自解釈とともに特急に乗り込み、音楽も楽しむ。最初は電車の雰囲気から『八月、某、月明かり』、その後はライブで演奏された曲をリピート。
特に『冬眠』をかけた瞬間に外を見ると「淀駅(京都市伏見区)」の車庫は雪が残っていた。こんな奇跡的なリンクもあって楽しんで、このときはほぼ定刻で帰宅できた。
後日も
後日、同じ電車に乗ったが、その際にも『靴の花火』や『声』を掛けてみた。この日もまた、物語を飛んでるような雰囲気でおにぎりも頬張った。
振り返って
そんなこんなで楽しめた『前世』配信版とは一味違うどころかもう似て非なる全くの別物。そもそも配信版は語りが無かったのもある。それでも、選曲や海の描写はそれを彷彿とさせるし、「江ノ電」など鉄道にまつわる描写も個人的にはキュンとくる。過去のライブの描写も交えて描かれていたし、音源の頃からsuisさんの歌い方や表現は変化しているし、ストリングスアレンジもここだからこその胸の震えを感じられる。普段列車で聴いてる音楽も故郷や旅先の列車の思い出を混じらせて頭の中でミックスさせると「感情のノッチ」が引かれて、「涙腺のブレーキ」も全て解かれるよう。それを込みでの今回のライブも凄まじかった。そりゃ卓人さんが絶賛するわけだし、4年前に感じた言葉が現実になったわけだ。「一声」で恋してハマったこの3年。たった一度だけの恋愛と同様、好きになって良かった。そう思える。
noteのフォロワーを始め、日本中、世界中いろんなところでその世界観を好む人がいるからもっといろんなところでやってもええんとちゃう?と思ってしまう。でも、狭い範囲でやるのに何かしらこだわりがあるのかも知れないし、こういう貴重な光景の証言者の1人としての誇りを持ちたいと思う。
とか思っていたら、なんとこの翌日に早くも全国ツアーが決定!!「東名阪」や仙台、福岡、札幌、さらには初めて沖縄にもやってくる!!こんなビッグサプライズは久々に聴いたし、またも違う物語にドキドキ。さらに今回は過去最大級の公演場所と公演数。遠方で諦めていた人は元より、ヨルシカ好きで沖縄在住のnoteフォロワーとこの感動を共有できるかもしれないことに楽しみを隠しきれない!!😆
興奮はその辺にして、大阪公演は大寒波の影響をもろに受け、飛行機の欠航やJR在来線の不通など不可抗力で来ることが叶わなかった人が多い。そんな中で運良く来れて、いい意味で涙を飲んだ僕。ヨルシカの2人やサポートチーム、スタッフチーム、イベンター、その他関係者に加えて、大雪にへこたれずに運行を続け、楽しく音楽を聴けることとこの場所に来ることができた京阪や近鉄の現場に関わる皆様にも感謝したいと思った。こんな天気でもいろんな「好きなもの」に助けられたそんなライブだった。
また4月、会えるとええな。