読書メモ:堀越啓「論理的美術鑑賞」株式会社翔泳社 2020年
著者について
アートビジネスを展開する会社の経営者
内容
「論理的理解が感性に必要不可欠なものである」という方針の元、ビジネスフレームワークの手法を取り入れた美術鑑賞法を提示。
①基本の3P
a.Period(時代)
制作年/世紀の時代区分
b.Place(場所)
作品が制作または発表された場所/収蔵場所
c.People(人)
アーティスト名/生年、没年
②作品をありのままに見るための作品鑑賞チェックシート
a.モチーフ
b.色
c.明るさ/暗さ
d.シンプル/複雑
e.大きい/小さい
f.総合的な好き/嫌い
③アーティストのストーリー分析
a.アーティスト人生の始まり
b.師匠や仲間との出会い
c.試練
d.cを受けての変容、進化
e.このアーティストの使命は?
④3Kで美術業界の構造を把握
a.革新
当時起こった技術やテクノロジーの革新/その革新が社会や人、美術に与えた影響について/まとめ
b.顧客
作品がどの層のどんな人の手に渡ったか/顧客が作品を購入した理由/まとめ
c.競争/共創相手
当時のアーティスト人数は?派閥は?派閥同士の繋がりは?/どんな作品が新たな流れであるとされていたか?/まとめ
⑤時代背景を理解するAーPEST
a.Art(美術様式)
b.Politics(政治)
c.Economics(経済)
d.Society(社会)
e.Technology(技術)
以上5つのフレームワークを各展示や作品ごとに適切に組み合わせて知的理解を深め、より質の高い美術鑑賞をしましょう、というようなことが書いてある。
感想
前提知識が頭の中に増えれば増えるほど、何かに接した時の情報量が増え、それによって自分の中に判断基軸を持つことが初めて可能になる。自分の中にそういう感覚があるので読んでみた。
上に挙げた5つのフレームワークの紹介が作品自体を見ている視点からどんどん高度を上げ、時代や美術界全体を俯瞰する視点で情報を整理できるように構成されていて、分かりやすかった。
前提とする知識がない人はもちろん既にある程度教養が身についている人に関してもバラバラに入っている情報を整理するために使えそうだと思った。
私は圧倒的に知識が足りない側なので、一度好きな作品について色々調べながらチェックシートを自分で作ってみたい。
具体→抽象に高度を上げながら情報を整理していく手法はあらゆることに応用が出来そうな気がした。
それにしても、ビジネス本の世界では英語の頭文字を取って手法に何らかの名前を付けなければならない決まりでもあるんだろうか。。。