プレゼントを「取りに来て」と言われた話
旧暦の8月15日は中秋節。
ここ香港でも結構ビッグイベントで今年は9月21日(火)です。サラリーマンであれば、この時期色々な取引先から色んな月餅が贈り合いされますが、仕事関係でもらえないと自力で買う事になるんだな~と会社員じゃなくなってから知りました。
ちなみに去年は10月1日で、中国の建国記念日と重なっていました。
最近は香港もどんどんと世知辛くなって、日本と同様、お正月や中秋節や冬至など季節イベントからは、どんどん伝統の色が失われつつあります。特に今はそういう風流なコストをかける余裕が・・という状況も仕方ないかもしれません。
私は通訳翻訳の他に、日本語の個人レッスンもごく数人にしています。
その日、Zoomでのレッスンを終えると彼女が言いました。「この時期だから月餅を差し上げたいのですが」と。
こんな状況になるまでは彼女の家に週一でレッスンに行っていました。
彼女は、この香港で100畳分の広さの海が見える家(香港で「Sea View」は家賃がバカ高いのです)に住み(注:部屋部分のみではなくて廊下や柱や出窓とかも全て入れた敷地面積です)
ベンツを二台所有し、全身をブランドの新作で固めています。お手伝いさんが3人いて、24時間体制の運転手もいる、いわゆる”セレブ”な生徒です。
行くといつも手作りのスイーツ(byお手伝いさん)で歓待してくれます。
セレブな彼女はとってもいい人で、日本語の先生として彼女なりの精一杯の敬意を払ってくれているのはわかるのですが、ところどころで「人を使う」事に慣れきった人特有の言動をします。
彼女の家でのレッスンでも遅刻は日常茶飯事。
彼女のお抱え運転手が途中(←)の駅まで迎えに来てくれるのですが、家に着いてリビングで待っていると、バスローブに身を包んだ彼女が頭のカーラーもそのままに出て来て、「先生おはよー(何度も『先生』には「おはようございます」だと教えても変わらない)私今シャワー浴びたばかりなのよ。朝ごはん食べちゃうからちょっと待っててね。」と朝ごはんを食べ始めます。
・・・レッスン10:30スタートなんですけど。
彼女の家は、お金持ちしか済まないような香港島の南端(・・・と言われてもイメージが湧かないでしょうけど、大まかに言えばジャッキーチェンの家があるような区域)にあり、片道2時間近くかかるので、こっちは朝8時半に家出てるんですけど・・・。
当初、私は家が余りにも遠いので断ろうとしたところ「私の運転手で途中まで迎えに行かせますから」と言われ、余分にかかる交通費ももらい、結局私の方が香港島の地下鉄で行けるところまで1時間余りかけて行って、公共交通機関のない30分区間のみ運転手が迎えに来てくれます。
車なんだからもう少し近くまで迎えに来てくれても・・と思いますが、香港島は島なので、中国と陸続きの九龍からは海底トンネルをくぐらないと行けません。このトンネルが有料なのです。
ちなみに月餅は、対会社であれば持参して渡しますが、一般的にはクーポン配布が普通です(よくあるチェーン店の月餅なら、自分の近所の店でピックアップできる為)
彼女から「月餅を渡したい」と言われて、最初クーポンかと思い「じゃあ郵送してください」と言うと「差し上げたいのはLee Gardenの月餅なんですけど」と。
「Lee Garden」というお店の名前の部分だけ強調するようにゆっくりと言う彼女。
(え?「Lee Garden」て・・ただの利苑やよね?そこそこ有名レストランチェーンではあるけどそこまでは・・・何ココ、クーポンないの?!)
とにかく現物で買うってか。
ま~別に言うても月餅でしょー。そんなどうしても欲しいわけじゃないけど~・・(;^_^A と思っていると
「うちの運転手に、近くまで持って行かせますから」
と言います。
でもこれまでの2年半、この「お抱え運転手」も曲者で、自ら私に連絡を取って来て、色々自分の負担を減らすべく交渉してくるのです。
まあ、主人であるアンタがハッキリそう言ってくれさえくれれば、運転手はそれに従って運転するだけなんだからホント頼むよ、という気持ちでその日のZoomを終えました。
すると、その翌日すぐに運転手からメッセージが。
・・・ホラね、結局運転する車があったって、私の家ほど遠くまでは届けにこない。それどころか、自分に都合のいい日時、場所じゃないか。
香港島の金鐘駅マック前って、そりゃ私が毎回レッスンでピックアップしてもらってる場所やし・・・。
もう運転手にオーダーしてしまえば、彼女はノータッチ。
私的には「差し上げたい」という気持ちの最大のリスペクトは「自分が相手を思って選んだものを自分の手で相手に渡したい」
そもそもプレゼントを自分の手で渡さないというチョイスある?
でも、それは単なる私のひとりよがりな考え方で、確かに自分の選んだものを相手が気に入るという保証もないし、人によっては、ホントに自分の為を思って何か贈るなら「何が欲しい?」と聞いて欲しいと思う人もいるでしょう。人によっての「プレゼント」の物差しは色々。
だから「最低限、相手に取りに来させるってのはナシじゃね?」というのもつまらないこだわりなのかもしれません。
そうして、結局自分でその「差し上げたい月餅」というのをピックアップする羽目に。
指定されたその日は土曜日。
土曜日は旦那も仕事に行く予定はなかったのだけど・・・。
そして「いただいた月餅」↓↓
さすが有名レストランチェーン、箱は派手ながらもシックなデザインでカワイイ!側面のウサギちゃんまで立体で凝ってるな~↓↓
ホントに一番伝統的な「ハス餡に二つの塩漬け卵の黄身が入った」月餅。
日本だと、一人で和菓子一個食べる感覚ですが、香港のこの7cm四方ほどもある月餅はこうして4~8個に切り分けてチビチビと食べます↓↓
でもこの甘いハス餡にしょっぱい卵の甘じょっぱい組み合わせ、だいぶ慣れたけど・・・好きというほどでもありませんが、ま季節のものなので有難く↓↓
わざわざ月餅ピックアップだけで香港島まで出るのが勿体なくて、せっかくだから香港島にある老舗のステーキ屋さん「波士頓(ボストン)餐廳」でランチして帰ってきました。
ステーキ屋さんの先駆けみたいなお店で、香港島の貧民街育ちの旦那Kにとっては、当時ここで食事するのが一つのステータスだったようですが、日本人の私から見れば、かなり「なんちゃって」な昔懐かしい感じのステーキ。
でもここで食事をすると、Kが当時の話を懐かしそうにしてくれるので、「ステーキに行くか」と言われると「ステーキなら〇〇に行きたい」という言葉を呑み込んで、ステーキと共に聞かせてもらえる当時の香港の昔話を聞きに行くのです。
お陰さまで
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