ホントに翻訳ソフトの精度の問題か
今日もまた手ごわい文章に出会いました。
今日翻訳してて感じた事は、私的には普段からいつも感じている変わり映えのない事なのですが、ふと、これは翻訳のみならず、noteで記事を書いて、不特定多数の人に向けて文章を発信する場合にも、一考の価値があるんじゃないかと思ってシェアすることにしました。
以前の記事でも書きましたが、私は大部分が企業通訳、翻訳なのでエモい文章を訳す機会はほぼありません。
が、翻訳もギターと同じで毎日少しずつでも磨いていないと、あっという間に錆びついてしまいます。出来ない事はないにしても腦の瞬発力が下がるのです。作業効率と速度がガタ落ちします。
止まると死んでしまうマグロみたいなものです。
大企業の社長、役所のお偉いさん達も、文章を書くプロではありませんので、そのスピーチ原稿やプレゼン原稿などは、結構大変なものも多いです。
文章で「大変なもの」と聞くと、どんな問題を思い浮かべますか?
誤字脱字?支離滅裂?ポイントが不明瞭?
それは勿論大きな問題ですが、まだ翻訳前の原文段階での問題です。
日本人が日本語の文章を書いていながら、日本人が見ても「?」と「わかりづらさ」と感じる文章です。
これは翻訳ならではの問題ではありません。そもそもの表現力の問題です。では、翻訳上で問題になるのは何でしょう。
まあ、そこら辺の事は過去記事でも自分でも呆れるほどクドクドと書いてました↓↓
・・・こんなマニアックな記事、一体誰に向けて書いているのか・・・。時々見直して微妙な気分になります。
私が言わんとする日本語表現の微妙さを言葉で細かく解説するとややこしいので具体的な文章で表現します。
私が翻訳する文章には、こういう文章が多いです。*これは問題がわかり易いようにわざと極端に書いてますが(;^_^A
この文章の意味自体は多分、皆キャッチできるんです。
主語を略すことが多い日本語で起こりがちな主語のブレ、そして色んな事を並列しながらもエピソード間の時系列がマチマチという問題。
①この二年間は、わが社にとっても艱難辛苦の時でした。
最初の一文目は「わが社」と会社全体の事を言っているのに、その次の文章で、主語も明示しないまま主語が変わっています。
②改善に改善を重ね、耐えて耐えて耐え抜き、社内トップの結果を出しました。
「社内トップ」と言っているので、もしかしたら「改善に改善を重ね、耐えて耐えて耐え抜き」の時点では、まだ会社全体の事を言っているのかもしれませんが、「社内トップの結果を出しました」の時点では確実に「わが社」ではなくなっています。例えば「(わが社の中の)香港支店は」など、このスピーチをする人率いるグループが、社内トップになったと言う事です。
「改善に改善を重ね、耐えて耐えて耐え抜き」が会社全体の事なのか、この社内トップの成績をあげたグループの事なのか、謎のままとなります。
③起ち上げ時の苦労も、充実した楽しい時間です。
①②③の中で、一番古いエピソードのハズですが、①②は過去形、これだけ現在形となっています。何故なら起ち上げの苦労を楽しいと思っているのは「今」だから。これはこれで文法的には正しいのです。
でも、この主語もこのスピーカー個人の感想を差し挟んでいるのか、グループ全体の代表としてみんなの気持ちを総括しているのか、ここでも不明瞭です。
実は時系列的にも、主語的にも繋がっているようないないような①②③ですが、これは、スタッフに対するスピーチなので、話している本人と聞いてる人達はこれでも何となくわかるのです。
④できるかできないか、それは自分次第です。
締めくくりとして、持ってきた内容をどうこう言うつもりはありません。
⑤人ではありません。環境ではありません。自分でどう決めるかです。
ただ、翻訳ソフトの問題としては、この⑤の文章がネックになるでしょう。
日本人的には④と併せて聞けば、「人ではありません」「環境ではありません」も何を言わんとしてるかはわかりますが、翻訳ソフトでは
not a person. Not the environment. It's up to you how to decide.
私は日中の翻訳専門で、英語力がないので、これがこれでいいのかどうかは私にはわかりませんが・・・(;^_^A
ただ、もちろん、翻訳ソフト毎に、読み取る力差は確かにある事も併せて示します。
私が大好きなクリエイターにGokuさんと言う方がいらっしゃるのですが 私はこのGokuさんが紡ぎ出す文章がとても好きで、しかもGokuさんが興味関心を示す事は、私にとってもいつもツボなのですが、そのGokuさんが翻訳ソフトについても複数の記事に渡り言及されていたので、私もこの記事を渡りに船とばかりに書き上げました。
以下の記事では日⇔英の翻訳での解釈のブレについて、私のおかしな自作自演の文章じゃなくて、もっと具体的な例を挙げられています↓↓
そもそも私は一人でやっていますが、翻訳ソフトの精度が上がって来てから、翻訳が随分と楽になりました。
こちらの記事で紹介されている翻訳ソフトが正に私が併用しているソフトです↓↓↓
私が経験したチーム翻訳では、「下訳」と勝手に呼んでますが、まずは経験の浅い人に訳させて、最終ローカルチェック(ネイティブによる最終調整)に行くまで、少しずつ精度を挙げていく形が多いのですが、今どきの翻訳ソフトは、一人でやっても、この「下訳」としてこれ以上心強い味方はいない✨と思います。私が思いつく翻訳よりも細やかに表現されていて、うっとりする文章がたくさんあります。
そして(私的には)AI翻訳最大の利点は、何と言っても
固有名詞、専門用語に強い事!
日本語だけ見ても、日々色んな造語が生まれ、浸透していきますが、
年老いていく人間にとって、この「無限に生まれ続ける新しい言葉」をブラッシュアップし続けて行くのは至難の業です。
AI翻訳は、あらゆる分野に渡っての専門用語や、社会的にかなり浸透した略称などについては、人間のブラッシュアップより早くアップデートされている事が多く、ここから言い回しを学ぶ事も多々あります。
ただし、翻訳したい文章を翻訳ソフトに訳させて、それをそのまま採用せずに多少なりとも手直しする確率は約99%。ほぼ、全文手を入れます。
また翻訳会社に勤めている友人によれば、翻訳者を募集するのに、その人が翻訳した文章を翻訳ソフトに掛けて、その一致率が80%以上だと採用しない、という事でした。
・・・何それ?つまり翻訳ソフトは役に立つのか、立たないのか?
それは上述のGokuさんの具体例で見ての通り、かなりイイ線まで来ているのです。
そして、「そのまま採用できない」理由としては、私的にはやはり「原文側の表現が甘いから」もっと言えば「行間に込められた明文化されていない心情」それらは当然読み取ってもらえないから、という事だと思います。
ただ、特に日本人的には「秘するが華」「沈黙は金」「知らぬが仏(←この譬え・・さぁ?)」文法的にと言う問題もさることながら、100%を言語で表現しない事で表現される事も多い文化だから、という事の裏返しでもあるのかな、と思います。
人間の通訳者、翻訳者は、最終確認として、需要がなくなる事はきっとないでしょうが、近い将来、私も含めて90%は職を失う事になるんでしょうと思います。
実際、電子辞書とか翻訳ソフトとか持ってなくたって、今どきの携帯電話は(日本も??)カメラを向けると、そこに写る看板などの文字を勝手に翻訳して表示してくれるほど、言語の壁は低くなりつつあるのを日々実感しています。
最近、香港のニュースでAIが描いた絵が、アメリカのコンクールで賞を獲ったと言う事で、AIが芸術家たちの仕事を奪うのではないかと、こちらでも論争が巻き起こっていました。これからの時代、AIを味方につけた者勝ちなのかなと思います。
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