noteで歳時記 ~今年(2022年)は19年に1度、旧暦をはじめるのに最適な年!~
【はじめに】
この記事では、「noteで歳時記」シリーズの一貫として、今年2022年が、「旧暦」に親しみ始めるにはバッチリな年だということを説明していこうと思います。 俳句や季語に親しみ始めた皆さんとも共有していきましょう。
1.旧暦(太陽太陰暦)について
そもそも、旧暦(太陽太陰暦)が何かについては、例えばWikipediaだったりまとめサイトにも詳しい解説があるので、そちらを参照していただければと思うのですが、私もかつて「俳句歳時記」に関連して記事を書いたことがありました。それがこちらです。
(2020/08/13)俳句チャンネル ~歳時記の時間軸 編~
「俳句歳時記」などが特にそうですが、近世まで(太陽)太陰暦をベースにしてきた日本が、西洋化の一貫として近代に入って太陽暦を使うようになって、それまでの習慣の多くについて、季節感が崩れる結果となってしまい、様々な混乱を現代にもたらすこととなりました。
※『五月雨』が今の6月頃の「梅雨」のことを指してたり、本来の『七夕』は、今の梅雨真っ盛りの新暦7月ではなく、梅雨が明けた後の新暦8月頃を指してたりしたことなどは、多くの方に伝わりそうな内容かと思います。
2.理由は簡単、太陽と月で周期が違うから
「中秋の名月」が年によって結構時期にズレが生じることなどからも現代人に馴染みがある様に、『旧暦(太陽太陰暦)』の日付は、『太陽暦』を基準に考えると、かなりブレがあるように感じます。
その理由について、Wikipediaの文言を引用して、正確を期しますと、
長いので要約すると、
・太陽暦の1年=約365.25日
・太陰暦の1年=約354 日(11日あまりのズレ)
単純に2つの「歯車の歯の数(日数)」が互いに素だから、言ったり来たりを繰り返すのです。これはなんとなく体感として皆さんも理解していることと思います。
もしこれが、太陽暦と太陰暦の周期が同じだったり、なんかしらの共通項があれば、もっとシンプルに脳内変換しやすかったでしょうし、それこそ私が今回の記事を書くこともなかったと思いますww
3.実際、どれぐらい時期がズレるものなのか
1年に約11日ズレると言われてもピンと来ないと思うので、具体的な指標でイメージを沸かせてもらえればと思います。
今回取り上げるのは、本来旧暦8月15日の満月を表す「中秋の名月」です。
このように、年によって9月上旬から10月上旬まで(こうしてみると周期性はあるのですが)言ったり来たりで中々とっつきにくい印象がありますね。仮に、「旧暦8月=新暦9月」が成り立てば、話は早いのですが、必ずしもそうとも言い切れず、それが旧暦を遠ざけるキッカケになってしまった一因かとは思います。
その結果、上の記事にも書いた(Wikipediaから拝借した内容の記事ですが)とおり、本来の意図とは掛け離れて「日付」だけが残った年中行事が、結構あるのです。記事に書いた例で行くと、
茅の輪くぐりなどを行う「夏越の祓」:旧暦6月30日
本来は冬の真ん中に行う「七五三」 :旧暦11月15日 などです。
4.旧暦(太陽太陰暦)の正月が「旧正月」
そうした年中行事の一つに、馴染みのある方とない方がいらっしゃるでしょうが、「旧正月」というものがあります。ここまでの話を読んで来られた方は正しく理解できていると思います。
寧ろ英語名が正しく説明してると思います。Lunar(月の)New Yearです。
中国などでは「春節」と呼ばれ、国の祝日として盛大に祝われていることをニュースなどで目にしたことがあるのではないでしょうか?
※日本では祝う地域は少なくなり、「旧正月」という言葉だけが伝わる様になってしまっていますが、明治・大正期までは結構しっかりと日本でも祝われていたようです。
5.今年(2022年)は、実は珍しい年
そんな旧正月の日付を、日本語版Wikipediaから引用します。今年2022年が実は珍しい年であること、ご存知でしたか?
「中秋の名月」と同様、1月と2月を行ったり来たりしてます。答え合わせをしましょう。一体どこが珍しい年なのか。
新暦2月1日 = 旧暦1月1日 となるのが19年ぶりのこと
この事実を、ご存知ない方が大半だと思います。実は今年、偶然にも「新暦2月1日」が「旧暦1月1日」になっているのです。今月に関しては、◯日の部分が基本的に新暦と旧暦で一致しているのです!
それで何が凄くなるのかは一旦置いておいて、まずこの事実を受け入れて頂ければと思います。改めて抜き出してみると、
いわゆる「メトン周期」というやつでしょうか、19年置きに来ています。逆に言えば、19年に1度ぐらいしかこんな機会は無いのです。
そう聞くだけでも何か珍しいことだ、期間限定だと思えてきませんか?ww
6.しかもそれが「新暦2月」な事に意味がある
ただ、新暦と旧暦で朔が一致すること自体は極端に珍しいことではありません。月を選ばなければ、数年に1~2回はあるものです。
なのですが、ここで大事になってくるのが「新暦2月」である事なのです。ここまで約3,000文字引っ張ってきましたが、いよいよ本題に入ります。
7.Point①:本来の「新年」の季語を満喫できる
ポイントの1つ目にして最大なのが、「新年」の季語を満喫できるという点です。もう少し具体的に書かせてもらいましょう。
私の記事の中でも上位Top10に入る沢山のスキを頂いている記事に「初○○」編と題した〔新年〕の季語に関するものがあります。他にも、
この記事なんかは、三が日より後の新年の季語を時系列にざっくりまとめていまして、ご好評を頂きました。 本当に季語を調べたければ、ぜひ正式に販売されている『俳句歳時記』をお求め頂ければと思います。
では、Pointとしてあげた「『新年』の季語を満喫できる」とは一体どういうことなのでしょうか。
(1)そもそも新年の季語の殆どは旧暦基準
上の記事などでも簡単に触れている以下の季語なども、江戸時代以前からのものですから、本来の成り立ちを思えば、当然「旧暦」基準なのです。
睦月(旧暦1月のこと)
初東風(本来は旧暦での新年になって初めて吹く東風)
七草粥(本来は旧暦1月7日に食べるもの)
よくよく『俳句歳時記』をめくってみても、新暦1月を由来とする季語は、「成人の日(昭和以降)」や「初電車」、「初メール」、「初場所」などの一部を除き、近世からあるものはほぼ全て「旧暦」基準です。
すっかり「新暦」しか馴染みのない我々にとっては、歳時記に「1月」とか「正月」と説明されていると、自ずと新暦を考えてしまうのですが、本来は『旧暦1月』のことを由緒としていることを抑えておくことが大事です。
※これは「知識として」持っていれば十分な範疇なのですが、特に昔の句を鑑賞する時だったり、兼題として出されるものに投句する作品を考える時などに心得ておくと理解が深まると思いますし、知って損はないと思います。
(2)「二日」や「三日」などの季語が新暦とも一致する
理解するにあたってヒントになるという側面もあります。例えば、
2021年の1月3日にアップされた「夏井いつき俳句チャンネル」の動画にもありますが、「二日」や「三日」なども新年の季語となっています。「三が日」などと同じく、俳句で季語として「三日」といえば「正月3日」のことを指すのだと説明しています。
また、ここまでの私の記事を読めばお分かりの通り、本来、この「二日」や「三日」といった季語は、(現代では新暦1月に準えていますが)本来は、旧暦1月2日や3日のことを指していたのです。
こういう季語を詠もうとした時に好都合なことに、今年(2022年)2月は、太陽暦と太陰太陽暦で日付がほぼ一致するので、例年ならば一々調べなければならない「旧暦1月3日は、新暦でいうと今年は……」という思考を経る必要がなく、今年は「新暦2月3日が旧暦1月3日だ」と一対一対応できるのです。
(3)その気になれば、正月をもう一度楽しめる
そして、モノ好きな方には一部でも試してもらえればと思うのですが、俳句歳時記に載っている新年の季語を、『本来』だという大義名分のもと、もう一度楽しむことだって可能なのです。
流石に……今からおせち料理を作って初詣はやりすぎだとしても、例えば、初めてみた夢を「初夢」だと心の中で思ったり、冷凍庫に残ってた「お餅」を食べてみたり、「初旅」だと思ってみたり。そういう機会があれば、ぜひトライしてみて下さい。
2月の慌ただしい日常が少し“ハレ”の気分になるかも知れませんし、句作をされる方は、ひょんなことから2月に新年の句が出来るかも知れませんよ!
8.Point②:今年はほぼ1か月遅れが維持される
Point① では「旧暦1月」についてだけに絞ってきましたが、もう少し広い視野で見ることにしましょう。
2022年は新暦2月のみならず、新暦4・5月も「1日」が一致しています。夏以降は徐々にズレが生じてきますが、約1か月のズレは変わらずに2022年が進んでいくこととなります。
よく、一般的な書籍(俳句歳時記を含む)では、「如月」という季語のことを、『陰暦2月の異名で、ほぼ陽暦3月にあたる』などと説明しています。
少ない文字数で説明するには間違いではないのですが、『中秋の名月』などで見たことからも明らかなように、『新暦と旧暦の差が1か月』を維持するのも案外珍しく、10年に1~2度あるかないかって感じなのです。
そうした意味では、仲夏であり、ほぼ新暦6月の1か月間にあたる「皐月」という季語も、『本来の意味』を再確認するに絶好のカレンダー(日取り)となっているのではないかと思うのです。
※それこそ、「旧暦」に馴染みがなかったり、最近、俳句を親しむようになって、「旧暦の季語」への理解を深めたい方にとっては、2003年以来、実に19年ぶりの絶好の年だということを重ねて念押ししておきたいと思います。
次は19年後の2041年です。約20年間、俳句・季語への興味を持ち続けるのは大変でしょうし、我々もどうなっているか判りません。この機会をみすみす逃すことのないように!
【おわりに】
ではここで、最後に少し脱線しますが、私なりの「旧暦」の親しみ方をご紹介したく思います。こちらの記事をご覧ください。
これらは、「旧暦」を肌で体感するために、私が書いている記事です。内容は、平成・令和という「旧暦」に馴染みの薄い時代のできごとを、敢えて、旧暦に換算してみると何かしらの気付きがあるのではないかという物です。
旧暦1月(睦月)
・H30年1月2日(02/17) 羽生結弦が金メダル(連覇)、宇野昌磨が銀
・H10年1月11日(02/07) 長野オリンピック開幕
・H元年1月19日(02/24) 昭和天皇の「大喪の礼」
旧暦2月(如月)
・H23年2月7日(03/11) 東北地方太平洋沖地震(M9.0)発生
などこういった感じです。「東日本大震災」が起きたのが、太陽太陰暦では2月7日であり「仲春」に当たるのだということを初めて知ったと共に、あの日はたしかに『春浅い』冬の強い日で、停電の夜は寒かった(だろう)なということを思い出しました。
当初のこの記事の副題は、『旧暦ノススメ』でした。ぜひ皆さんには、この記事をキッカケに、今まで以上に『旧暦』を身近に感じていただければ幸いです。
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