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「スオミの話をしよう」:愛妻が誘拐されたことに端を発する悲喜こもごもコメディ。ちょっと描き方が古臭い。。

<あらすじ>
刑事・草野圭吾(西島秀俊)が著名な詩人・寒川しずお(坂東彌十郎)の豪邸を訪れる。寒川の新妻で、草野の元妻であるスオミ(長澤まさみ)が昨日から行方不明だというのだ。草野はすぐに正式な捜査を開始すべきだと主張するが、大事にしたくない寒川は聞き入れない。やがて、スオミの過去を知る十勝左衛門(松坂桃李)、魚山大吉(遠藤憲一)、宇賀神守(小林隆)が屋敷に次々と集まってくる。誰が一番スオミを愛していたか、スオミに愛されていたかと、スオミの安否そっちのけで熱く語り合う男たち。しかし、彼らの思い出の中のスオミは、見た目も性格も、まるで別人のようだった。はたして、スオミはどこに消えたのか、スオミとは何者なのか?

KINENOTEより

評価:★
(五段階評価:★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高、☆が最低)

「記憶にございません!」(2019年)以来5年ぶりの監督作となる三谷幸喜がメガホンをとった本作。近年、映画界では「老後の資金がありません!」(2022年)や「九十歳。何がめでたい」(2024年)で役者としてカメオ出演し、テレビではワイドショーのコメンテーターを務めることが多くなり、どちらかといえば、中高年齢層のご意見番的地位になっていることが多いなと思う三谷さんですが、やっぱり僕らの世代だと「古畑任三郎」(1994年~)であり、「王様のレストラン」(1994年~)なりの大ヒットテレビドラマコメディや、映画でも「ラヂオの時間」(1997年)、「みんなのいえ」(2000年)などの舞台劇をもとにした王道コメディの大家という印象が強くて、毎年三谷作品を楽しみにしていたことを思うと、ちょっと近年は引退気味なのかな(大河ドラマの印象が強いからかもしれないです)と思ってしまうので、高齢になられてもいまだ元気だなというところを作品としても感じたいところではあります。

そんな三谷作品の久々の映画作品である本作は、三谷作品といえばの舞台劇のような形で展開していきます。ほぼほぼ事件が起きた寒川邸の中で演技が行われ、事件の被害者(?)であるスオミが現旦那を含め、過去旦那の中でのそれぞれの回想として登場していき、よく観ていくと、その回想の中にはスオミだけではなく、スオミの行方不明にかかわってくるキーマンが場面場面で登場してきていて、それをつなぎ合わせるとラストのネタばらしの意図が分かっていくというミステリアスな、よく考えられた話の構成になっています。

ただ、正直いうと、これお話として面白いのかな、、というのが第一感想(笑)。無論、三谷作品の過去作品でいうと冒頭に上げた「古畑任三郎」はまさにこの形で、ほぼ事件現場の語りで紐解かれていき、主演どころのキャラクターと被疑者となる犯人との謎掛け合いみたいな形で進む構成自体は変わらないのですが、ただ「古畑任三郎」はずっと同じ愛されキャラが出てくるテレビシリーズだから成立しているようなところもあるのに対し、本作はあくまで映画という観客も初めて遭遇するキャラたちであり、物語であったりする。だからこそ、三谷映画の真骨頂は(これも冒頭にあげた)「ラヂオの時間」のような群像コメディ劇にあるように思うのですが、本作は物語こそ複数構成にはなるものの、基本はスオミ中心の単品のお話であり、長澤まさみさんには申し訳ないですが、そのスオミ自体も魅力的なヒロインになっているとは言い難い。。ミステリーとしては最後にストンとくる落としどころは用意しているものの、ガヤガヤしているキャラ達がうざいだけの作品になっているような気がします。。

<鑑賞劇場>TOHOシネマズくずはモールにて


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