「フォロウイング 25周年/HDレストア版」:ノーランのデビュー作が25周年記念での公開。観客の印象操作をしてくる手法は最初から出来ている。。
評価:★★★
(五段階評価:★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高、☆が最低)
つい先日感想文を書いた「オッペンハイマー」(2023年)のクリストファー・ノーラン監督の出世作となった「メメント」(2000年)とデビュー作となった本作が(多分、「オッペンハイマー」の公開記念も兼ね)レストア版として公開されました。本作の製作は1998年となっていますが、確か日本での公開は「メメント」のほうが先だったように思います。その後、ミニシアターを中心に大ヒットした「メメント」の関連作として、本作が日本では後よりで公開されたように思います。「メメント」が記憶喪失をもとに話を構築して観客をだますトリッキー作品でしたが、騙すという意味では本作も同じような(緩いまでも)構成となっています。こうしたサスペンスの様々な謎を映像トリックと、時間軸をゆがめせて描くところが、本当に時空間を歪ませた(笑)「インターステラー」(2014年)や、逆回しの「TENET/テネット」(2020年)というところに繋がってくるのです。
本作のテーマは尾行、、今でこそ、ストーカーという言葉が世間認知されてきましたが、当時観たときは尾行といえば、刑事ドラマで出てくるくらいなもので、一般人が人を尾行することにハマっていくということがちょっとフィクション的な要素でしか捉えられていませんでした(それが、今ではストーカー殺人とか普通にある世の中になっているのが怖いですが)。顔見知りを理由を持って尾行することと違って、見ず知らずの人の後をつけ、その人の生活を覗き見る興奮というのは、今だと他人のSNSや裏アカ、鍵アカになっているアカウントを解析して、その人となりを知っていくこととどこか似ているかもしれません。その意味では、今だとSNSでフィッシングをして、その対象をだましていくという現代版な「フォロウイング」というのがもしかしたらできるかもしれません。
本作の構成としては、尾行の興奮にドツボにハマっていく主人公の青年ビルを、そういう騙し方はセコいでしょうという形で犯人(ここではあえてハメていく側をこう表現します)がビルの意識をコントロールしていく。ただ、お話の見せ方としては、本作に続く形になる「メメント」のようなトリッキーなところはなく、むしろヒッチコック映画のような古典的な騙しの手法でビルのミスリードとともに、観客もミスリードされていくという形になっていきます。あえてモノクロにしているのも、そうした古典映画へのオマージュも含まれているのかなと思います。1時間ちょっとの短い作品ですが、ノーランの腕の確かさはしっかり感じる良作だと思います。
<鑑賞劇場>アップリング京都にて