
「お母さんが一緒」:母娘むつまじい温泉旅行が地獄旅に笑。母と娘という女同士はよく分からん。。
<あらすじ>
親孝行のつもりで母親を温泉旅行に連れてきた三姉妹。だがそこには、3人の複雑な思いが横たわっていた。長女の弥生(江口のりこ)は美人姉妹といわれる妹たちにコンプレックスを抱き、次女・愛美(内田慈)は優等生の長女と比べられてきたせいで自分の能力を発揮できなかったと心の底で恨んでいる。そんな二人を冷めた目で観察する三女の清美(古川琴音)。三姉妹に共通するのは、“母親のような人生を送りたくない”ということ。温泉宿の一室で爆発する三姉妹の母親への愚痴は徐々にエスカレートし、やがてお互いを罵倒する修羅場に発展。さらにそこへ、清美がサプライズで待機させていた彼氏のタカヒロ(青山フォール勝ち)が現れ、事態は思わぬ方向へ……。
評価:★★★☆
(五段階評価:★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高、☆が最低)
親孝行のためと母親を連れて温泉旅を計画した三姉妹に起こる、旅先の旅館で起きた悲喜こもごもの一夜を舞台劇のような閉空間ドラマとして描く一作。監督は「ハッシュ!」(2001年)、「ぐるりのこと。」(2003年)の橋口亮輔。橋口監督を一躍有名にした「ハッシュ!」では同性カップルを、「ぐるりのこと。」ではある中年夫婦と、家族を中心としたその人物たちと取り巻く人たちとの微妙な関係を描くのが上手いなと思っていたので、本作は母親と娘三姉妹という、これも1つ閉じた家族の中と、末娘・清美のボーイフレンドなど巻き込まれ取り巻き陣(笑)との関係を描いていくので、ある種、原点回帰したような作品になっているなと感じました。
それにしても女流家族というか、女同士の関係性というのは未だによく分からない。僕自身、小さい頃から男友達というよりも、女友達のほうが周りに多かったということもあり、女の子の優しさというか、誰しもと(まぁ、個人に差はあるとはいうものの)関係性を作ってしまうのは凄いとは思いつつ、言葉先行でよく喋っていて仲良さそうだなーと思っていたら実はそうではなかったり、逆に無視したり、汚い言葉も(ごめんなさい、男女比較はするつもりはないですが、、)吐いていても、数週間経つとケロッとお互い違う関わりを持っていたりと傍目から観ていても女性観というのは未だに分からなかったりします。。男同士だと分かりやすく、仲が良くなかったら喋らない関わらないだから、女の子グループよりは、より固定化された友達の中で喋っていたりが多くて(だからこそ、違う価値観の人と喋ると、突然仲良くなったりもするのですが笑)、見た目と関係性が実に分かりやすい。でも、グループ間の断絶というのは、ちょっと流動的な女の子グループより深いところがあって、喋ればお互いの立場は分かりやすくなるんだけど、勇気を持って踏み込めないのが男同士の世界だなと思ったりします。
だからこそ、例えば、男(旦那さん)が一人で、あとは母親も含めて、女性ばかりという女流家系は大変そうだなーというのはあって、それを体現したのがまさに本作だなと思ったりするのです。とにかく姉妹の中の関係であったり、偏屈な母親とのいざこざも見た目大胆に傷つけあっていくから、(当人としては悲惨だけど)見ている分には面白い笑。それに本作はキーマン(キーウーマン?)である母親が一切登場しないというのもいい演出になっているなと思います。弱い男連中しかいないというのは、若干、三谷幸喜ドラマを彷彿とさせてしまうところもあるんですが、回りに回って、毒々しい傷のつけ合いが安易な着地点に収まっていないのも良いなと思います。昔の某教育テレビのタイトルみたいな題名ですが、内容はいい意味で不釣り合いなものになっているのも狙いじゃないかと思ったりします(笑)。
<鑑賞劇場>MOVIX京都にて