
「ぼくのお日さま」:主演の池松くんをはじめ、自然な演技が魅力的だが。。
<あらすじ>
吃音をもつホッケー少年タクヤ(越山敬達)は、ある日、ドビュッシーの『月の光』に合わせてフィギュアスケートを練習する少女さくら(中西希亜良)の姿に心を奪われてしまう。そんな折、元フィギュアスケート選手でさくらのコーチを担当する荒川(池松壮亮)は、ホッケー靴のままフィギュアのステップを真似て何度も転ぶタクヤを見つける。タクヤの恋の応援をしたくなった荒川は、スケート靴をタクヤに貸し、彼の練習につきあうことに。やがて荒川の提案で、タクヤとさくらはペアでアイスダンスの練習を始めることになり……。
評価:★★★
(五段階評価:★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高、☆が最低)
「僕はイエス様が嫌い」(2019年)の奥山大史監督による長編第2作にして、商業映画デビュー作品。舞台となっているのは、おそらく北海道だと思うのですが、結構独特の文化があるなーと思ってしまうのは学校や地域のスポーツ活動にウインタースポーツが取り入れられていること。これは東北なども含め、雪深い地域では普通なのかもしれないですが、最近は暖冬となって降雪も少なくなっている岐阜や京都(関西は、日本海側を除いて最近ほとんど積もらないし)で過ごしてきた身としては、せいぜい冬季期間にスキー合宿があったなと思う程度。男の子はアイスホッケー、女の子はフィギュアスケートをほとんどの児童がやっているという世界もやっぱ一種独特感を少し感じます。
今はどうか分からないですが、中学・高校になると学校の体育の時間は身体の違いが大きくなって、男女別になるのがほとんどかと思います。そこで男子は武道をやるのですが、中学では剣道を普通に体育でやっていたのですが、高校では柔道で、そもそも脊椎に障害がある僕は受け身が取れないと危険ということもあって、体育の先生の配慮で高校途中から女子に交じって(といっても、工業高専だったので女子自体が少ないからレク感覚で結構楽でした笑)ダンスとか、ソフトテニスとか、男子の体育ではなかったメニューをやっていました(武道の期間だけって話だったけど、結局最後まで女子メニューで参加してたな笑)。今は男女とも、小学校ではダンスとか、エアロビとかも普通にやれる(逆に、女子も体育で武道とか選択できるのかもですが)と思うのですが、僕の世代までは武道は男子で、ダンスは女子でしょうという単純に身体の違いだけでなく、性差(ジェンダー)による偏見というのが多少なりともあったかなと思います。
この話をしたのも、現代を軸に描いている本作でも、やっぱり男子はアイスホッケー、女子はフィギュア(もしくはアイスダンス)でしょうという若干の偏見みたいなものが本作の底辺に少し感じたからです。無論、今ではそれでからかうというのは皆無で、男子がフィギュアをやっても(逆もしかりで)別に他の子が後ろ指指すこともなく、かつ家族もやりたいことをやればいいというのがちょっと現代的だなと思います。しかし、この現代的な設定の中でも、物語の中盤で突如こうしたジェンダーの問題が急にむくっと起き上がってきて、お話の後半に大きなインパクトを与えることになる。僕はこの辺りの設定に正直少し疑問符だったんですが、これも恋愛経験少ない小中くらいの男女の仲を考えると普通なのかなと思ったり、、鑑賞後しばらくたって少しストンと気持ちが落ち着くところもありました。予告編を観ると、すごくホンワカした作品かなと思わせておいて、意外に棘ある作品に少しびっくりすると思います。
とはいうものの、演じている役者陣は池松くんの自然な教師感も含めてすごくいい。僕は主人公・タクヤの親友・コウセイを演じた潤くんのいいキャラ付けにすごく惹かれました。彼はきっと大物俳優になると思います(笑)。
<鑑賞劇場>TOHOシネマズくずはモールにて