見出し画像

「ラストマイル」:2大人気ドラマの狭間に位置付けた娯楽エンタメ作。犯罪の黒いところをすっ飛ばしたライトさが成功要因。

<あらすじ>
大規模なセールが行われる11月のブラックフライデーは、流通業界最大のイベントのひとつ。そのブラックフライデー前夜、世界的ショッピングサイトの関東センターから配送された段ボール箱が爆発、謎の連続爆破事件へと発展する。仕掛けられた爆弾の数も在処も明らかにならない中、関東センター長に就いたばかりの舟渡エレナ(満島ひかり)は、チームマネージャーの梨本孔(岡田将生)と共に、事態収拾にあたる。

KINENOTEより

評価:★★★☆
(五段階評価:★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高、☆が最低)

テレビの人気ドラマ「アンナチュラル」(不自然死を解明する法医学ドラマ)、「MIU404」(好対照な刑事二人のバディドラマ)を送り出した塚原あゆ子監督と、脚本家・野木亜希子がコンビを組んだ劇場作品。僕は最初、単純に2つのドラマのメンバーが総登場する東映ヒーローものばりな作品かと思いましたが、本作は映画オリジナルなドラマの中に2つのドラマのキャラクターが登場して交差していくというシェアードユニバース(MCUみたいな笑)作品という位置づけになっているので、テレビドラマを知らない人でも単純に楽しめる作品になっています。満島ひかりも、岡田将生も、そうした映画オリジナルなドラマの主人公を演じています。

本作は基本的には予告編通りのサスペンス映画となっていますが、塚原監督の過去作品のような(それこそ交錯してくるTVドラマ作品のような)今風な形になっています。僕も「アンナチュラル」はたしかオンエアで見ていた覚えがあるのですが、昨今の(と書いちゃうとオッサンのようになっちゃうけど笑)サスペンス系のドラマは主軸となる犯罪劇より、犯罪のトリック部分であったり、それこそ出てくる主要キャストのほうのコミカルな演技や恋愛劇のほうに焦点が当たっていて、犯罪を犯す側のドロドロした黒い部分を良くも悪くも省略しているなと感じます。もちろん、過去の火曜サスペンス劇場とか、土曜サスペンスの西村京太郎のトレインミステリーとか(好きでよく見てました)、主人公の刑事のキャラクターも面白かったし、犯罪トリックのパズル的な要素もあったりしたのですが、今よりもうちょっと被害者と加害者間のドラマというところにも力点が置かれたように思います。それが今は主人公側に偏ることによって、良い面としては各主要キャラたちにより愛着を持って観ることができたりとか、VFXとかアクション部分に力がそそがれて迫力ある映像が撮れてたりするのですが、逆の面をいうとちょっとライトにしすぎているようなところもなくはないかなと思います。本作も最終的な犯人にたどりつくところまで行くのですが、どうしてそういう犯罪を犯してしまったのかが深堀りされておらず、僕としてはちょっとピンとこなかった。もちろん、不特定多数を狙うテロ行為的な犯罪は許されるべきではないですが、こうした悪質な威力妨害モノに見合う恨みつらみみたいなところが(描かれてはいるのですが)汲み取りにくかったのが残念なところです。

まぁ、それをド返しすれば、犯罪トリック自体は面白いし、運悪く巻き込まれてしまう人たちの群像劇のところも映画ならではというか、様々な人たちが絡む物流の世界を垣間見えたというところの面白さもあったかと思います。でも、シェアードユニバースと銘打つには、2つのテレビドラマの人たちを無理やり組み込んでいるように見えなくもなかったかなと思いました。単純に、物流倉庫の人たち内のドラマとしても十分に魅せるモノにはなっているので、テレビドラマ部分はあくまでおまけとして観たほうがよいのかもしれません。

<鑑賞劇場>MOVIX京都にて


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集