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「東京カウボーイ」:和牛の売り込むためにアメリカの片田舎に乗り込む商社マン。ストイックなコメディを狙っているのかな。。

<あらすじ>
東京の大手食品商社に勤めるサカイヒデキ(井浦新)は様々な食のブランドのM&Aを手がけており、上司である副社長のケイコと婚約している。会社が米国モンタナ州に所有する経営不振の牧場の収益化を担当することになり、役員たちは土地開発業者への売却を勧めるものの、ヒデキは希少価値の高い和牛に切り替えて再建することを目指し、和牛畜産業の専門家を伴いモンタナに向かった。しかしどこまでも空が続くことから“ビッグ・スカイ・カントリー”と呼ばれるモンタナは日本のオフィス街とは何もかもが異なっており、すぐにトラブルに見舞われる。ワダが怪我で入院してしまい、ヒデキは一人場違いなスーツ姿で牧場管理人のペグに和牛の事業計画をプレゼンするが、まともに取り合ってもらえない。。

KINENOTEより

評価:★★☆
(五段階評価:★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高、☆が最低)

「ゴールデンカムイ」(2024年)や近作の「ラストマイル」(2024年)などのメジャー作品でもいぶし銀の輝き(全然若手ですけど笑)を放つ井浦新主演の初アメリカ進出作品。予告編でも感じるかもしれないですが、製作はアメリカであるものの、どこか邦画っぽさを感じるのは監督が山田洋次監督の「男はつらいよ」の海外撮影(「寅次郎心の旅路」(1989年))を担当してきた、邦画マーケットにも慣れているマーク・エリオットが初監督作としているからかもしれません。あとは妻役にスクリーンでは久しぶりに見た藤谷文子や、名脇役・國村隼も怪しげなプロモータとしていい味を出しています。

でも、本作難しいなと思うのは、その立ち位置的な部分でしょうか。商社マンが和牛を売り込むために、アメリカの片田舎でも斜陽産業である畜産(カウボーイ)に携わる人たちに入り込んでマーケティングをしていくという、背広(サラリーマン)とカウボーイという部分がかみ合わないというナンセンスさをコメディにしたいのだろうけど、そこの部分はシニカルに進むものの、痛烈に、、というところまで突き進まずになっています。ハートフルコメディという捉え方をするのであれば、確かにいいお話にまとめているものの、イマイチ主人公たちの背景が見えてこないので共感はしにくいという感じになっています。

それでも登場人物たちのキャラクターは(典型的キャラが多いものの)愛くるしく、かつ面白いが貫かれているし、ラストもちょっとハッピーになる盛り上がりがあって、めでたしめでたしになっていく安心感は(監督の持ち味でもある寅さん風ドラマにも通じるものが)あります。ただ、カウボーイを主軸にした映画ではあるものの、例えば、ロバート・レッドフォード監督の「モンタナの風に抱かれて」(1998年)のような本格的なカウボーイ感もちょい希薄だった(もちろん、基本的なカウボーイ術は習っているものの)なとは思います。チョイつまみであると理解して、ホンワカな人情ドラマを楽しみたい人にはおススメかもしれません。

<鑑賞劇場>アップリンク京都にて


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