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「台北アフタースクール」:自由に生きることを指導した台湾版「いまを生きる」。ジェンダーレスは一番台湾が進んでいるのかも。

<あらすじ>
1994年。台北の予備校“成功補習班”に通うチャン・ジェンハン(ジャン・ファイユン)、チェン・シャン(チウ・イータイ)、ワン・シャンハーの3人は、イタズラ好きで、“成功三剣士”と呼ばれた問題児。卒業後、それぞれの人生を送っていたが、入院中の恩師シャオジー先生のお見舞いを機に、久しぶりの再会を果たす。先生の言葉をきっかけに、かつて通った予備校に足を踏み入れた彼らは、そこに残された青春の跡に触れ、懐かしい日々を次々と脳裏に蘇らせていく……。高校3年、大学入試まで残り約1か月の時期。成功補習班に新たな代理講師が着任してくる。それが、彼らの人生を大きく変えるシャオジー先生との出会いだった。枠にとらわれない授業で、生徒たちに寄り添い、心を掴むシャオジー先生。自分らしく生きる先生と過ごすうちに、3人はそれぞれが自分自身と向き合い、本当の自分を見つめ直していく……。

KINENOTEより

評価:★★★★
(五段階評価:★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高、☆が最低)

台湾で俳優としても活躍しているラン・ジェンロンが、自身の恩師との想い出を中心に描いていく青春劇。ちょうど監督は僕と同じ世代の人でもあり、1994年は僕も高校生だったので、僕ら世代(40代半ば)の人が見るとドンピシャかもしれません(台湾と日本という違いはあるものの、中国本土とかに比べると日本とそれほど世代文化は変わりないように思えるので)。悪友とつるんでいた楽しい青春期に、少し大人な視点に押し上げてくれた恩師となる教師との出会い。でも、実はその恩師にも隠された物語があり、苦しみの中でもがいていたという真実を過去と、高校生だった若者たちが大人になった現代とのドラマを並行させることで描き上げていきます。

ネタバレは避けますが、本作で1つキーワードになるのがLGBTとか、ジェンダーレスというところでしょう。僕の子どもの頃とか、青春時代と思い返しても、LGBTというキーワードは全くなく、テレビはそれっぽいお姉キャラタレントが出始める頃(先日亡くなられたピーコさんや、ピーターさんとか性を意識させない方は除く、、になっちゃいますが汗)で、LGBTに関する知識や意識も希薄だったかと思います。でも、本作を観ていると、当時の台湾では差別観は若干残るものの、それこそ意識は現代に近く、性を意識するというよりは自由を謳歌するということが主流になりつつある時代になっていたことがよく分かります。今の日本も、アジア圏まで広げてみてみても、まだLGBTの方にとっては生きにくい世界ではあると思います。世界的に低成長社会になってくると、世情的には保守主義傾向になってきて、同質にならないマイノリティには生きにくい社会に一般的にはなってくるのですが、だからこそ誰しもが前に出てくることを認めるような優しい社会になって欲しいなと観ていて思います。

観ていてなんかよく似た作品あったなーと思ったのですが、場面・舞台は違うものの、内容的にはロビン・ウィリアムズの「いまを生きる」(1989年)そのものかなと思います。本作は予備校が舞台になっているので教師という役割はちょっと違うかなと思いますが、それでも教師という職に付く人は、ただ教科書に載っている知識を教えるだけではなく、子どもたちに親(家庭)や友達だけの世界では見ることができない世界(それはどこか連れていくことだけでなく)を魅せ、考えさせることも重要だなと思います。時代を超えたミュージカルになっていくラストも素敵。単純ですけど、毎日生きてて楽しいと思える人生が素敵だなと思える快作です!

<鑑賞劇場>京都シネマにて


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