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「あの人が消えた」:宅配配達員目線で見つめるマンションミステリー。これって、ネタ元が有名な、あの映画ですよね(笑)

<あらすじ>
“次々と人が消える”と噂されるいわくつきのマンション。配達員の青年・丸子(高橋文哉)は、毎日のようにそこに出入りする中で、怪しげな住人の“秘密”を偶然知ってしまう。会社の先輩で小説家志望の荒川(田中圭)にもその秘密を打ち明け、アドバイスを受けながら住人の正体を探ろうとするが、やがて二人は思いも寄らぬ大事件に巻き込まれることに……。

KINENOTEより

評価:★★★
(五段階評価:★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高、☆が最低)

あるマンションで起きた失踪事件。それをおせっかい半分、興味本位半分で追っていた冴えない宅配便配達員の青年・丸子が、マンションに秘められていた、ある”秘密”に触れたことから大事件に巻き込まれていく、、という一種変わったミステリー映画。物語の進行自体が丸子目線で、各マンションの部屋に住む住民ごとに章立て形式で進んでいくのですが、実はこの見せ方自体がミスリードを誘うようにできていて、それぞれの住民の行動が部屋という空間の間仕切りで見るよりは、時間軸で割ってみていくと、また違った景色が見えてくるという面白い構成になっています。そして大きなドラマ構成としては前半は丸子の物語になっているのが、後半はある別の人物目線に切り替わっていく、、部屋という空間、そしてバラバラにされた時間軸、そして物語の語り部(主要キャラから見る目線)の複数の要素がバラバラになっていることが、まるでパズルを組み合わせるように各エピソードをつなぎ合わせていくような見方ができるようになっています。

この映画、当初の特報予告編ではマンションで何かが起こっているという見せ方しかしていなく、ミステリーなのか、ヒューマンドラマなのかも分からない作り方になっていたのも成功要因だと思います。正直、上記のようにバラバラになっているのは上手い構成だとは思いながらも、1つ1つのドラマはちょっと安っぽい。これが先日観た「スオミの話をしよう」(2024年)の三谷幸喜監督ならば、豪華キャストを散りばめて、各住民を濃いキャラにすることでより濃厚なコメディドラマが展開したように思います。そういった物量がかけられない本作(いや、出ているキャスト陣は実績ある面々ですが)は、ドラマの構成に力を入れていることは分かるのですが、ちょっと浮世離れした設定も加えているので、ちょっとコメディっぽくなり切らず尻ギレトンボになっている面もなくはないです。

ただ、本作で成功しているのは、バラバラな物語でも丸子以外の他者視点になる後半部分、最後のネタは有名な”あの映画”の引用になっているのですが、ここも単純にオマージュするだけでなく、日本っぽい設定で最後の最後までミステリーを押し込んでくるところが、逆に好印象になっているのです。よく分からないというか、前知識なしで観たほうが、この作品の面白さを感じることができるでしょう。節々を見ると残念感はなくはないですが、話をバラバラにし、いろいろつなぎ合わせながら最後の最後にまとまり感を魅せるところは結構力のある作品だと思わされます。

<鑑賞劇場>Tジョイ京都にて


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