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「アステロイド・シティ」:ウェス・アンダーソンらしい箱庭映画だが、、ちょっと話が迷走しすぎて笑えない。。

<あらすじ>
1955年。アメリカ南西部に位置する砂漠の街アステロイド・シティ。隕石が落下してできた巨大なクレーターが最大の観光名所であるこの街に、科学賞の栄誉に輝いた5人の天才的な子どもたちとその家族が招待される。子どもたちに母親が亡くなったことを伝えられない父親、マリリン・モンローを彷彿とさせるグラマラスな映画スターのシングルマザー……。それぞれが複雑な想いを抱える中、授賞式が幕を開けるが、祭典の真最中にまさかの宇宙人到来!? 予想もしなかったこの大事件により、人々は大混乱。街は封鎖され、軍は宇宙人出現の事実を隠蔽しようとし、子どもたちは外部に情報を伝えようと企てるが……

KINENOTEより

評価:★
(五段階評価:★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高、☆が最低)

「ダージリン急行」、「グランド・ブタペスト・ホテル」のウェス・アンダーソンが手掛けるヒューマンコメディ。ウェス・アンダーソンは若き頃は、リアルドラマに絡めたナンセンス・コメディ(例えば、「天才マックスの世界」(1998年)とか)を手掛けてましたが、近作は独特の箱庭型舞台セット(これは僕が勝手につけているだけなので、ご注意を笑)の中で、複数の濃いキャラクターをかき混ぜながらドラマを作っていくスタイルが確立されていて、「グランド・ブタペスト・ホテル」(2013年)で1つ頂点に達したと思い、前作「フレンチ・ディスパッチ」(2021年)でも十分に彼の持ち味が生きたドラマになっていたと思っています。ただ、本作はいつも通りの箱庭型だし、いつも通りの架空の物語で、いつも通りな何セスコメディになっているんだけど、なんか面白くないんですよね。観ている最中も、時計が気になるくらい少し退屈な作品でした。。

このつまらなかった原因を考えると、直前の「フレンチ・ディスパッチ」(2021年)と比較するとよく分かると思います。どちらもアンダーソン印としてはお馴染みの色が出ているのですが、「フレンチ~」は濃い雑誌編集者たちの紹介ドラマが繰り広げられたのちに、そんな一癖も二癖もある編集者たちをまとめ上げていた編集長の急死や、雑誌最終号に向けて、そうした様々なキャラクターが亡き編集長の想いを掲げながら、自らの記事にどう最終章に収束させていくかが大きな1つのドラマになっていました。対して本作は、様々な癖の強いキャラクターは登場するものの、ある1つの出来事によって、アステロイド・シティに閉じ込められるものの、そこで連帯感を発揮するわけでもなく、ダラダラと謎な交流劇があり、事件が解決されるとまた、それぞれの独自の道に戻っていく。アンダーソンらしい群像コメディながら、1つの決着点みたいなものがなく進んでいくので、ナンセンスしか客には感じられない。アンダーソンらしいキャラ付けや可愛い美術セットも、そうした収束しないドラマには光らないということだったと思います。

今回は上滑りしかなかったアンダーソンですが、彼の頭の中に展開される世界感はすごく好きなので、次作に期待!!というところでしょうか。

<鑑賞劇場>TOHOシネマズくずはモールにて


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