見出し画像

「デューン/砂の惑星 4Kリマスター版」:2024年初頭の新作公開に合わせて準備された1984年旧作リマスター版。コンパクトに物語を堪能できる秀作。

<あらすじ>
人類が恒星間帝国を築きあげた遥か未来。人類文明は大王皇帝、恒星間輸送を独占する宇宙協会、惑星領土をもつ大公家連合の三勢力に分裂していた。皇帝シャッダム4世(ホセ・フェラー)は、従弟にあたる公爵レト・アトレイデス(ユルゲン・プロホノフ)に砂丘(デューン)として知られる砂漠の惑星アラキスを新たな土地として与えた。アラキスは、不老不死の薬物メランジの唯一の産出星であり、莫大な富をもたらす惑星であった。しかし皇帝は、アトレイデス家の仇敵ハルコネン家と結びつき、大公家のあいだで人気のあるレトを、なんとか失脚させようと企んでいた。アラキスに着いたアトレイデス公爵家は、医師ユエ(ディーン・ストックウェル)の裏切りとハルコネン家が皇帝から借りた怖るべきサルダウカー軍団による襲撃に合う。ハルコネン男爵(ケネス・マクミラン)に捕えられた公爵は自害し、息子ポール(カイル・マクラクラン)と公爵の妾妃でポールの母、ジェシカ(フランセスカ・アニス)は、かろうじて砂漠へと逃げのびた。2人は惑星アラキスの原住民であるフレーメンの集団に紛れ込むのだが。。

KINENOTEより

評価:★★★☆
(五段階評価:★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高、☆が最低)

2020年に「メッセージ」(2017年)のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督によって映画化された、SF小説の金字塔「DUNE デューン砂の惑星」(2020年)。今年の初頭に日本でも続編「デューン 砂の惑星PART2」(2023年)が公開され、SF映画としては大作でしたが、日本での興行は正直イマイチだったかなと思います。ドゥニ版の砂の惑星は、もうすでに続編の「PART3」の製作が進められていますが、原作のほうはまだ続いていて、どこまで映画化されるか(原作者フランク・ハーバートは6作品書いていますが)も注目の的になっています。もう1つ、日本でヒットしなかった理由としては昨今話題のタイパ(タイムパフォーマンス)問題があると思っていて、ハーバートの1作目小説「デューン 砂の惑星」(1965年)を「PART1」、「PART2」と分けたドゥニ版「砂の惑星」は前後合わせて約5時間30分ほどあるというのが1つのネックなのかなと思っちゃたりしています。ところが、そんな人におススメなのが(笑)本作「デューン/砂の惑星」(1984年)。実は「砂の惑星」は何度も映画の計画が立てられており、1984年にも1度映画化されているのです。しかも、監督は「エレファント・マン」(1980年)でアカデミー賞ノミネートもされた、映像美学の追及者デヴィッド・リンチなのです。

今回、本作が4Kリマスターで公開されたのも、ドゥニ版が公開からだと思いますが、それと比較してみるのも面白いところ。さすがに1984年の映画なので、今のVFX満載なドゥニ版と(映像として)比較するのは酷ではありますが、逆に言うと、そのすごい映像のために(それだけではないと思いますが笑)長尺になったというのに苦慮された方は、本作を観るとすごくシンプルに物語を把握できる(このリンチ版は前後編なく1作のみで、132分しかない笑)と思います。このコンパクトになった分、犠牲となっているのがナレーションのみで物語背景や様々なキャラの設定も、ざっくりと説明しちゃうところ。ネタバレになるので、他の作品で例えちゃうと、「スター・ウォーズ」ならフォースとは、、とか、暗黒面とは、、というのをひたすらボイスオーバーで語られるのです。せっかく映画なのだから、そのシーンも映像として見せろよと思う方もいるかもですが、でもこれも歌舞伎とかの解説音声と同じで、すべてこういうものなのねという前知識を違うメディアで入力しといてくれるので、より描かれるドラマにほうにフォーカスしやすいという面もあるのです。こうした比較鑑賞をしていくと、映画の語り口っていろんな方法があるなという勉強になったりしますね。

と、このリンチ版の「砂の惑星」を見て分かるのは、やはり本作は描かれるのはSF舞台ではあるけど、お話自体はすごく中世の古典劇のような大河ドラマであるということが如実に分かります。大きな2家の対立構造は、日本で言えば源氏と平家の対立みたいなものだし、その背後にうごめく皇帝(天皇)がいたり、宇宙連合の協力関係は商人や寺社などの連盟みたいなものだし、フレーメンは周辺を暗躍する部族(忍者や海賊とかか)がいたりだとか、この世のどの中世社会にもあったろう様々な切り口での戦争ドラマが併行して描かれていくのです。こういう大河ロマン的な世界観を好きな人はいいけど、そうでない人(単純に、バトル物が好きとか)にとっては物語構成が複雑なのが面白さを、半減させてしまうところかなとも思ったりします。それを分かりやすい会話劇というよりは、映像で魅せるリンチが手がけても、すごく説明過多な作品になってしまっちゃうのも、逆に面白かったりするのですけどね。。

<鑑賞劇場>アップリンク京都にて


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集