【読書体験】癖は強いが面白い。|死なばもろとも(著:ガーシー)
私は芸能界のゴシップにあまり興味が無いので、東谷義和さん、いわゆる「ガーシー」さんが配信した動画を見たことがない。正直言って、ほとんど何も知らないと言っていい。
しかし、アテンド、アテンダーという言葉を聞くと、少しドキッとする。
昔、インフラエンジニアとしてデータセンターに誰か伴って入館することを「アテンドする」と呼称していたからだ。私の人生で、アテンドという言葉を他のシーンで使ったことは無い。
そもそも英単語の「attend」は以下のような意味だ。
本来的に、「女性を斡旋する」ような意味を持たない。アテンダーという言葉は造語、隠語の類だと思う。
ニュースで語られる程度に、東谷さんが「アテンダー」として有名であったという話は知っている。ジャニーズ事務所の性加害問題の暴露が、そのチャンネルで行われたということも知っている。
そして、今度は、東谷さんがドバイから帰国し、逮捕されたことで話題になっている。そんな中、彼の著書である「死なばもろとも」がKindle Unlimitedの対象になったということを知り、読んでみることにした。
内容は芸能人についてのゴシップと、東谷さん自身の人生経験から来るエッセイで半々というところだった。
まさかライターに依頼せず自分で書いたのか、独特の関西弁による話口調で書かれたこの本は非常に読みづらい。特に書き出しの辺りは、不自然な日本語に集中力をかき乱された。
さらには女性を斡旋してきたという立場上なのか、男性読者の羨望を集めたいのか、「~人と経験を持った」などという、全体的に下品な話には閉口した。
しかし面白かった。
内容があまりにも非日常的すぎて先が気になり、どんどん読める。2時間ほどで読み切ってしまった。
通読の結果、著者自身に対して、「まじめで人間が好きなんだな」という印象を持った。
借金で首が回らなくなっても、なんとかお金を返そうと頑張る姿、付き合いのある芸能人への献身、恩や義理人情を大事にする価値観、視聴者からのDMにすべて回答するといった姿から、他人に対する感情移入が人一倍強いことがうかがえる。
また、逮捕を恐れて、わずかなお金を持ってドバイに逃げ出すくだりから、後先を考えない物凄い行動力だと感心した。若いころのエピソードにしても、行動力の塊という感じで、考えるより先に行動という生き方が染みついていることが分かる。
こういった生き方や価値観から、最終的に暴露チャンネルの開設に至ったことも理解できる。彼にとっては他に選択肢が無かったんだろう。
だが実際傍にいるとなると、かなり濃い人物で苦労しそうだ。彼なりに人間に対する愛情を持っていることは素晴らしいと思うが、個人的には、そもそも、そこまで義理人情を前面に押し出した価値観が相いれない。義理人情より人類愛である。
また、ギャンブル依存症の恐ろしさも感じた。
東谷さんはお父様をギャンブルで亡くし、自分もまたギャンブルで身を滅ぼそうとしている。
そもそも、「BTSに会わせる」と言ってお金を集め、集めたお金をギャンブルで溶かしてしまったというのが、今回の逮捕までつながる一連の事件の発端だ。
まずいと分かっていても、止められない。ドーパミンに支配され、お金が無くなるまで、いや無くなってからが楽しいんだという境地には、恐怖と同情を感じた。
ギャンブルには手を出さないのが一番だと改めて思う次第である。
なお、堀江貴文さんと立花孝志さんが東谷さんの帰国について意見を交換するYouTube動画を見た。
それによると、東谷さんはまた選挙に立候補するらしい。
立花さんかぁ。
立花さんも、冗談みたいな選挙ハックをやっていて批判の多い人だが、個人的には動向の面白い人だと思う。
まあ、もちろん、東谷さんが日本の法の元、罪を犯したとして起訴されるならば、罪を償うべきだとは思う。
ただし、著書を見る限り、なんというか憎み切れない人物である。行き過ぎた反社会的な行為や、他人を傷つける言動が無ければ、東谷さんのような方がいても許される社会の方が、多様性の観点から望ましいのではないかと感じた。
また、彼が著書の中で語っていた「女性の首相」は様々な課題を抱えつつ、私も推すところではある。今後も動向を注目していきたい。
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