
「させたいこと」よりも「したいこと」を
よこはま発達サポートルームの小林です。
今回は、『持ち帰りたい』ボックス・『いりません』ボックスについて、ご紹介します。よこはま発達サポートルームでは、課題のひとつとして、製作活動を行うことがしばしばあります。
ねらいは、お子さんによって異なります。主なものとしては、写真や手順書を見る練習、ハサミやのりなど文房具の使い方を学ぶ、手先を使う、などが挙げられます。
そして、製作活動の利点は、完成すると「上手にできた」「ひとりでできた」という達成感や満足感につながりやすいところです。
制作中の一場面で
ある日のこと、お子さんが折り紙の作品を完成させて、嬉しそうにしばらく眺めていました。
普段であればこの後、机の横の『フィニッシュボックス(終えた課題を入れる箱)』に作品を入れ、次の課題を棚から出して取り組み始めるのですが、この日は違いました。フィニッシュボックスに、なかなか入れようとしなかったのです。
スタッフが次の課題を棚から出してお子さんに見せ、作品をフィニッシュボックスに入れるように促すと、お子さんは大泣きしてしまいました。(このお子さんは、自分の気持ちを言葉で言い表すのはまだ難しい段階です。)
どうやら作品を手放したくなかったようだ、と感じたスタッフは、お家のイラストを貼ったボックスを用意し、作品を入れて『持ち帰れる』ことを伝え、実際に持ち帰ってもらいました。(このお子さんは、話し言葉よりもイラストの方が、意図を理解することが得意です。)

以降のセッションでは、製作活動の後に『持ち帰りたい』ボックス・『いりません』ボックスの2つを必ず提示するようにしています。このお子さんは、『持ち帰りたい』『いらない』の意思がはっきりしており、持ち帰りたいものだけを『持ち帰りたい』ボックスに入れ、他は『いらない』ボックスに入れる、という風に上手に活用できています。
ボックスを提示することで、『持ち帰る・持ち帰らない』を自分で決めて良いことが分かりやすくなり、意思表示もしやすくなったように思います。

まとめ
困ったことがあっても言葉ではなかなか伝えられない、伝えるタイミングをなかなかつかめない、伝えて良い状況なのかどうかも分からない…。そんなお子さんの気持ちに気づけるようにアンテナを張ることの大切さ、そして、ひとりひとりのお子さんが発信しやすい環境を作っていくことの大切さを、改めて感じた出来事でした。