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【Q&A】集団療育は、ただ集団にすればいいわけじゃない

(6,325文字/個人差はありますが、約11分~15分程で読めると思います)

こんばんは。よこはま発達相談室の佐々木です。今回は皆さんから頂いたご質問へのお返事をしていきたいと思っていますので、どうぞお付き合いください。


集団療育の難しさ

個別療育のイメージはつくのですが、集団療育のイメージがうまく持てていません。集団療育を行なっていく際の「ここは押さえて」というポイントはありますか?

集団の中にも個別の要素を

ご質問ありがとうございます。それぞれの方に合わせた個別対応はとても大切なのですが、常に完全な個別対応をしていくことは難しいですよね。
  
そして、こうした時に大切なことは「0 or 100」、つまり「個別 or 集団」と極端に考えないことです。個別の方が学びやすいこともあれば、集団だからこそ学べることもあります。それぞれの良さがあるので、それらのバランスをどうするかが大事なんだと思います。
  
児童発達支援や放課後等デイサービスなどの療育現場では10人前後で活動をしていくことが多いと思います。そうなると集団ですよね。
  
そうなると「難しい」と見聞きすることがあります。ご質問頂いた方の現場が実際にどのようになっているかわかりませんが、僕自身が大事にしている考え方としては、「個別で難しいことは、集団だとより難しい」ということです。もちろん、集団だからこそできることもあるでしょう。たとえば、周りの動きを見て取り組むことができるなどもその一つです。そして、実際に他のお子さんと一緒であればできるという場面に出会うこともあります。ですから、集団そのものを否定するつもりは全くありません。
  
それでもやっぱり「個別で難しいことは、集団だとより難しい」と思います。
たとえば、個別のスケジュールがうまく使えていないのに、全体に出すスケジュールが使えるとは思えません。目の前の人にうまく自分の意思を伝えられないのに、集団の中で安心して自分の意思で伝えられるとは思えません。
   
ですから、集団を考える上でも、まず大事になってくるのは「個別化した環境調整」なのだと思います。10人のお子さんがいれば、それぞれにあった環境調整が必要です。それがあった上での集団です。

同じ活動に参加していても、あるお子さんは写真の手順書が良ければ、あるお子さんは目の前で見本を提示するのが良いかもしれません。そうした個々の支援ができていることがまずは必要です。つまり、その場でそれぞれにとってわかりやすい環境があり、学びがあるというセッティングが重要です。ですから、集団療育のポイントとなった時には、そもそも個々にあった環境調整がなされているのかという点になるかなと思います。
   
その上で、「どんな風にクラスやグループを運営していけばいいのでしょうか」と聞かれることもありますが、個と集団のバランスを考えていくと良いのでは?とお伝えすることが多いです。例えば、10人いたとすれば、5人は自立課題や1対1課題、遊びの時間などそれぞれ個別の時間を過ごし、他の5人は小グループで活動するなどです。もちろん、これは例えなので、利用しておられるお子さん、スタッフの数などにもよって変わりますが、「みんな一緒に」ではなく、その場を共有しつつも、それぞれが自立的に、自発的に行動していけるような時間をいかに作っていくかが大切ではないでしょうか。

その上で集団活動をする時にまず考えて欲しいのは「何を目的に集団活動をするのか」だと思います。時々思うことに「これは何の目的に活動を設定しているんだろう」ということです。例えば、よくある活動の一つに「お集まり」の時間があります。活動中にお子さんが席を立とうとして、スタッフの方に座るように促されている場面をよく見ます。
  
そうした際に、そこでどのくらい目的や意図を持って設定できているかということが大切です。座っていることが目的なのであれば、そうした対応はあり得るのかもしれません。でも、そもそもどうして座っていなければならないのか、一定時間座って過ごすことは本当に妥当な目的なのかなども考えなければなりません。
   
そして、集団を考える際に、僕自身が最も気を配ることはこれらとはまた別のことです。むしろ、こっちの方が大事です。

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