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「〇〇療法」、その根拠はあるのか?

(6,008文字/個人差はありますが、約10分~15分程で読めると思います)

こんにちは。よこはま発達グループの佐々木です。

今回は皆さんから頂いたご質問にお答えしていくQ&A回です。たまたまなのですが、「〇〇という療育はどうなんでしょうか?」と似たようなご質問を複数いただいたので、それらについて僕なりの考えをまとめていきます。

どうぞお付き合いください。


その前に、知っておいてほしい注意喚起

皆さんはrTMS療法というのをお聞きになったことがあるでしょうか。
一般社団法人日本児童青年精神医学会でも声明を出しているため、ご存じの方も多いかもしれませんが、それでも時々ご質問をいただくので改めて。
   
これは、反復経頭蓋磁気刺激(repetitive Transcranial Magnetic Stimulation: rTMS)療法というもので、一般社団法人日本児童青年精神医学会の声明の中では以下のように書かれています。


2017年9月に「薬物治療で十分な効果が認められない成人のうつ病患者」に対する治療法として承認されています。しかし、日本精神神経学会による反復経頭蓋磁気刺激装置適正使用指針(2023年9月改訂版)では、18歳未満の若年者にはrTMS療法を施行するべきではないことが明記されています。

2024.04.02 子どもに対する反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)療法に関する声明

何が問題視されているかというと、そもそも若い世代への使用は避けるものであり、発達障害の方々への有効性は確認されていないにも関わらず「有効」として実施がなされている場合があるということです。
   
詳しくは、声明文をお読みいただければと思いますが、その中でまとめとしては以下のように記載されています。

1)本邦ではrTMS療法の対象は、既存の抗うつ薬による十分な薬物療法によっても、期待される治療効果が認められない中等症以上の成人(18 歳以上)のうつ病に限定される。
2)これまでに報告された研究から、18歳未満の子どもを対象とした神経発達症や精神疾患に対するrTMS療法の有効性を示す証左は不十分である。
3)rTMS療法は決して副作用のない治療法ではなく、特に発達期にある子どもへの治療に関する安全性は検証されていない。
4)18歳未満の子どもに対するrTMS療法の有効性と安全性は、十分な症例数を有する適切にデザインされ、かつ、適切に診断、有効性と安全性の評価、有害事象への対応が可能な研究・医療機関で実施されたランダム化比較試験注等の信頼性の高い介入試験によって評価し確立する必要がある。

2024.04.02 子どもに対する反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)療法に関する声明


ちなみに、こうした指摘は国内だけのものではなく、国際的にも同様の指摘がなされています。例えば、よく引用されている文献の一つである、「Repetitive Transcranial Magnetic Stimulation for Treatment of Autism Spectrum Disorder: A Systematic Review and Meta-Analysis. Barahona-Corrêa et al. (2018)」では(この調査では、ASD治療におけるrTMSの使用に関する複数の文献をもとにメタ解析という手法で、総合的な結論を導き出す統計的手法を用いています)、サンプルサイズの小ささ、方法論的な限界が多いため(プラセボ効果を十分にコントロールできていないなど)結果の解釈には慎重を要すること、そして現在のところ、ASDの治療にTMSを用いることを支持するには不十分であると結論づけています。

       
似て非なるものに「ニューロフィードバック」というものがあります。これについては、以前コラムでも書いたような気がするので、ここではあんまり詳しくは書きませんが、ASDやADHDへの適応については、現時点ではエビデンス不十分とされています。
      
では、次の質問です!   

Q:コグトレについて知りたい

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