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「最近の若い奴は根性がない」という先入観で失うもの

新規学卒者の3年以内離職率が厚生労働省から発表されました。

以前は「七・五・三」と言われる通り、中卒7割、高卒5割、大卒3割の離職率でしたが、最近は高卒の3年以内離職率は低下傾向にあり、約40%です。
大卒の3年以内離職率は今も30%前後で推移していますが、この20年間はほぼ30%以上。今年の31.8%は直近20年間の平均値33.1%よりも低い数字です。

このあたりの詳細は私の会社のブログにも書いています。

「最近若い人ほど辞めやすい」という誤解

私は早期離職に関する研修や講演を全国で行っています。
その際、冒頭で参加者のみなさんにいくつかクイズをお出しします。毎回クイズはアップデートしていますが、1問目は毎回ほぼ決まった問題です。

最新の大卒新卒者の3年以内離職率は〇〇%であり、過去最高を更新した。〇か×か。

こたえは当然ながら「×」です。
過去最高を更新するどころか、ここ数年は3年以内離職率は90年代後半から2000年代前半にかけてよりも低い傾向です。
厚生労働省のデータはニュースなどでも多く取り上げられるので知っている方も多そうですが、ほとんどの会場では半数の方は「〇」に手を挙げます。

自社の若手社員の離職率が高まっているのか、メディアを見て「最近の若い人は昔の人よりも辞める率が高い」と思っているのかわかりませんが、人事担当の方でもあっても「〇」とこたえる方は少なくないのです。


大卒新入社員の3年以内離職率は昔から大きく変わらず

最近の若い人が3年で3割辞めるのは事実ですが、これは昔から同じであり「最近になって若手は3年で辞めるようになった」わけではありません。

でも、なぜか

「最近の若い人は根性がないからすぐ辞める」
「ナビサイトの大量エントリーのせいで辞めやすくなった」

ということを言う方は少なくないのです。

会社によっては最近になって若手の離職率が高くなっているケースもあるかもしれませんが、自社で起きていることが必ずしも社会全体で起きていることとは限りません。また、仮に離職率が高まっている会社でも、その理由をしっかり調べないで「根性がないからだ」と簡単に結論づけてしまうのは非常に危険だと思います。

辞める理由は様々だからこそ安易に考えるのは危険

早期離職防止コンサルティングをやっている私のもとには、日々こんな質問が届きます。

「最近の若い人は根性がないから根性付けさせるにはどうしたいいか」
「辞めにくい人間をどうやって選別したらいいか」
「辞めさせないための指導方法は何をすればいいか」

これらの質問は多くの場合、辞める理由を人事担当者や経営者が勝手に決めつけてしまっています。

根性がないから辞める。
もともと辞めやすい性質の人を採用したから辞めた。
指導方法がまずかったから辞めた。

どれも可能性としてはあり得ますが、本当にその理由で辞めている人が多いのでなければ、改善をしても無意味になってしまいます。

退職者へのインタビューなどができない場合は、在職所のデータや在職者へのインタビューなどで原因を予測するしかありませんが、大切なのは自社の社員が辞める理由をしっかり探ることです。辞める理由を探ると、原因が社長や役員にあるということもあります。そんなときも経営者がその事実から逃げずに受け入れて改善していけるかどうかが重要だと思います。

「根性がないから辞める」というステレオタイプを信じてしまうと、いつまで経っても事実にはたどり着けないし見当違いの施策を打ち続けてしまい、お金も時間も失い、残った社員も疲弊していってしまうのです。

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