あえて、最適解を外す話
最適解探しをして、ゲームを楽しめない
どうにも、最近、ゲームが楽しくない。と里田が感じてしまったことから、この話が始まります。
里田は、若い頃、とあるゲーム会社で働いた経験があります。誰もが知る有名RPGの開発に関わっていたのですが、もともとゲーム好きだったこともあり、当時、手当たり次第にゲームをしていたのです。はっきり言えば、楽しかった。気がついたら朝だったという日も珍しくありませんでした。
ゲームの物語もさることながら、「攻略」です。どう進めれば、最短で行けるのか。このボスはどう倒すのが最も効率がいいのか。ゲームが複雑化していった時期でもあり、いまで言う「最適解探し」が楽しくて仕方がなかったのです。
ところが、この10年ほど、あまりゲームが楽しめません。その理由は里田にあります。まずは「最適解探し」を始めてしまうのです。どうゲームを進めれば最も「いい」のか。最適解探しは「作業」です。そして、いまのゲームは極めて複雑で、容易に最適解にたどり着きません。もっといえば「最適解がないゲーム」もたくさんあります。
さらに「ゲーム実況動画」もあります。ゲーム実況する彼らの中には「最適解」を提示するもおもありますが、その多くは「悪戦苦闘する姿」を見せています。それが楽しいのです。最適解なんて、どこへやら。
タイパ、コスパなんてどこかに行ってしまって、面白おかしい負け姿を見せる動画が楽しい。いや、むしろあれだけ楽しめるならコスパはいいんだろう。
ゲームで最適解探ししてしまい、楽しめないのは本末転倒だなと思ってしまうのです。
将棋だって、AIの最適解の他に面白い一手がある
いまでは、藤井竜王・名人の対局は常にニュースになるのですが、その時のキーワードで出てくる「AI超え」という言葉。
いまどき、将棋の中継ではリアルタイムでAIによる形勢判断、「次の最善手」が候補手数手を含めて、提示されているのが当たり前です。最近、将棋中継を見ることを楽しむ「観る将」という人たちが増えているのも、この「AIにより次の一手」が予想の道標になること、形勢がわかりやすいことが要因になっているでしょう。
で、AIが予想する最善手以外を指すと、一気に形成を悪くする「悪手」であることもあるのですが、まれに「候補にはあがっっていないけれど、一気に形勢が改善するAI超えの一手」も出現します。
将棋中継を見ていて、「AIの予想手が指され続ける局面」は、ものすごいことだと思います。でもこんな声も聞こえてきます。
「だったら、AI同士で指せばいいじゃない」
そこが面白いのでしょう。時々出てくる「AI超えの妙手」。想定外の最適解超えがあるから、面白いし、「未来がある」と思えます。
ビジネスに最適解はあるのか
起業でも似たようなことがあるかもしれません。「事例病について」でも少し触れていますが、事例ばかり気にする一因は、この「最適解探し」かもしれません。
失敗を避ける、嫌がる、だから「過去の成功した事例を気にして、真似する」、これはまさに「最適解探し」と言えるのではないでしょうか。
はっきり言えば、「失敗が少なそうなやり方」はあるけれど、ビジネスに最適解はありません。三木谷氏がネット通販事業、それもプラットフォーム事業を始めようとしたき、先例はなく、参考にするものもなく、どこを探しても「最適解」なんてない状態です。サイバーエージェントの藤田氏だったそうだったでしょう。
時代を変えたアントレプレナーは、事例なんて見ていないし、「最適解」なんて探していないのです。
そもそも「誰もやったことがない事業」に事例はなく、最適解な「これから作っていくもの」なのかもしれません。
よく「ゲーム感覚」でビジネスをするという言葉もあります。ビジネスを楽しむ、余裕を持って、攻略をしていくという意味では大賛成です。
しかし「最適解を探す攻略」当意味では首をかしげます。
無駄を嫌い、タイパ、コスパを追求する。
もちろん、時間は有限ですし、資金も人的リソースも有限です。無限に浪費できるわけではありません。
でもタイパ、コスパばかりに気を取られることには、違和感があります。
どうやら、失敗を恐れること、失敗したくない気持ち、そして「無駄を恐れる気持ち」には、共通点がありそうです。
きっとそれは、起業家にとっては、いえ、ビジネスでは、新しいビジネスを進めるには、少し邪魔なものなのかもしれません。
このテーマは今後も、考えていきたいと思います。