5.岩田さんもそうだよ、きっと。|『岩田さん』の話をしよう|永田泰大×糸井重里×古賀史健 #岩田さんのつづき
(イベント主催であるほぼ日さんの協力をいただいて作成しています)
「事務所の玄関先でさ」
「あとから学んでいったんじゃないかな」
「嘘でもいいから言われたいって」
糸井さんが加わって、尽きることがないように広がる岩田さんの話。
糸井さんと永田さんにとって、岩田さんの存在がどれほど大切なものだったのか。
岩田さんがいた場面のなにげない会話のひとつひとつを丁寧に伝えるふたりは、まるで心に残るアルバムの写真を懐かしみながら話しているようでした。
そして徐々に、終わりの時間が近づいてきました。
予定の終了時間を越えていましたが、席を立つ人はひとりもいません。どこか名残惜しい雰囲気の中で、質疑応答が始まります。
岩田さんもそうだよ、きっと。
永田:
では、時間もだいぶ経ってしまいましたが。ちょっと質問をいきましょうか。
会場:(いくつか手が挙がる)
古賀:
じゃあ……一番前の方。
質問者1(男性):
お話ありがとうございました。
古賀さんがいらっしゃるので、「嫌われること」についてうかがいたいです。
岩田さんが、経営者として社内から自分が嫌われるかもしれないことに関して、どうお話されてたのか、もしエピソードがあれば伺いたいです。
永田:
あんまり記憶にないですねえ。
自分が悪く言われるみたいなことですよね?
質問者1:
そうです。
永田:
本当に、カケラもあんまり出てこないですねぇ。
それで言うと、取材のときに「岩田さんが怒るときはどんなときだったですか?」みたいなことを聞かれたり、ぼくも桜井さんに聞いたりもするんですけど。出てこないんですよ、そういう、声を荒げたというような話が。
だから、本当になかったんじゃないですかね。
糸井:
もっと理不尽なものがあるんだよ。
永田:
怒る以上に?
糸井:
岩田さんが社長である以上、上手くいってると嫌だという人がいないはずがないんで。
いないはずがない人は、ちゃんといます。たぶん。
古賀:
うん。
糸井:
だから、岩田さん自身が、嫌われる勇気だったんじゃないですかね。
永田:
キレイな(笑)。
古賀:
(笑)
会場:(拍手)
質問者2(男性):
岩田さんの声について話が出てたと思うんですが、声自体を何かのコンテンツとして編集されて出てくる機会というのは……ないものでしょうか?
永田:
あ、音声そのものを?
質問者2:
はい。岩田さんの語り口で、岩田さんがしゃべるから届くみたいなことが、もしかしてあるのかなっていう。
本って、すごく能動的なメディアというか、読もうと思って読まないと届かないものだったりもするので。
もっと岩田さんのことを知ってもらうっていうときに、もし岩田さんの音源が世に出るとうれしいなあと。
永田:
なるほど。
すごく常識的なことで言うと、人が話していることって、キレイに本を朗読するようなものではないのですね。
テレビとかの対談が上手なのは、やっぱり話のプロの人が話していて、さらにそれをプロが編集することで番組として成り立っていると思うんです。
そうじゃない人が語っているものが聴き応えあるかというと、そうではないような気が、ぼくはしています。
古賀さんはどうですか?
古賀:
やっぱり「音声だしますよ」という許可を岩田さんに取ってないので、難しいと思いますね。
永田:
それですね。
余談ですけど、実際の岩田さんの声は、人が思っているより「高い」です(笑)。
昔の基調講演の映像とかは、インターネットで探せば見られるかもしれないですね。
質問者2:
ありがとうございます。
質問者3(男性):
今日はとても楽しい時間をありがとうございました。なんだか、楽しいお通夜みたいな感じで(笑)。
糸井:
ホントだね(笑)。
質問者3:
ひとつだけ質問なんですが、岩田さんと一緒に何かゲームをされたりとか、岩田さんが実際にゲームをされてるときのエピソードが、もし何かあればお聞かせいただきたいなと思いまして。
お願いします。
永田:
おおー。
糸井:
ない。
古賀:
ないですか?
永田:
はい。ないですね。
古賀:
Wiiの自作機を持ってきたときとか?
永田:
持ってきたときも、ニコニコして「触ってみてください」。
すごくニコニコして「どんどん触ってください」
そして説明するだけ。
糸井:
ないねー。
永田:
ないですねー。
質問者3:
納得しました。
糸井:
まったくないね。そういえば。
質問者3:
今日は本当にありがとうございました。
京都から来たんですけど、来たかいがありました。
永田:
こちらこそありがとうございます。
質問者4(男性):
今日は素敵な時間をありがとうございました。
『岩田さん』を読ませていただいて、すごい楽しかったです。そこで、3人にとって本の中でいちばん気に入ってる部分をお聞きしたいです。お願いします。
永田:
はい。
ぼくはこの本のためにやった取材がありました。糸井と宮本さんに岩田さんについて語ってもらったことです。
宮本さんが岩田さんのことを、取材の中で語る時間というのは、たぶんこのあともないと思うし、それは本当にこの本の意義だなと、ぼくは思っているところがあります。
宮本さんがおっしゃった「やっぱり友だちだったんですよね」という言葉は、自分の中でやったすごく意味のあることだと思っています。
古賀:
ぼくはですね、実際に仕事に役立つ話として98ページにある
「自分がなにかにハマっていくときに、なぜハマったのかがちゃんとわかると、そのプロセスを、別の機会に共感を呼ぶ方法として活かすことができますよね。」
という言葉があるんですよね。
『岩田さん』本の半分を無料公開します|ほぼ日刊イトイ新聞 第三章より
古賀:
自分が何かを好きになっていったときに、なんで好きになったんだろうというところまで理解ができると、何か自分がつくるときに共感を呼ぶ方法として使えるというような話なんですけど。
自分が原稿を書くときって、「自分はどうやってこれを好きになったんだろう」とか、「どういうステップを踏んで理解したんだろう」と、その理解の道筋をたどって原稿を書いていくと上手くいくことが多かったりします。
なので、「あ、岩田さんもそうだったんだ」とうれしくなった言葉として、すごく印象に残りました。
糸井:
本の中でというのではないけれど……やっぱり岩田さんの奥さんにできあがった本を読んでもらったというのが、大きなことでしたね。
さっき永田くんも話してたけど、「1年前だったら、やっぱり読めなかったでしょうね」と、「今だから読ませていただいて、本当にありがとうございます」と言われたことが、この本をつうじた1つの物事としてうれしいことですね。
あと、今日の今日という言い方をすると、今日、皆川明さんのミナ ペルホネンの展覧会に行ってきて刺激うけて。うわぁと。
すごいんですよ。
で、帰りに出口で思ったのは、「あ、やっぱりナルシストなんだな」と思ったんですよね。
永田:
皆川さんが?
糸井:
皆川さんが。
だいたい素敵なことしている人は、ナルシスティックですよね。
それはもう永ちゃんでも誰でもそう。
「岩田さんはどうなんだろう?」と思ったんだけど、絶対に岩田さんもそうですよ。
つまり、やればできるという信じ方を自分にしているのが、なんかぼくは……「ナルシスト」という言葉は良い意味で使われてないことが多いんだけど。
そういう、コミュニケーションを拒絶しているようなナルシストもいるかもしれないんだけど、すごくコミュニケーションする、いいナルシストたちが世の中にはいっぱいいて。
会場のみなさんも、たぶんそうなんですよ。
「やればできるんじゃないか」と思っていること自体が、やっぱりナルシスティックなことだと思うんですよね。
だから「ああ、岩田さんもそうだよ、きっと」という、自分好きな岩田さんの部分が、本をよく読むと浮かび上がってくるような気がするんだ。
古賀:
うんうん。
そうですね。
糸井:
それが本として、ちゃんと残せたっていうのは、なんか良かったなあ。
人間って、そうじゃないと。
なんだかつまんないじゃない。そう思いません?
古賀:
うん、わかります。
糸井:
今日の今日の感想だよ。
そう思いましたね。
永田:
古賀さんが読み取った、岩田さんが自分の才能をアッサリ認めてるというのも、そうですね。
糸井:
ああ、そうですね。そうですね。
古賀:
ホントに。
質問者4:
ありがとうございます。
永田:
ありがとうございます。
糸井:
ありがとうございました。
永田:
……というところで。
糸井:
飛び入りで。
永田:
いえ、とんでもない(笑)。
古賀:
かなり時間オーバーしてしまいましたが。
永田:
では、終わりたいと思います。
どうもありがとうございます。
会場:(拍手)
(おしまい)
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
同じイベントに参加した「ほぼ日の塾」の卒業生が、#岩田さんのつづき というハッシュタグで感じたことや印象に残ったことをnoteに書いています。
当日の様子を違った確度から読むことができますので、よかったらそちらも楽しんでみてください。
あなたとも一緒に、『岩田さん』の話をしたいです。