
フランスの日常と普遍的な愛を、音楽、色と線で見事に表現「リンダはチキンがたべたい!」
アマゾンプライムで
フランスのアニメ映画「リンダはチキンがたべたい」を鑑賞。
数々の映画賞を受賞した作品で期待が膨らみます。
フランス郊外団地に住むリンダは
幼い頃父親を突然亡くしました。
8歳になったリンダは、
お父さんが作ってくれた
「パプリカ・チキン」を食べたいと
お母さんポレットにお願い。
ここからとんでもない珍道中が始まります。
チキンを買いに行こうとも
「ストライキ」ですべてがやっていない。
それでもどうしてもリンダは
「お父さんのパプリカ・チキンが食べたい」
とお母さんとともに、叔母、農場の息子、トラックの運転手、
団地の仲間、警察官、大人たちを巻き込み
ものすごいことまでなっていくのでした。

C)2023 Dolce Vita Films, Miyu Productions, Palosanto Films, France 3 Cinéma
この映画の素晴らしい点を3つ考えました。
色と光をうまく描いた独特で魅力的なアートスタイル
この作品は、手描きのアニメーション技法を駆使し、非常にユニークで鮮やかなグラフィックを提供しています。
色鮮やかでダイナミックなビジュアルが特徴的で、各シーンがまるでアート作品のように美しく描かれています。背景美術には独特の色合いと質感があり、視覚的に非常に印象的です。
登場人物のキャラクターはみんな一色で描かれています。
リンダは黄色、お母さんのポレットはオレンジ、亡くなったお父さんは赤、叔母さんはピンク、友達のカルメンはみどり、兄弟のフィデルとカステロもみどり系、アネットは紫、警察官は青….
何だかそれぞれの色にも意味づけがありそうです。
シーンも色で分けています。
思い出は黒い背景で、色がついた線で描かれます。昔子供の頃、
絵を描いた紙の上に黒いクレヨンで塗りつぶし、
細いペンでクレヨンを削るように描くと、
下に描いた背景が出てきますよね。
あんな感じです。

● 私が一番気に入ったのは、夜お母さんポレットが運転する車の後ろの席に
リンダが横になっているシーン。
車がトンネルに入ると、車の中が明るくなったり、
道のライト下を通るとその瞬間車の中が明るくなり、
それが交互に続く。
子どもの頃に後部に寝転がって
車の窓から見たシーンがそのまま描かれていました。
斬新なストーリーテリング
「リンダはチキンが食べたい」は、
従来のアニメーション映画とは異なり、
音に合わせて絵を描く手法を採用したそうです。
これにより、音と映像が一体となった
非常に自然なストーリーテリングが実現されており、
見ている側にリアリティと共感を与えます。
通常のアニメ制作では、まず絵を描き、
その後でキャラクターの声や音を録音します。
しかし、この映画では逆に、
先に声や音を録音し、それに合わせて絵を描いたそう。
団地の子供たちが遊んでいる音は、
私がかつてフランスに住んでいたとき、
公園から自然に聞こえてくる音でした。
この作品も、お子さんたちには外で音を出してもらい
後にシーンと重ねていったそうです。
例えば、キャラクターが笑ったり泣いたりするシーンでは、
声優の感情豊かな演技を基にして絵を描くことで、
よりリアルな表現が可能になります。
映画を見ていても、
フランスの日常会話がそのまま映画になっているようでした。
感動的で普遍的なテーマ
作品は家族愛や子供の成長、友情など、
普遍的なテーマを扱っています。
リンダが今は亡き父親の得意料理
「パプリカ・チキン」を求めて奮闘する姿は、
見ている側に強い感動を与えます。
子供たちと大人たちが共に冒険し、
ストライキのような困難を乗り越える様子は、
見る者に希望と勇気を与えるとともに、
笑いと涙を誘う感動的な物語となっています。
フランスでよく見る大人と子供のシーンが
おもしろおかしくアニメで表現。
アニメだからこそ、
すんなり見ている側の共感も得られるのかもしれません。
この作品の監督は、
映画作家キアナ・マルタと
パートナーのアニメーション作家セバスチャン・ローデンバック。
監督インタビューを拝見すると、
色や音についてこだわりがあることがわかりました。
──今、色んな顔をしているとおっしゃっていましたが、最近、世界が単色化していてつまらないと感じていたので、キャラクターの色も違って、フォルムも顔もくるくる変わるのがすごく素敵に映りました。それぞれに別の色をつけることは、最初から決めていたんですか?
セバスチャン それは最初から考えていたことです。今、世界がモノトーンだとおっしゃったように、まさにそういうふうに感じていたので、それとは違うものをつくってみたくて。今の世界は子どもらしさが失われていると思うので、子どもらしさとシンプルさを大事にしました。あとは現実的に、1つのキャラに1色しか使わないと、低予算で済むんですよ。だから、利点しかなかったんですよね。
キアラ 例えば、団地の真ん中で子どもたちがみんな集まって反抗している様子も、普通だったらネガティブなイメージになりがちですが、カラフルな色であることで、すごく楽しそうに映るなと。怒っている子どもたちが楽しそうに見えるというのも、カラフルな表現のメリットだなと思いました。
──確かに。どうやって色を決めていったのでしょう?
キアラ 色に一つひとつ意味を持たせたわけではないのですが、リンダは太陽のような子だし、フランスでは、多くの子どもたちが黄色いレインコートを着ていて、ちょっといたずらっ子のイメージもある色なので黄色にしました。伯母のアストリッドは、サバサバしている人だからあえてピンク色にしてみたり。紺色の制服を着た警察官はフランス語で通称「BLEU」と呼ばれているので、そのまま青色を使ったり。リンダの家族は黄色系として橙にしたり、そういう感じで選んでいます。
あらゆる秩序、制約を壊す、アナーキーでカラフルなフレンチ・コメディ・アニメ
12 Apr 2024

アマゾンプライム会員の皆さん!
素敵な映画ですので、
ぜひ次のお休みに見てみてください。