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なかなか筆が捨てられない 一度は諦めた道なのに。 必ず、自分の将来の選択肢を考えるときには、二言目には、小説家になりたいと言っていた。 私の周りの子育て真っ最中の旧友は学生時代は一緒に夢を追いかけていたはずなのに、いつの間にか筆を捨てていた。 でも、私は飽きず仕事帰りも何を書こうか考えていた。
俺も今日で定年退職かぁ 65才まで務めた会社からの帰り道。珍しく、最近は寝て帰るくせに、自然と頭が冴えていた。 自宅から数10メートル手前の川沿いをとぼとぼ歩いていると、月が光って反射しているのが見えた。 親父に憧れて、目指したエンジニアへの道。結局、宇宙関係の仕事はできなかったけど、おかげで仕事は安定してたし、妻も娘もいる家庭を作れた。 娘は大の虫嫌いだから、キャンプに連れて行ったことはないけど、昔、小学生の頃、親父と一緒に見た満点の星空は忘れられない。 俺が、生まれた
水の滴る音。水溜まりに落ちた水の音が洞窟でこだましている。 ここ、何処だ ひどく、頭を殴られたせいか、時間が経ったあとのせいか、自分の頭を撫でるとタンコブが出来ているのが分かる。 ぐっと、両手を握りしめて這いつくばりながら、視線を両手の先に追いやると、微かな光が差し込んで見えた。
日曜日の昼間、日差しが差し込む電車の客席。 僕は、明け方からずっと電車に乗っていた。 どこに行くつもりかって? どこにも行くつもりはないさ。 ただグルグルしているだけ。
ときどき夢を見る。 僕がずっと追いかけている夢だ。 果てしなく、遠い道のりで絶対に辿り着けない夢。 でも、そんな大層な夢じゃない。誰もが思いつくような夢だ。 人の心に近づくためのしがない研究者が見るちっぽけな夢だ。 時の権力者は言う。国際的競争力を上げるために、コストを下げる必要がある。しかし、周辺諸国の人件費は上がっていくばかり。 君の作ったロボットは、そんな社会問題を解決できるポテンシャルがあると。 僕は、人を愛し、人から愛されるロボットが作りたかった。 しかし、
キンコーンカンコーン キンコーンカンコーン 学校のチャイムが教室全体にスピーカーから鳴り響く 時刻は12時、お昼の時間だ。
2020年、世界各国では、感染症が流行し、人口が密集している都市は次々とロックダウンに陥った。 政府が次々と、緊急事態宣言や外出制限を行う中、人々も感染リスクを警戒し、外に出なくなった。 まさに、情報を得る手段は、ネットしかなくなったのだ。 これは、一気にパラダイムシフトが起こったと言える。 今まで、支配的だった。電車の吊り広告や、街なかの大型ディスプレイや看板は、意味のない置物と化した。 毎日、5感で感じる情報は、生きるための信号だ。 生き抜くための情報は、膨大な情報