見出し画像

世界の広がり

俺も今日で定年退職かぁ
65才まで務めた会社からの帰り道。珍しく、最近は寝て帰るくせに、自然と頭が冴えていた。
自宅から数10メートル手前の川沿いをとぼとぼ歩いていると、月が光って反射しているのが見えた。

親父に憧れて、目指したエンジニアへの道。結局、宇宙関係の仕事はできなかったけど、おかげで仕事は安定してたし、妻も娘もいる家庭を作れた。

娘は大の虫嫌いだから、キャンプに連れて行ったことはないけど、昔、小学生の頃、親父と一緒に見た満点の星空は忘れられない。
俺が、生まれたのが1961年っていうこともあって、よく親父は俺に月の話をしてくれたな。
親父も別に、宇宙の仕事してるわけではないんだけど、好きなものは、とことん好きだった。

そんな俺も、忙しくてもたまに宇宙のニュースは見るようにしてる
なんでも「遠方の超新星観測により宇宙の加速的な膨張を発見した研究者3名」はノーベル賞を受賞するそうだ。

まったく、どこまで世界は広いんだか

でも、娘の成長と一緒に宇宙も果てしなく広がっていくと考えると、なんだか自分が居なくなっても世界は明るく思えた。

さ、晩御飯遅れたら、怒られちまうから早く帰ろ。今日は何かな〜

最近、ひりひりと痛むひざをあげて、力強く踏みしめて、帰り道を急いだ。


PS.
Saul Perlmutterさん。Brian P. Schmidtさん。Adam G. Riessさん。
ノーベル物理学賞の受賞おめでとうございます!

ここから先は

0字
Noteオリジナルのインスタントフィクションが購読できます

筆者が2020年から約1年間、小説執筆前の助走機関として書き溜めた500字程度のショートショート集。作品に昇華していく前段階の着想が散りば…

よろしければサポートお願いします。少しの支援が活動への励みになります。よろしくお願いします