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#15_【後編】世界のチェンジマネジメント解説

こんにちは、チェンジマネジメントコンサルタントの江田泰高です。
 
今回は「世界のチェンジマネジメント」をテーマに、世界で最も主流となっているチェンジマネジメントのモデルを2つ紹介します。内容が盛りだくさんの本テーマは、前編・中編・後編の三部構成。今回は後編です。

前編・中編では、ハーバード大学ビジネススクールのジョン・コッター(John Kotter)名誉教授が提唱する 8段階の変革プロセス(The 8-Step Process for Leading Change)を紹介しました。

今回はアメリカでチェンジマネジメントの研究を20年以上続けているProsci®の創設者であるジェフ・ハイアット(Jeff Hiatt)が提唱するADKARモデルを紹介します。

前回紹介した8段階の変革プロセスは、組織の経営者の観点から、どうすれば組織の変革をスムーズにできるかを考えた理論でした。一方のADKARモデルは、従業員がどのように変革を受容していくかを示したモデルです。8段階の変革プロセスでは、「4. ビジョンを周知徹底する」「5. 自発的な行動を促す」「6. 短期間で成果を上げる」のフェーズに当てはまります。中間管理職などの立場で、従業員が変革に後ろ向きで悩んでいる方などは、ぜひADKARモデルを参考にしてみてください。

ADKARモデルの概要

まずは、それぞれのアルファベットの意味を紹介します。
 
A: Awareness 気づき
D: Desire 欲望・情熱
K: Knowledge 知識
A: Ability 能力
R: Reinforcement 強化

 
ADKARモデルを理解する上で一番大事なのは「バイアス:偏見」という概念です。
 
このモデルは、それぞれの従業員も1人の人間であって、それぞれ独自の価値観を持っているという考えから始まります。つまり、独自の価値観を持っている一個人を変えるためにはどうしたらいいか考えていきます。

第一の段階:Awareness 気づき

変革を計画した段階では、経営者は理解していても、他の従業員まで行き渡っていない場合がほとんどです。そんな状況下で、ある程度従業員に対して分かりやすく整理された情報がなければ、人は恐怖や戸惑いを覚えます。それゆえに、拒否してしまうことがあるのです。
 
だからきちんとしたコミュニケーションをして、根回しをすることはとても大事です。これは経営者の役割というより、中間管理職の役割と言えます。中間管理職として現場の人たちと一緒に変革を起こすときには、しっかりその告知をする。具体的には、全社会議などの説明会をしたり、社内SNSで情報共有をしたりです。アナログな掲示板を活用する手もあります。しっかりと情報を共有するということが、大事なポイントになります。

第二の段階:Desire 欲望



人は欲求に忠実な生き物です。従業員の方にとっても、何が得なのかを説明をされないと納得して動きません。また、その人にとってマイナスのことばかりであれば、もちろん動きません。だから、実際に従業員にとってどんな影響があって、どんなメリットがあるのかを説明する必要があります。
 
加えて、メリットという面では会社や中間管理職が、変革をサポートするためのインセンティブを与える努力をすることも重要になります。


第三の段階:Knowledge 知識

Awareness、Desireの段階を経て、従業員の中でもある程度変化したいという気持ちは芽生えてくるはずです。ただ、具体的に何をするかが分からないと、意外とフラストレーションが溜まってしまいます。
 
実際にその変革に関する情報を、もう少し具体的に、仕事の仕方がどう変わっていくのかとかを説明するべきです。いわゆる座学による情報共有が当てはまります。

第四の段階:Ability 能力

ここまでの段階で、情報は分かりました。
 
しかし実際に、システムをどうやって使うかや、その具体的な操作に関するトレーニングなどで実行する能力を身に付けないと次には進みません。トレーニングを通じて、能力開発をする必要があります。
 
注意していただきたいのが、A,Dの段階をすっ飛ばして、座学やトレーニングに進まないこと。メリットがあると分からなければ、単に座学やトレーニングだけをしたところで、従業員は主体的に動かないからです。順にステップを踏みましょう。

第五の段階:Reinforcement 強化

変革においては、メリットをしっかり説明してトレーニングして、その能力を身に付けてもらえばOKです。しかし、定着はまた一つ難易度が上がります。標準化されたプロセスになるまで見守らなければ、元に戻ってしまう可能性があります。もしくはイレギュラーが起きたときに、マニュアルで対応するケースが増えてしまいます。これでは真の変革とは言えません。
 
よくあるケースは、システム導入において、はじめのうちはプロジェクトマネージャーの言うとおりに動くけれども、いなくなった瞬間に面倒くさくて戻ってしまうケース。せっかくここまでエネルギーをかけてプロセスを踏んでも、すべて無意味となってしまいます。
 
仮に新しいしくみを導入して、半年後に元のプロセスに戻ってしまえば、それはマネジメントの責任です。なぜなら、繰り返し繰り返し、変化を定着させる努力をマネジメントを怠ったからです。すなわち、変革が定着するために、正しくできているかをモニタリングしたり、定期的にチェックするしくみづくりが必要です。

次回、プロジェクトマネージャー向けのチェンジマネジメントを紹介します

以上がADKARモデルでした。繰り返しとなりますが、8段階プロセスは経営者目線なのに対し、ADKARモデルは従業員にフォーカスした中間管理職向けと理解していただけるとイメージしやすいと思います。立場によって使い分けてみてください。
 
そして私自身も、以前紹介したcradleモデルのほか、8段階プロセスとADKARモデルを組み合わせた、プロジェクトマネージャー向けの新たな理論をつくりました。次回以降、深掘りして説明していきます。

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