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#14_【中編】世界のチェンジマネジメントモデル解説

こんにちは、チェンジマネジメントコンサルタントの江田泰高です。
 
 
今回は「世界のチェンジマネジメント」をテーマに、世界で最も主流となっているチェンジマネジメントのモデルを2つ紹介します。内容が盛りだくさんの本テーマは、前編・中編・後編の三部構成。今回は中編です。

前編は、こちら。



前回、ハーバード大学ビジネススクールのジョン・コッター(John Kotter)名誉教授が提唱する 8段階の変革プロセス(The 8-Step Process for Leading Change)の3段階目まで紹介しました。
 
8段階のプロセスは以下の通りでしたね。
 
1. 危機意識をもつ
 (Establishing a Sense of Urgency)
2. 変革を推進するチームを編成する
 (Creating the Guiding Coalition)
3. 変革のためのビジョンと戦略を立てる
 (Develop the Change Vision and Strategy)
4. ビジョンを周知徹底する
 (Communicate for Understanding and Buy In)
5. 自発的な行動を促す
 (Empower the Others to Act)
6. 短期間で成果を上げる
 (Create short term win)
7. 間を空けずさらに変革を進めていく
 (Never Letting Up)
8. 変革を根付かせる
 (Incorporating Changes into the Culture)
 
 それでは、4~8段階目を見てみましょう。


4. ビジョンを周知徹底する

前編で、ビジョンはわかりやすくなければ伝わらないと話しました。チェンジマネジメントにおいて、従業員に対してしっかりと繰り返しビジョンを伝えることは非常に重要です。
 
従業員の皆さんに心から支援してもらうためには、言葉で示すだけではなくて行動で示したり、さまざまなコミュニケーションのチャンネルを駆使したりして、混乱や不信感を取り除くことが必要です。
 
例えば、経営者が年始の挨拶で「DXをしよう」と一度話したとして、正直なところ大体の人は聞いていません。末端の現場に本当の意味でメッセージが届くことはないでしょう。ことあるごとに繰り返し、繰り返し、しつこいくらい伝える必要があります。具体的には、ワークショップを行ったり、何か研修会を行ったり、ポスターを張るなど目に触れる状態を意図的に作り出すことも有効です。
 
また単にビジョンを伝えるだけでなく、それを今どんな段取りでやっていて、いつまでに何を達成する見込みかを情報共有することも大切です。「上の人たちが何かやっている」ではなく、「自分たちもこのプロジェクトに参加しているんだ」と自分事として捉えてもらうことが、会社一丸として変革を起こすことにつながります。

5. 自発的な行動を促す

ビジョンを周知したとき、100%の人が賛成することはありえません、以前のnoteでも説明した通り、一定数が抵抗勢力になって反対します。「うまくいかないだろう」「うちの会社には早すぎるよ」といった意見です。
 
抵抗勢力を物理的に取り除いてしまうのも1つの手ですが、あまりおすすめしません。あまりに急激な変化や、直接的な対応は、新たな不平不満に繋がる恐れがあるからです。やはり大事なのは人の心。従業員が主体的に自発的な行動を取るためにはどういったことができるかを考えることが必要です。
 
そう考えてみると、抵抗勢力をやみくもに排除するのではなく、「よくやった!」と賞賛をしたり、繰り返しメリットを話したりすることが変革に不可欠と言えるでしょう。抵抗勢力だった人も含めて、目標に対して行動ができるような空気感を醸成することが大切です。

6. 短期間で成果を上げる

 

「短期間」がミソです。新しいことをするのには、どうしてもエネルギーが必要です。なかなか成果が出ないと「やっている意味あるのかな」という空気が蔓延します。

 そのようなネガティブな人たちが増えてくると、ますますネガティブが伝染し、抵抗勢力になります。そうならないように、目に見える形で成果をしっかりと生むことが必要です。

 よく外資系企業では「Low hanging fruits(取りやすいところにある果実)」といいますが、やれば成果がすぐに出る簡単なことがあるはずです。そのような小さな成功をオーバーなぐらい褒めてあげる。「素晴らしい!うまくいっていますね」「さすが○○さんのチームですね」と極端に褒めるんです。中間管理職もメンバーもです。

 そうすると「うちもやろうかな」と感じる人が増えて、ポジティブな連鎖が生まれます。さらに連鎖が生まれると、あまりやっていない人たちは「俺らも動かなければまずいかな~」となり、良い循環が回り始めます。だから「短期間で成果を出す」ことは大きな肝になるのです。

 この成果は可能なかぎり、目に見えてわかりやすいものがいいです。例えば、オフィスのレイアウトを変える。変化が目に見えますよね。逆にシステムの変更などは、インパクトが大きいかもしれませんが、社員全体からすると変化がなかなか見えにくいかもしれません。

 だからはじめは、目に見えるところにフォーカスをしてあげると、みんながやる気になります。ぜひ意識してみてください。

7. 間を空けずさらに変革を進めていく

「6. 短期間で成果を上げる」のフェーズで、small win、小さな成功が重なりました。しかし、そこで満足してゴールではありません。ビジョンとその戦略をもとに恒常的に進むべきです。
 
最初のうちは頑張っても、一度止めたら戻ってしまいます。継続してPDCAを回し続けることこそが、真の変革につながります。例えば、継続して改善ミーティングを呼びかける。社内アンケートを実施するなど、年間計画に落とし込んだうえで「何もやっていない空白期間」を作らないように心掛けてください。
 
変革に終わりはありません。空白期間が生まれると「過去の出来事」になってしまう可能性があります。そうすると、スゴロクでいうところの「振り出しに戻る」になる恐れがありますので、十分に注意してください。

8. 変革を根付かせる

どんどん新しいことをやっていても、昔に戻ろうとする力が絶対に発生します。 特に年功序列でずっと同じ人が働いている職場だと、「今まではこうやっていたから」「お客様が拒むから」と過去の行動に引き戻そうとする人がいます。これは、新しい変革を起こすうえで、弊害となります。

 大事なのは、一度新しいことをはじめたら、次に何ができるかを考え続けることです。元に戻したり、後ろ向きなことはしてはいけません。

 具体的には、従業員1人1人が改善をするというマインドセットをもって、全員が改革に参加できる仕組みをしっかりつくること、その成果が昇給や昇進につながるようにしていくこと、会社として変革に向けた時間を設けることなどが必要です。長い目で見れば、これらは会社を強くしていくことにもつながっていきます。

以上が、8段階の変革プロセスです。

経営者として、リーダーとして改革をどんどん推し進めるためには、ビジョン達成がゴールではなく、まだまだ通過点かのような、次の後継者がまた変革をバトンを受け継いでもっと変革していくための礎のような、そんな体制づくりが必要なのです。

詳しくは、『企業変革力』に記されているので、ぜひ参考にしてみてください。

後編では、ジェフ・ハイアットによるADKARモデルを紹介します。
次回もお楽しみください


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